2010年6月30日 from 出張
ソースカツ丼の聖地は福井県福井市と群馬県の桐生市で、これが日本でのオリジナルといっていいだろう。これに対して信州の駒ヶ根などリンゴ産地では、リンゴの有効活用方策としてソースへの利用が促進され、ソースを使う料理としてのソースカツ丼が産まれた。昨今の新興B級グルメでは、必ずしもその地域で昔から食べられているわけではないものが出てくることがあるが、信州のソースカツ丼はそういうものとは違い、すでに地域でかなりの需要や文化を生み出している、立派な郷土食と言えるだろう。
なーんて前口上はどうでもいい!
恵那川上屋のスタッフが信州に新しく開いた「信州里の香工房」の視察に赴く昼餉は、彼らが思わず「あそこに行くの?」とたじろぐ「志をじ」。
店内はペコちゃんとかキューピーちゃんとかザクヘッドとか、きっちゅなフィギュアや古物がごわっと陳列された座敷だが、まーそれもいい。この店のソースカツ丼の盛りはかなりスゴイのだ!
大中小とある中で、僕を除く3名がきれいに大・中・小を頼んでくれた。ので、比較可能だ。大にはバンがどでかく、かつ厚みもたっぷりなロースの一枚肉を豪快にあげ、ソースにドポンと着けたのを切り分けたのがこれでもかと乗っている。
小との大きさの差はこんな感じダ!
女性にはもう全然小で十分なボリューム。ちなみにさきほどから、何も乗っていない小皿がついているが、これは「いま食べないカツをよけておく皿」である。福井県のソースカツ丼は丼の蓋を裏返してそこによけておくが、ここでは小皿である。
で、僕はじつは大を頼んだわけではない。特製志をじ丼というのがある。それはトンカツに加えてエビ・ホタテ・サクラというのが乗っている。サクラとは、これまた信州の郷土の味である馬肉。そりゃあこれしかないでしょう!と頼んでみたのだ。
サクラ、エビ、ホタテをよけてみても、どんぶり上のトンカツ占有率はこんなに高い!
驚いたことにこの店のロースはさっくりほっくり、上質な肉質。叩いて筋切りしているのか、程よく噛みきれるいい食感なのである。そして群馬や福井のドライ系のソース味に比べると、リンゴが多量に使われているソースだからだろうか、甘やかである。それでも同席して大を食べてくれたS氏によれば「他の店より甘さが抑えられていると思います」とのことだ。
さくら、つまり馬肉カツは豚に比べるとちょっと堅め、モモ肉だろうか?噛み応えがあって美味しいが、噛み応えの分、急速に満腹になっていく(笑)
福井・群馬のソースカツ丼にはないキャベツの千切りが、脂まみれになる口内をさっぱりさせてくれるので、案外最後まで行けますぞ。ただし、初めての人は僕のように「ぜんぶ入り」の志をじ丼を頼みたくなるかもしれないけれども、これはやっぱりふつうのソースカツ丼を頼むべきだと思った。
というのは、エビ・ホタテって、別に信州で穫れてるワケじゃないし、ソース味で美味しくなっているかというと、少し微妙。とくにホタテは二つも乗ってくるのだけど、一個で十分。これならば実に洗練されたジューシーな豚ロースのカツを最後までわしわしと食べた方がいい。事実、細身のS氏は、カツ2きれを僕とK氏にスルーパスしてくれた以外は、最後までするすると食べていた。
しかしこの店、実によい。美味しいし、それにおかみさんの接客がいいのだ。人気店なのにおごっていない。他のお客さんとの会話を見ていてそう思った。
ということで昼飯まだの人はぜひソースカツ丼を!
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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