2011年9月13日 from 食材
さてバチッと焙煎された菜種からは熱線が放射されている。内包している油もじくじくと熱によって活性化し、ギュッと押すだけで油がしみ出してきそうだ。
この焙煎菜種を、搾油機にかける。搾油するための機械というのが、実に存在感のあるフォルムなのだ。
この機械の中心部と言えるのは、砲丸型の、みるからに重金属という感じのこの部分。
この内部にドリル状の心棒が入っている。
こちらは交換用のものなのだけれども、そうそうどこにでもあるものではなく特殊な合金製らしく、搾油をしなくなった業者さんなどからいただいたりしているらしい。
いかにも工作技術・ニッポン!という感じのする、格好良くそして精度の高そうな造りだ。この溝をよく観ると、写真の下部の溝は深めに空いているが、写真上部に行くほどにその溝が狭まり、途中でギュッと溝がなくなっている部分があるのがわかるだろう。要は、写真下部のほうから菜種が入り、溝に従ってだんだんと移動していって、最後の溝が浅くなっていく部分でギュギュッと潰れ、油が絞られるということなのだ。なんとわかりやすい!ブラックボックスなしの技術である。
まずは、焙煎釜に引き続き、機械を温めるために昨日絞った菜種の油かすを温めたものを、この機械に通していく。
すると、高速回転するドリルに従い、ナタネ粕がびろろろーーんと出てくる!
いやーーーーーーーーー ナタネ粕ってこうやってできていたのか!
農作業をしたことのある人なら識っている人もいるだろうが、ナタネ粕という農業資材がある。というか肥料。それ単体では未発酵のため、水に漬けておいて臭~く発酵させてから液肥として作物に与えたりするのだけれども、こうやってナタネ粕が作られるんだなというのを初めて観てしまった。はい、学生時代からお世話になっておりました。
さーてそれでは焙煎した菜種を投入して、いよいよ一番搾り(?)菜種圧搾油を絞る!
原料投入口に焙煎した菜種を投入し、ぐわーーーんと搾油機が廻っていくと、、、
おおっちょろりと黄金色の油が、、、しみ出てきた!
最初はチョローリ、チョローリという感じだったが、、、
その勢いは段々増していく!
この段階で出てくる油はそれほど美しい!というものではない。それは当たり前で、種のカスやいろんな不純物が混じっているわけだから。
しかしどんどん勢いを増していくうちに油がうつくしーくなっていく!
排出されている油かすを常にチェック。
この油かすの具合で、どれくらい搾油できているかがわかるそうだ。
「うん、まずまずです。」
「やまけんさん、内部も観てみたいでしょ?あんまり綺麗なもんじゃないですけど、、、」
と搾油機を開けてみると、、、
ぎゅわんぎゅわん廻っている搾油ドリル(?)から油やカスがしみ出てエライことになっている!
回していくうち、どんどんと油が溜まり、同事に油かすもてんこ盛りになっていく。
ザルで受けている油かすは適宜ほかにあけて、ザルを交換する。
こうして一斗缶に、未精製の不純物いーっぱいの菜種油が搾油された。
空気を抱き込んだ泡が浮かんでるし、透明な琥珀色とは縁遠い、どす黒い感じの色だ。
「これ、どうやって不純物をとるわけ?」
「いやー それが本当に原始的な方法なんですけど、、、まずはしばらく置いておくって方法です(笑)」
なんと!こうして絞った油は一日~二日ほどおいておき、個体の大きな不純物が沈殿していくのを待つのだ!沈殿したのがこちら。
なんと美しい!
引力の力ってすごい!(笑)だってこんな↓のが、、、
こんなになるんだよ!↓
なんだぁ、これで油できあがりじゃん。
「いえいえ、ここから精製して、さらに濾過するんです。」
と小野寺君、沈殿させてクリアになった一斗缶のうわずみを、大鍋にザザーっとあけていく。
ちなみに、このエントリの第一回目で書いたように、通常の油の精製というのは非常に面倒な工程を経る。化学的手法を使わない場合も、「大量の水で油を洗う」という方式で油を精製していく方法もあるのだけれども、工房地あぶらではそれもしない。とにかく佳い原料をほどよく焙煎し、絞って最低限の精製と濾過をして、瓶詰めするというものだ。
僕もいろんなところで油の精製の話を聞いていたから、未精製の菜種油はそうとうにクセがあって使えたもんじゃない、というようなことを吹き込まれていた。日本料理の料理人さえ「圧搾の菜種油は臭くて使えない」と言うのだ。けど、その「臭い」というのが単にイメージだ、といまでは思うわけだ。だって、オリーブオイルだって臭いんだよ。今はイタリア料理が普及して慣れたからこれを「いい香り」と思うのであって、最初は「何これ臭~い」と思っていた日本人が大多数だったはずだ。
それと同じで、いつの間にか無味無臭のサラダ油が食卓のスタンダードになることで、油には味も香りもないというのが当たり前になってしまっていた。そんな味覚には、菜種圧搾油は癖が強いと思ってしまうことが多いというだけのことなのだ。
そして、そういう癖の強いものほど、慣れればゾッコンに好きになってしまうものだ。実際僕はもう菜種油が大好きである。みんな、こっち側においで。
さて精製だ。
なみなみ注がれた大鍋を火にかけていく。この加熱自体が精製なのだそうだ。そこんとこのメカニズムはよくわからないので、小野寺君に聴いておきます。
熱が通ったら、、、ここでハイテク。手前の鍋に金属製の配管がされているのがわかるだろう。それが、奥にある円筒形の什器につながっている。この円筒の中には濾紙が敷いてあり、この下部からさらに配管がにょきっと出ている。つまり、熱せられた油をここに満たして下から抜くことで濾紙を通って油が最終的に濾されるという仕組みだ。
空気圧を変調させているのだろう、一気にきゅうーんと吸入する音がして、この濾過器に油が満たされてきた。
そして、またもや急速にこの濾過器の下から吸われているかのように、油が今度はタンクの中に入っていく。
こうして、濾過された油がタンクの中に貯まっていくのである。
ちなみに、工房地あぶらでは複数の産地の菜種油を扱うため、厳密にロット管理をし、他地域の油が混ざらぬようにしている。
つねに油搾りの技術を教えてくれている菊池忠雄さんと共に、、、
小野寺君はこの工房を任されて切り盛りしている。実際には、このエントリで書いてきたような流れではなく、いくつもの作業を同時並行でこなしている。このエントリはそれを時間軸純に再構成したものだ。彼はそれぞれの行程が併行に走っているところを、一分の無駄な動きもなく動き、作業をしているのである。恐れ入った!アンタは職人だ。
とそこへ、「さあさあ、おやつにしない?」と言う声が、、、
さてお次、ようやく美味しいお話しです(笑)
続く
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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