「株式会社は農地を購入できないから、新規参入が進まない」ということを言っているやつは信用するな! 農地法専門家からのメールご紹介。

2011年1月13日 from 農村の現実

先日の朝日新聞の記事は、いろんなところで反響を呼んでいるようだ。実は朝日新聞の別の部署の記者さんと話す機会があったのだけど、「あれはちょっと、ねぇ、、、」と眉をひそめておられた。

さてあの記事について、農地法に関する仕事に就く専門家からメールをいただいた。許可をいただき、転載します。ただしこの方の身元は、諸般事情あって秘匿させていただきます。

お世話になっております。ブログ拝見いたしました。心強いです、ありがとうございました。

朝日新聞について法律で語ると、1昨年12月の農地法改正、記事にあるように「パソナが農地を借りれるようになった」部分ですが、この時の改正で「下限面積50a」の要件も撤廃されております、塩道さんでも借りられたハズなのです。ではなぜ農業委員会が許可してくれなかったのか?農地法の壁は?と言うと、次の部分、、、

「勤め先のパソナが周りの畑と一緒に借りてくれ、塩道さんも社員として使えるように・・」

の部分でしょう。要は50aの下限面積要件が問題だったのではなく「パソナの社員だったから許可してもらえなかった」ということです(申し訳ありません、昨日電話で言えばよかったです)。それにしても朝日の記事は意図的過ぎですね。 農地の取得には「農業に常時従事すること」が原則ですので、OLしつつは無理。私に言わせていただければ「その程度で「農業始めようと」なんて口にするな!「趣味の園芸、もしくは、勤めつつ家庭菜園しようと思ったが農地法の壁に」でしょ!」となります。

確かに、農業始めるには「専業」にならないといけないというリスキーな部分がありますので、勤めながら農業が出来るように(企業を認めてるのですから)同じく個人にも「借地であればOK」とするぐらいの改正はいるのかもしれません。

そうすれば、例えば農業法人で働きながらトマトの技術を学び、自分の小さいハウスでも作ってみることが出来る!という方法は可能になります(ある地区を特例で認めて「経営者育成事業」なんていいかもしれません)。

やまけんさん、わたしはエセ専門家の方々がなぜあんな風に知ったかぶりで話せるのか不思議でなりません。先日もツイッターで田原総一朗が「農業の近代化とは何ですか?」の質問に「輸出です」と答えてました。その程度の認識なのかと目を疑ってしまいました。エラソーに「日本の農業の就業年齢は、、、」とか言ってますが、「なぜ地域や作物ごとに分けないのだろう?」「この人達は製造業を語るときに自動車もミシンもテレビも一括りにして「製造業は、、、」と話すのだろうか?」と不思議に思います。

ところで、朝日新聞のあの記事を書いたチームは、本気で「農地法の壁が新規参入を阻む障壁となっている」と考えているらしい。というのは、先日、都内某所にて農業ジャーナリストの勉強会があって、そこでとある政治家がTPPに関する話をしてくれた。その際に、朝日新聞の記者が「農地流動化のためには株式会社が農地を取得できるように、また過半数以上の議決権をもって資本を自由に投下できるようにしないといけないのではないか」ということを質問していたのだ。

ただし、その政治家は非常に農地法等の扱いに熟達した方で、一言痛烈な言葉で返しておられた。

「そういうことをいうから企業って信じられないんですよ。農地は買わなくても農業できるように、数年前に大きく法改正したんだから。」

拍手喝采、でした。けれどもTPPは簡単に賛成反対できるようなものではない。非常に難しい選択だと言っておられた。確かにそうだ。現実はマスメディアが簡単に白黒つけられるようなシロモノでは、ないように思う。