本物の八百屋が今日をもって閉店する。 東京都江東区東陽三丁目交差点にある「八百周」 ほんとうの意味での野菜の目利きが店頭から去ることの寂しさ。

2011年5月31日 from 首都圏

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ひとつきほど前にも書いたが、とうとう八百屋の名店「八百周」が閉店する日が来た。本日7時くらいで完全にクローズだから、もし本物の八百屋という人種に興味がある人はぜひ、木場駅から徒歩5分のこの店に足を運んで欲しい。残念ながら、公約していた、おやっさんについて仕入れを撮影するというのは無理であった。先週までの発熱ダウンが痛かった、、、彼の仕事を記録として残せなかったのはほんとうに損失だ。せめてと思い、昨日夜にカメラを持って店頭に赴いた。

 

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おやっさんである野本要二さんはこのたび、八百屋業界の全国組織のトップに就任されるのだ。6月からは秋葉原にある青果物商業協同組合に詰めることとなる。そうなると、この店を維持することが出来ないので閉めることにしたというわけだ。

「店の切り盛りならあたしだけでいいけど、仕入れは父ちゃんしかできないからねぇ」

とおばちゃんが言う。そう、この店に並ぶものはすべておやっさんが眼を利かせて市場から選んで買ってきたものばかりだ。生産者ともつながっているし、小売業の仲間同士で連携して仕入れをすることで、生産者を守ったりしてきた。そんな専門的な仕事だから、ここの仕入れは誰にもできないのだ。

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いつもの「根付き春菊」を出してくれながら、おばちゃんがありがたい言葉をかけてくれた。

「あんたがここを継いでくれれば一番よかったのに!」

うーん ぐらあっと心が動くね。けれどもすでにこの店は売りに出し、2時間で買い手が決まったという。そうだよなぁ、人通りの多い交差点に面した、一等地だからなぁ。交差点の向かい側に移動して店を撮影する間、ほんとうにひっきりなしにお客さんが来るのだ!

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スーパーよりも品揃えが魅力的で、対人関係能力に自信がない人でもへいきでコミュニケートしちゃうおやっさんとおばちゃん、そして娘さん。この三人それぞれに常連客がついている。

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閉店間際まで常連のお客さんが「ほんとうに閉めちゃうの?」と声をかけてくる。そうだよなあ、とても明日閉める店頭にはみえない。

「まあ、お客さんがこなくて閉めざるを得ない辞め方よりも、こうやって惜しんでもらって辞める方がありがたいよ。」

と言うが、たしかにそうだろう。ちなみに八百周はこの交差点脇の店舗だけではなく、上の写真の道を奥へ行った州崎という地域にもう一店舗ある。こちらはおやっさんの兄弟が営む店舗で、これからも営業は続く。けれども、仕入れは違うので、同じ野菜が並ぶわけではない。

八百屋のアイデンティティは、仕入れそのものにあるのだ。

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稀代の八百屋である野本要二さんの、全国トップへの就任をお祝いするとともに、現役の八百屋引退を悼む。できれば、産直イベントみたいなのでもいいから、またお客さんの前に立って欲しい。

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ありがとう八百周! 2000年から木場に居を移してからの11年間、近所にこんなすばらしい八百屋があったことに感謝します。いつまでも元気に長生きを!