2010年12月17日 from 日本の畜産を考える,農家との対話,農村の現実
僕の短角牛である「ひつじぐも」は、春から秋までは広大な牧野で放牧されるが、草が枯れて雪が積もる冬の間は里に下りる。僕も加入している、大清水牧野組合で短角牛のオーナーになっている人の牛は、オーナー用の牛舎に入り、看守さんがついて世話をしてくれる。思えば二戸を初めて訪れた時、ここをみせてもらって「俺もオーナーになりたい!」とお願いしたわけだ。
この方が、オーナー牛舎の面倒をみてくれている看守さんだ。
ご夫婦で看守小屋に寝泊まりして世話をしてくれる。僕が近寄ると後ずさる牛も、看守さんには近づいていく。日々の世話をしていると通じるものがあるのだろう。
残念ながら看守さんと話をしても、30%くらいしかわからない。津軽半島の突端のほうと岩手の旧南部藩のご年配のことばは、関東の人間が聞き分けるには本当に難易度が高い。
小屋の脇に積まれた牧草のサイレージ。サイレージというのは、牧草を収穫して発酵させたもので、昔は専用の建物を建ててそこへ草を詰め込み、発酵させていた。それがいまではごらんのように、畑で刈り取った後にビニール資材で何十にもラップする。空気と遮断されるので、植物内の水分で自然に乳酸発酵が進むわけだ。これを開けると、独特の古漬けのような香りがする。冬期はこれを牛に与える。肉牛には輸入コーンを与えて太らせるのが普通だが、繁殖用の雌牛は肉牛と違って、カロリー満載の餌を食べることはないのである。
奥の小屋には大量のワラが。これは敷料といって、牛舎の床に敷き詰めるものだ。おがくずと裁断したワラをまぜたものを敷いておく。糞尿を吸ってしっとりした敷料は定期的にかき出して掃除してやらねばならない。
看守小屋の外に、洗濯物のようにして大根の葉がかけられていた。
これを「ほすな」という。「干し菜」のことだ。岩泉町では有名な在来野菜である安家地大根の葉をこうしてほすなにし、冬の間の貴重な野菜として汁に入れたりして食べる。
と思ったらなんとこの干し菜は牛用だそうだ。
「ほすなを牛に食べさせると、母牛の胎盤が出やすくなる」
ということだったのだ!なんとも深~いノウハウである。
順調にいけば3月あたりには、また仔牛が産まれる。看守さん、ひつじぐもをどうぞよろしくお願いします。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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