なんてこったい! 東陽三丁目交差点にある名・八百屋「八百周」が、今年の5月末で店を閉めるという。その理由は必ずしも悲しいものではないのだが、、、

2011年4月25日 from 市場人との対話,首都圏

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ひさーしぶりに昔住んでいた東陽三丁目周辺をぶらっとして、交差点のところの八百周に顔を出した。

「おう、やまけんちゃん!根付き春菊あるよ!」

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いつものごとく、店頭ではなくて冷蔵庫に隠してある(笑)、通人向けの商品を出してきてくれる。

 

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八百屋とスーパーの違い、それは本当に美味しいものを作る産地、生産者を選んで品揃えできることだ。どういうことかというと、スーパーだとどうしても「同じ品質のものを並べる」という命題があって、複数店舗でチラシ展開をするとなると、同じ規格のものを同じ価格で並べなければならない。そうすると一人の生産者の作るものだけで棚を構成するわけにはいかず、農協の部会が選果して出荷する規格品を使うことがベースになるのだ。その中には、よいものもあればわるいものもあり、選果の過程で均質化されてしまう。

八百屋は基本的に単店だ。だから品揃えでスーパーのように複数店舗用の大量仕入れをする必要がない。そうなると「茨城の○○で独りだけこの品種を作ってる農家が居るんだ。」というようなものを仕入れることも出来る。まさにこの八百周の親父が、そういう仕入れをする人である。

「市場もさ、俺が買うことがわかってるから、こいつの荷は俺用にとっておいてくれるんだ」

という信頼関係が続いているこの八百周なのだが、、、ショックな話があった。

「あのねぇ、実は組合の委員長になることになっちまってサ。」

おお、都の青果物小売商の組合のトップになるのか!それはめでたいじゃないの!

「ああ、それはネ。けど、そうなると仕入れが出来なくなるからさ。店たたもうと思うんだ。」

ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ?

なんでそうなるの、と驚いたのだが、、、実は、東京のトップになるということは、全国の支部をまとめる頭になるということなのである。そうなると自分の店の営業はやってられない。奥さんと娘さんはずっと一緒にこの仕事をしてきたけれども、でも仕入れだけはおやっさんだけがやってきたので、継げないのだ。

ああ、なんということだろう、、、このおやっさんにしかできない仕入れがあるのに、、、継げることなら俺が継ぎたいが、、、

仕方がない。食い倒れ日記としては、この江戸っ子八百屋代表格をきっちり記録に残さねばならない。5月末までの間に、いちど市場への仕入れに密着取材をしておきたいと思う。

本物の八百屋というものを識っておきたい人はぜひ、東西線の木場駅と東陽町の間にある東陽三丁目交差点の「八百周」へ足を運ばれたい。