北海道の十勝地方はここ一週間でいきなり豪雪に見舞われたということだが、ほんの20日前にはそれがウソのような快晴の状態だった。十勝地方の中小企業家同友会のお招きで帯広空港に降り立つと、以前は西胆振地方で事務局をしていたI氏が迎えに来てくれていた。
「いやー十勝はスゴイです。なんといっても農業で食べていける人たちが非常に多いですね。畑作4品(麦・大豆・甜菜・馬鈴薯)を手がけている農家さんが多いので基板としては盤石なんです。でもそれだけじゃいけないと思っている人たちが大勢居ます。やまけんさんの話はそういう人たちに聞いて欲しいと思っています」
そう、帯広の繁華街にいくと、いまでも最大の顧客は農村の生産者達だ。なんでも馬鈴薯(じゃがいもね)の収穫シーズンになると、クラブのママさんがおにぎりなど握ったのを畑まで持って行くらしい。そうしておくと、収穫終了後の身体を休める時期にお客さんとして戻ってきてくれるという営業行為なのである。そんなこと、十勝地方以外ではそうないだろう。
さて。
「まずお食べいただきたいのが、池田町で羊肉をやっているところです。ボーヤファームという肉用子羊を生産しているころがあって、そこの肉をレストランで提供している『まきばの家』という滞在型の施設に行きます。」
ん?池田町の羊? それって以前きいたことがあるぞ。そう、あれだ、奈良の東大寺の目の前で大成功を収めている「イ・ルンガ」の堀江純一郎君から聞いたことがあるのだった。彼のところで使っている子羊がたしか池田町から行っているはずだ。
さて、十勝帯広空港から池田町までは小一時間、やはり北海道は広い。それにしても、雪が降る前の十勝帯広空港周辺は本当に景色が雄大で素晴らしい!
こんな風景が目の前にどんどん変容しながら流れていくのだ。
どうだろう、いまは雪が積もっていると思うが、それはそれで美しい風景になっていると思う。防風林として立つ木々の列が美しいのであって、これは自然状態というのではなく人が農業という営みの中で創り出してきた景観だ。これも、TPPがまかりとおれば維持できなくなることは間違いない。景観を守るためだけに補助金だしたっていいくらいだと思う。
それにしても十勝って素晴らしい。いま、移り住みたいリストの相当上位にくること間違いない。さてそんなことを思いつつ、まきばの家に到着。
■まきばの家
北海道中川郡池田町清見144
TEL : 015-572-6000/FAX : 015-572-4081
http://www.makibanoie.com/restaurant.php
このまきばの家、滞在可能な施設でキャンプ場と宿泊可能なコテージがいくつかあるのと、ふらっとくる客のためのイベントとしてシープドッグショーもある、なかなか楽しい施設だ。
コテージは最近の流行もあって、ペットと一緒に泊まれるコースもあり、大人気を博しているそうだ。
そんなまきばの家のメインダイニングが「ロカンダ・デル・ボスコ」。
ここで、ボーヤファームの羊肉を美味しく食べてもらうことに腐心してきたオーナーが待っていてくれた。
オーナーの林秀康さんは、本業は建設業。というのはよくあるパターンではあるけれども、非常に情熱をもって羊肉、とくに「ホゲット」を広げていきたいと考えている人だ。
「うちは、お隣さんがボーヤファームという、素晴らしい羊肉の生産をしている農場なので、そこの肉を美味しく提供することを念頭に頑張ってきました。最近はやりのラムもいいんですが、いま非常に力を入れているのがホゲットという肉です。ラムは生後12ヶ月未満の羊で、そこから24ヶ月までのものがホゲット。24ヶ月以降はマトンと呼びます。私としてはホゲット肉は旨味もあって香りもよく、バランスのとれた肉だと思うんです。」
そうこういっている内に前菜到着。
ジャガイモのサラダ当然ながら十勝産である。
豆のサラダも、すべての豆が当然十勝産だ。
そして奥のブルスケッタはなんとホゲット羊のハツ(心臓)をリエット状にしたもの!
コレが実に上品なパンチの効いた味だったのだ。
「なんか、味に強さを感じますね。」
「そうなんです北海道で暮らしている人間としては、ある程度匂いや味のクセがないと、羊を食ったって気がしないんですよぉ」とI氏も言う。
という内に、その羊肉が運ばれてきた!
「いつもはこうした生の形では提供していません。あくまで火を通していただくのが前提なんですが、やまけんさんなら刺身でお食べいただくのがお好きかと思いまして、、、」
はい、好きです!
みてくださいこの羊肉の線維の揃い方。滑らかな舌触りと、ちょっと歯を押し返しそうな感じがみるだけで伝わってくる。
ということで刺身醤油でいただいた、、、
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
と久しぶりに声が出てしまう美味しさ!
クセがない、というわけではなく、「美味しいクセ」があるのだ!でも羊が嫌いという人も特に「この匂いイヤだわ」などと気付くようなことなく、「あら美味しいお肉」と言ってしまうこと間違いない。十二分な旨味もたっぷりと湛えられている。ホゲット、旨いねぇ!
このホゲットのトリッパをソースにした手打ちパスタ。
「そうか、内臓肉も手に入るんですね!」
「そうなんです!そこが一番の強みで、もちろん量的には非常に少ないんですけど、内臓がとても美味しいんです。」
さあそしてメイン登場。
ジューシーな外観、いやもうかぶりつくしかないっしょー!
ラムよりも半年程度長く育てているというけれども、嫌な臭みはまったくゼロ。それどころか旨味の濃さと風味の奥深さは数段上だ。ホゲット、旨いじゃないか! いや参りました。
「この辺は雪が降ると一気にお客さんも減るので、そこが難しいところなんですけどね。」
うんまさにいま、どか雪で大変だと思うけれども、、、けど、オフシーズンの方がゆったりしたコテージでのんびりできそうだし、こんなに美味しい羊肉コースが食べられるならば、ここでカンヅメになりたいという気が強くしてしまったのである。
それにペットがいて長期の旅行ができないという人にも優しいしね。
「そう、実は私どもで開発した、ペット向けのおやつとかがあるんですよ!これはスコーン。」
あれれれマジですか! 私こういうのを見ると食べちゃう人間です。
これがですな、ペット用だけあって塩分や糖分がない、むちゃくちゃにリーンなお味。そうか、麦も十勝では生産しているしね!おそろしい、ここの料理は何も言わないけれども、ほとんどが地元産の食材でできあがっているのである!
「このスコーンはペット連れでお泊まりになるお客さんからかなり好評なんですよ。」
うーんそうだろうねぇ、、、俺はペット飼ったことがないからわからないけど、、、
デセールをいただいて、若きシェフとごたいめーん。
北海道出身の若手シェフもやる気満々。いいですね。まだ3時半くらいなのに、外はちょっと暮れてきていい感じ。
ちょうどいいので、ボーヤファームをみていこうということに。
ボーヤファームのこしかたについてはここを観ていただきたい。なかなかに試行錯誤されながら、肉用羊の一貫経営を確立されている。
隣接したボーヤファーム内に入ると、シープドッグつまり羊追い用に訓練されたボーダーコリーが居る。
「ものすごい訓練された犬たちなんですよ。あ、あれが安西さんです!」
「おおおー 貴方がやまけんさんですかぁ!いろんなところからお名前は聞いてたんですけど、つい昨日もね、一月に開催されるエゾシカサミットの件で話が出たばっかりです」
あーーー そうなんですよ、来年あたまに開催される蝦夷鹿サミットの、進行役をしなきゃならんのでした、、、ご迷惑おかけしてます。
さっそく安西さんの羊舎をみせていただくことに。考えてみれば商業ベースで羊を育てている人のところは初めて入るなぁ。
安西さんの経営の中でもキモとなるのは飼料設計らしい。牛は勉強したけど、羊はようわからん、、、今度じっくりとお話を聞きたいと思う。
羊の顔も、深い思索をしているような落ち着きである。
いやー面白かった!
最後にシープドッグたちを呼んで見せてくれた。口笛を、聞こえるか聞こえないかと言うくらいの音量でヒュッとふく。そうしたらものすごい勢いでこの子達が走ってきた!カメラを構える暇もない!
ボーヤファームのシープドッグの映像が、Youtubeのムービーにアップされている。興味のある人は是非観てください。なかなかにスゴイものですよ。雪が溶けたら、まきばの家で行われるショーを是非観てみたいと思ってしまった!
ということで、到着後いきなり十勝食材に引きこまれてしまったのであった!林さんごちそうさまでした、そして安西さん、また遊びに行かせて下さいネ。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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