島根県から遠い島・隠岐諸島は食のガラパゴスであった! 海士町の海産物には”こじょうゆ”が合う!放射能からの逃避行に成功、ストレスフリーな日々がそこにあった!

2011年7月29日 from 出張,食材

牡蛎にこじょうゆ (2)

もう、4ヶ月も前のことなんだなぁ、、、と、なんとも言えない感じだ。ホント、不安におののく中、神話のように穏やかな落ち着いた環境で、ホッと過ごすことができた夢の環境だったのである。

3月11日の大震災と原発不安の中、僕はいったん妻を連れて関西へ移動した。震災当日の11日は大分に出張していたので直接的な揺れを体験していないのだが、翌日の帰宅後、妻を説得して仕事をキャンセルさせ、14日からの関西出張に同行させた。もちろん放射能が怖かったからである!本当は15日はいったん東京に帰って、翌16日に羽田から出雲空港経由でこのエントリに書く隠岐の島に入るはずだった。しかし、15日も大阪に宿泊することにして、とにかくよくわからんうちには東京に帰らんぞ!というつもりで居たわけだ。結果的にあの判断は正しかったと思っている。

で、その時いちばん感じたのは、関西はぜんぜん他人事のように平和だ、、、ということ。もう、関東に住む人たちが感じている、頭の上に放射能雲が浮かんでるような重っくるしい感覚が、関西にはない(と感じた)。後日、実家の父母妹も呼んで、「集団疎開だ!」と3泊ほど大阪に居たのだけれども、皆口々に「いいねぇ、関西は安心する」と言っていた。

なんでこういうことを書いているかというと、これから書く隠岐諸島は、その安心感がもっともっともーっと増幅されたようなところだった、ということを言いたいわけなのだ。

すでに記事になっている、大地を守る会ウェブストアでの岩ガキ記事と一緒に読んでもらえると、前後で何があったのかがわかって楽しいと思う。

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https://store.daichi.or.jp/NewsDetail/index/contentscd/20/year/2011/no/123

岩ガキ「春香」はまだもう少し販売中だそうなので、ぜひ試してみて欲しい。

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当初、空路で隠岐空港へ入る予定だったが、吹雪の予報で飛行機が飛ばなくなり、出雲空港からフェリーターミナルへと向かう。

さて、「隠岐(おき)諸島」は島根県から役50km離れた海に浮かぶ、群島からなる地域で、主に人が住むのは4島だ。さらにこの4つを島前(どうぜん)と島後(どうご)に分けて呼ぶ。しかも複雑なことに、島の名前と行政区分の町村名とが別々になっていてわかりにくい。なので、このエントリでは町村名を主にして書きたいと思う。

で、フェリーは2時間程度かかるので、2等席で毛布と枕を借りて寝ていくのが吉。

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西ノ島町の港についてから一回小さな船に乗り換えて5分。

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こんな感じで船がバスのような役割を果たしている。そうこうしているうちに海士町の港に到着だ。

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眼鏡かけてマスクをかぶっているのはカメラマンのサイコちゃん。実は大地を守る会の熱狂的なファンで、夫君は僕の大学の後輩でもあるユーストの達人。彼女たちも放射能からの避難+海士町との関わりの深さがすでにあるらしく、同道したのである。とはいえ、ここから彼らは知人宅へ。

「やまけんさん、海士町はサイッコーですよ!だって私たち、まず原発爆発してからここに来ようって決めてたんですから、、、」

とまで彼らが言うこの島に上陸後、本当になんだか心が落ち着く。あまりにも福島から遠いから、と言うこともあるだろうが、それだけじゃないなにかがあるんだろうか。

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パノラマのように海を望むホテルにチェックイン後、いきなり宴会が始まるわけである(笑)もともとは飛行機で早く着いて取材をしてから宴会のはずだったのが、予定変更したわけだ。港に隣接した施設内にある「せんとらる亭」へ向かう。

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ついたら15人くらいの人々が待っていた!うわーん予定が狂っちゃってスミマセ~ン!で、いきなりこんなたくさんの人たちと乾杯!

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本当なら半日かけてたっぷりと岩ガキの生産現場を見てからいただくのに、それをすっ飛ばしてこんなグワッとした牡蛎盛り皿と出会うことになったわけである!

牡蛎横1

僕の仕事はこの岩ガキ「春香」の取材・執筆と撮影なのだけども、本当に冗談抜きで、このテーブルに上がっている岩牡蛎は生だろう、と勘違いしていた。皿を撮影用のテーブルに移すときに「これ、生?」「いや、これが例の販売するCAS冷凍ものだそうです」と言われ、心の中で「まじかよっ!」と驚きつつ、何食わぬ顔で「ああそう、やっぱりね」と平静を装ったのである(笑)

だってねぇ、見た目じゃわからんよ、こんなプルンプルンヌメリンとしたテクスチャ、誰が冷凍と思うかね。

牡蛎1

これが海士町が誇るCAS冷凍という技術によるものだ。CAS冷凍については検索でもしてもらえるといいが、アビーという企業が開発したシステムだ。普通、牡蛎や肉などを凍らせようとすると、マイナス50度以下の瞬間冷凍システムでも上手く凍ってくれない。これは、物体の外側から徐々に時間差をもちながら凍っていくため、表面が凍る際に内部の水分が移動して凍る側に寄ってしまい、細胞内の要素がどんどん出てしまうのだ。結果、解凍するとその水分がドリップになりベショベショになってしまう、かつもとの身肉もグズグズになってしまうわけだ。

牡蛎つまみ

しかし、ある種の電磁波をかけた状態で温度を下げていくと、氷温以下になっても電子が振動し続けているので凍らない。全体が均一に氷温以下にしたうえで一気に電子の振動を止めると、水分の移動や組織の破断が起こらないうちに瞬間的に凍る。それを解凍すると、こんなふうに生とほとんど変わらない状態になるのだ。これは確かにスゴイ!

牡蛎三年ものと一年もの比較

上の大きな牡蛎はスパッと牡蛎の身肉を切っているのだが、、、

牡蛎刺身1

断面はこのように、もともとの組織がきちんと復元される!こんな技術なのである。この技術の恩恵はもちろん岩ガキだけに注がれる訳じゃない。

白イカ刺身1

これまた海士町の海産物を語る上では欠かせない、白イカの刺身と一夜干しだ。

白イカ刺身2

刺身を見ていただければおわかりのとおり、下に敷いたシソの緑色が透けてみるようなみずみずしさだ!

白イカ刺身4

身肉の滑らかな歯触りはもちろん、ゲソの食感もブリンブリンしていて、生とみまごう状態の良さ!これには、大地を守る会の水産バイヤーも「牡蛎よりもスゴイかも!」とビックリしていた。

白イカ一夜干し縦

イカやタコは一般に、冷凍に向く素材として知られている。けれども、通常の冷凍設備だと、干物を横にちぎろうとしても、組織が破断してしまってもろくなっているため、ブチッとちぎれてしまうらしい。

「でもね、このCAS冷凍の白イカはね、ほらピリピリピリピリと綺麗に割けていくんですよぉ!」

白イカ CAS冷凍だと最後まで裂ける

と言っている図(笑) ちなみにこの方がCAS冷凍システムをもつ「ふるさと海士」の奥田さんだ。

で、僕が何でこのエントリのタイトルで「ガラパゴス」と言っているかなのだけれども、この隠岐諸島は他にはない面白い食文化が息づいているのだ。その特殊性を、おそらく島の人たちはあんまりわかっていないんじゃないか?と思ってしまうくらい。

その第一歩として僕が「発見」したのが、こじょうゆである。

ん?

こじょうゆ?

なんじゃそりゃ、と思うでしょ?きっと「小醤油」なんだろうとおもうが、先のイカの干物の写真の下にちょこっと載せてある味噌のようなヤツです。

白イカとこじょうゆ

これがこじょうゆ。

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「あのね、この島じゃイカを食べるときにこのこじょうゆを使うのが一般的なんだよ」

と町長さんが教えてくれる。いや、そのこじょうゆってなんですか?

「うーん、昔はみんな家々で作ってたんだけどねぇ、味噌と醤油の間にあるような存在かなぁ。家によって味が違うんだけど、これを刺身につけたり干物に合わせたりして食べるんだよ。」

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

これは面白い!

こじょうゆを乗せた白イカ一夜干しを口に運ぶと、味噌のように熟れ過ぎておらず、大豆や麦などの粒が軟らかくなってはいるが存在感を主張しつつ潰れて溶けていく。その味わいは味噌のように平面に広がる旨みだけじゃなく、醤油っぽく鋭い芳香を伴っている。それなのに塩分はあまり強くは感じない。なるほど、こじょうゆとしか言いようのない不思議な立ち位置の調味料である!

悪のりして岩ガキ「春香」に乗せて啜り込んでみる。

牡蛎にこじょうゆ

、、、もちろんマッチする!岩ガキの磯の香りが強いが、麹の香り立つこじょうゆがあとから追いかけて旨みを足していく感じ。

いやーちょっと感動してしまった!

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「やまけんさん、そんなにこじょうゆが気に入ったんだったら、こじょうゆおにぎり作りましょうね!」

というので何かと思ったら、おにぎりにこじょうゆを乗せて焼くというのを、この島ではド定番にしているらしい。

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こじょうゆおにぎり (2)

う、旨そうじゃねえかよぉ、、、

しかもその脇では、島が誇る隠岐牛が、、、

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なんだよ、、、赤肉サミット主催者の俺にこんな霜降りを出すのかよぉ、、、

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すっごいね!

これもじゃんじゃか焼かれまくるのである。

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実はこの日、むかし島根県の本土側で肉牛肥育農家さんを回った際にご一緒した普及員さんが来てくれていたのである!

「やまけんさん、実は島根でも飼料用米を牛に与える実験を始めています!」

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これが飼料用に与える籾米だ。うん、たしかにちょっと大粒な品種ですな。牛には豚や鶏とは違ってあまりたくさん飼料米を給餌できないのだけれども、それでもいろいろ試しているようだ。その後の経過をまた聴きたいと思っている。

その後も、海士町特産でなおかつふるさと海士が加工した面白い食材が並ぶ。

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この海鮮クリームコロッケがマジで旨い!上はイカで下が牡蛎。そして、ふるさと海士の人たちが「これには自信がある!」といっていたのがアジフライ。

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これ、なんとCAS冷凍品。しかし、当然ながらほとんど生のごときフレッシュなアジフライ!

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白イカは唐揚げにもなって出てきた!

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〆は、島じゃ名産のサザエご飯とタコご飯のおにぎり。

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こおんなふうに喰いまくった一夜だったのである。

(まだまだ続く)

大地を守る会ウェブストアで、岩ガキ「春香」売ってます。少々高いが、試してみる価値ありですゾ。

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https://store.daichi.or.jp/NewsDetail/index/contentscd/20/year/2011/no/123

白イカはこちら↓
https://store.daichi.or.jp/GoodsDetail/index/itemCode/12107439

こじょうゆはこちら↓
https://store.daichi.or.jp/GoodsDetail/index/itemCode/06503536