2010年12月 2日 from 農村の現実
先日、親友の結婚パーティーにて会ったT田君らと農業にまつわる最近のメディアの無理解について盛り上がった。
いちばん「おかしいよねアレ」となったのが、表題のもの。よく若手農家とかイケメン農家を持ち上げる特集とかやるときに、
『なんと年収1600万円!』
とか、一般の人が観たら「なんだそりゃ!?すっげー儲かってるジャン!」
という風に見えるやつ。
確かに僕の知っている篤農家(とくのうかと読む。高い技術を持つ農家のこと)さんの中には、年間で1500万以上稼ぐ人もいる。けどね、そんな人、そう多くない。
真実は、先の話でいけば「年収」ではなくて「売り上げ」が1600万円、ということである。経費を差し引く前の売り上げ額を「年収」と取り違えているケースが多いのではないだろうか。
また、「年収1600万円!」と言われると「こいつ一人でかぁ」と思われるだろうが、実際にはその農家一戸の全売り上げであることがほとんどのはずだ。農家は通常、家族労働が前提である。40代の男性が主力であったとしても、嫁さんも、両親も総出で働くのが普通だ。それで合わせて1600万円の売り上げ。
そこから経費を引いてみる。種子購入代、肥料に農薬、農業用機械の燃料費や償却、施設園芸ならハウスや高設ベンチなどの資材、軽トラ燃料、大きいとこならパートさんの人件費、などなど。おそらくそれで普通半分は飛ぶでしょう。そしたら一家の年収が800万円程度。
けどね、実はこれ、人件費が入ってない。家族労働分を時給1000円くらいで入れてご覧なさい。ちなみに労働時間は8時間以上だし、土日休みとかないからね。
「年収1600万円!」とは全然違うでしょ。それでもやっていけているのは、いろんな意味で生活コストが安くすんでいるということと、家族の誰かが働いて兼業収入を充当しているから。
「兼業農家はけしからん!」
などと言うやつが多いけど、逆だよ。兼業しないと現金収入がないんだよ。農業といういとなみをその辺の会社組織と同じように考えたら成り立たない。そういうことに無理解な人たちが平気で農業のことを語り、それを一般市民が鵜呑みにして、日本の高品質な農業がつぶれていく。粗悪なメディアが変わっていくことは出来るんだろうか。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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