2010年11月15日 from 出張
なるべく、土日の週末には出張を入れないことにしている。あまりに休みが取れず身体がどうにかなってしまいそうだからだが、どうしても断れない講演で八女に向かう。
まだ全部書き終わってないのだけれども、しばらく前の八女編でこの地域の伝統色である里芋まんじゅうを取り上げた。塩でゆでた里芋を、地の小麦粉に米粉を少し混ぜた生地で包み、蒸し上げた素朴なおまんじゅうだ。これが本当に絶妙な美味しさで、一発で参ってしまった。第一、塩茹でで里芋を食べるということはあまりないわけだが、塩味だけで本当に美味しくゆだるのだ。それが具になった、ぶっきらぼうな蒸しまんじゅう。古くからの麦作地帯である福岡の真骨頂といっていい味だ。
しかもバリエーションがある。里芋が穫れない時期は、ジャガイモを具にする。このときジャガイモは塩ではなく醤油で甘辛く煮染めるのがミソ。芋の特性に合わせて味を変えるわけだろうが、ばっちり決まって美味しい。
ところがどっこい、芋まんじゅうはこの二つだけではなかったのだ!
羽犬塚駅前のちゃんこ屋。カブの煮物が出てきたが、このカブは店が所有する畑でとれたものだそうだ。
ちゃんこをいただきながら、農協の皆さんとの話は八女の郷土食をテーマに、盛り上がってきた。
「そうですか、里芋まんじゅうはそんなに印象に残りましたかぁ。私らが子供の頃は、おやつといえばアレですし、農作業の手伝いをするとき、こびるというんですか、飯代わりに食べたのもアレでした。」
そうですかそうですか、やっぱりそうなんですねぇ、、、
「そうそう、あの唐芋が何とも言えず甘くて、、、」
ん?唐芋? 里芋まんじゅうですよね?
「あー 山本さん、里芋を入れるのはね、八女の山の方の文化なんですよ。私らはホラ、合併して八女になったけど、筑後という町だから。ひら場の芋まんじゅうはね、唐芋(さつまいも)なんですよ。」
ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ
サツマイモバージョンもあるのかよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
「そうそう、私らが食べるのは芋しか入ってないけど、お客さん向けにはあんこいれたりしてね」
え?それって熊本県でよく出てくる「いきなり団子」じゃないですか?
「ああそうそう、こっちでも言うよ、いきなり団子。けど、麦作地帯のこの辺じゃホント昔から作ってたからねー。熊本だけにあった訳じゃないと思うよ。」
いやー もうこれはホントにびっくり。こんど農文協の聞き書き郷土食シリーズの筑後編と熊本編を読んでみようと思ったのである。
しかもこのセンター長が言うのだ。
「あのですねー 唐芋まんじゅうに「ガニ漬け」をちょいっとつけて食べるのが本当にうまいんですよぉ」
ええええっ ガニ漬けって、あの沢ガニや海ガニを砕いて、唐辛子と麹で発酵させたあれですか!?
「そうそう。この辺じゃ沢ガニだね。春になって冬眠から冷めて、まだミミズとかを食ってないやつを捕まえて漬けるんですよ。餌を食べ始めちゃうと老廃物がでてダメなのね。ちょっと形が残るくらいに砕いて漬ける。はさみの部分は先に外しておいて、漬け込むときに戻すんだ。んで、ハサミの部分はカリッと食感を楽しむ。」
うーーーーーーーーーーーーーーん
食べてみたい、、、 でもこの時期にはもうほとんど家のガニ漬けは残っていない、または固形物がない状態のものしか残っていないそうだ。ぜひその唐芋まんじゅうにガニ漬けをちょいと漬けて食べるというのを、いつの日かやってみたいものだと思う。
さて、その夜は久留米・八女地域の悪友どもと再会。
地元の酒造である「繁升」の親戚筋ということもあって、繁升の酒は全部並ぶという朝日屋酒店。
主人の高橋君の趣味で、全国の選りすぐった佳い食材や調味料が並ぶ。
彼のお薦め店・町屋の内装を改築して金土日だけ営業しているカフェ「スコシ」へ。
小さな戸をくぐると、、、
暖かで豊かな空間が広がっている。
夜だけど、酒を飲まなくでも大丈夫。フレンチプレスで入れてくれる美味しいコーヒーもあり。
気の利いたご飯もあり。
そして悪ガキども勢揃い。
左から高橋君、自然食品店を営む産直や蔵肆の鶴久いたる君、そして肥料屋のトミマツ。それと、原木椎茸でやっていけないかと模索中のシイタケ君。
彼が持ってきてくれた、軽く干したシイタケを揚げたスナック。
これがなかなかいい!グアニル酸の味・満開である。でも味付けに市販の塩コショーをいれるのはイカンよきみ。アミノ酸の味になっちゃうじゃん。
栗は、低温貯蔵で甘みを出したもの。
たまには、酒を飲まない夜もいいもんだ、、、
さてその翌日、晴れ渡った空の下、JAのセンター広場を開放してのお祭り。
「あらぁ先生、昨日、唐芋まんじゅうが食べたいって言うから、生産者のシンコさんにお願いして作ってもらったわよ!」
えっ マジですか?
まだほかほかの唐芋まんじゅう。中が黒いのはあんこが入ってるバージョン?
「そうね。これはあんこが入ってるごちそうバージョンね!」
うれしくなって、役員室に入るなりかぶりつく。
やっぱりこの辺の粉を作っているからだろうか、淡い色がついて食をそそる。ガブッとやると、存外に甘い中身。それもあんこの甘さだけじゃない。サツマイモの香りを伴った甘さが!
これは美味しい、、、見ての通りあんこはほんのちょびっと。これはあくまでサツマイモの美味しさを主役としたまんじゅうなのだ!立て続けに3個食べてしまいました。
普及員のとわたさんもかぶりつく。
「僕はこの辺の出身じゃありませんけど、でもよう食ってましたね~ もちろんあんこナシが普通でした。」
うーむやっぱりこの芋まんじゅうという文化は素晴らしい!ということも織り交ぜて、300人くらいの生産者の皆さんにお話。終わると、婦人部が今日、無料で来場客に振る舞うだんご汁と混ぜご飯が!
だんご汁は、いってみればすいとんのようなものだが、練った小麦の生地をヘラのようなもので切って鍋に入れるのが特徴らしい。残念ながらそのシーンは見られなかった、、、
それにしてもニコンD7000、すごい中級機です。ごらんのとおり、湯気の微細な粒状感までハッキリ写る、、、
混ぜご飯がまた美味しい!こんにゃくが入ってなくて助かった、、、
外に出ると、さっきのサツマイモまんじゅうを作ってくれたシンコさんが居た。
シンコさんが手にしているのはじつはジャガイモまんじゅう。ナス部会長の奥様がみんなのおやつ用に作ってきたジャガイモまんじゅうである。
いやもうしびれるよね、、、
予言するけど、俺はまたこの地に来て、芋まんじゅうの研究(食べるだけですが、、、(笑))をしたいと思う。
八女の皆様、ほんと美味しかったです。ごちそうさまでした!
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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