2011年3月 8日 from 農政
はい、前のエントリの続きです。
これもちょっと面倒な話で、現行法では植物工場などを建設する際には、コンクリを敷き太陽光線を遮断したいわゆる工場にして施設内で栽培をする方式が多い。その場合は農地としてみとめられないので、何らかの形で宅地に転用し、その上に建てる必要がある。
けれども、基本的に生産性の高い優良な農地は原則として宅地転用を認めないので、施設は建たない。また、転用可能な土地を宅地にして建てたとすると、農用地とはまったく桁の違う金額の税金がかかる。これが「成長を阻害」しているのではないか、というのが一つの論点だ。
ただし今回の仕分け議論の主テーマは植物工場にはないというのが面倒な点。今回はあくまで大規模ハウスなどの中で、作業性をよくするためのコンクリ敷きもダメという点についての問題に絞られた。これは、事前協議の中で、植物工場の話が出るとその妥当性も含め議論が四散してしまうことが懸念されたから、などなどいろいろな事情がある。規制緩和を勧告する側としては非常に、論を進めるのが最初から難しい立場にあったと思う。
んで、仕分け会場に行ってビックリ、説明者の中央には筒井副大臣がどんと座ってる。筒井さんかよぉ。この人はなぁ、、、先日開催されたフードアクションニッポンアワードの表彰式に出席してくれたのはいいんだが、我々審査員講評をしている最中に会場内を廻りながらガーガーうるさく話してて、審査員講評がちょっとぶちこわしになってたんだよなぁ。筒井さんのせいというよりは、農水省の担当者がちゃんと仕切ってないから悪いんだけど。
しかし仕分け席上ではこの筒井さんがどかんどかんと迫力ある発言をぶちかますので、正直僕は「やるなぁ」と思った。僕は民間評価者であり、当該規制が「緩和すべきか、緩和すべきでないか」をジャッジする人間である。中立の立場からみて、今回の話は明白に「これまで通りでよし」と感じた。
従って、評価は「現行のままでよし」である。この結果では、僕以外にももう一名の評価者がそうつけた。
午後イチで開催された我が国酪農の競争力強化のための見直し、そしてこの農業用施設用地の大規模野菜生産施設等建築による農地転用基準の双方について、僕は「これまでの歴史的な流れの中で出来てきた合理性のある制度であり、拙速に変えていくことは望ましくない」とした。変えていかなければならないのは他の部分である。
例えば酪農の競争力を強化するためには、競争の原資となる価格が非常に安すぎることが問題であって、それは酪農家と指定団体の間で解決する問題ではない。むしろ、乳業メーカーとスーパー等の取引先の問題が大きいのである。
農業用施設に関する農地転用基準の緩和は、あまりにもニッチなニーズで、それを通すために大きな枠組みを変えてしまうと、いろんな部分に整合性がとれなくなってしまい、現場が混乱することが予想される。
ということである。次回もしなにか関わることがあるとしたら、ぜひテーマ設定の部分から関わりたいと強く思ったのである。
それにしても、今回の仕分けはいろんな意味でつらかった、、、評価者の席にいるとどうしても周りから「やまけんさんは農業のことわかってるんだから、ビシビシと質問をぶつけてね!」という期待を感じてしまう。けれども、僕は「うーん農水省の言ってることはもっともだ。」と思ってしまっているのである!そういう意味ではお受けした僕自身が人選ミスだったのかもしれない。
けど、必要のない緩和を必要ないとジャッジする立場がいてもいい。ほんの少しだけ、そのお役に立ったかな?ということで、今回はよい社会勉強をしました。民間評価者のみなさんも、議員の先生方も、蓮舫大臣も魅力的な方々でした。皆さんお疲れ様でした。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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