さちとの別れへのカウントダウン 「牛肉」ではない。牛の肉、さちの肉をいただく日が近づいてきている。きたる7月中、さまざまな方法で「さちの肉」をいただく機会を設けます。

2010年4月14日 from イベント,日本の畜産を考える

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既報のとおり、さちが6月中頃には肉牛として仕上がり、出荷の見通しだ。牛はだいたい、生まれてから25ヶ月~30ヶ月程度で出荷適齢期を迎える。必ずしもその期間のものが美味しいということではなくて、現代の肉牛肥育技術においては、そのあたりで最も経済性と食味とのバランスがよい方法が成立しているということだ。本当はメス牛には二産くらい子を産ませてから半年肥育したものの方が旨いと言われていたりするが、経済的に合わないことが多いわけだ。

で、さちはメス牛として生まれ、通常なら繁殖牛(つまり子牛を産ませる)に廻るところだ。短角牛は個体数が少ないから、子を産んでくれるメスは貴重だからである。しかしこの娘の不幸は、僕がオーナーになった牛の子として生まれてきたことにある。

僕は「牛肉」という製品の価値が消費者に正しく伝わっていないと感じている。それは、単に白いパッケージに綺麗にスライスされた精肉が乗っている、パッケージ商品として売られている「牛肉」しかないからだ。

ほんとうは牛肉とは「牛の肉」である。ヒトの10倍以上の体重に育つ大型動物が蓄えた肉と脂を食べるという、実にありがたく、非日常なご馳走なのだと思う。

でも、「牛肉」という言葉はそうした命との連関をプツンと切ってしまい、消費者にビビッドな感情を与えない。コモディティとしての肉商品、それが「牛肉」という呼び名から受ける印象である。もちろんこれは豚肉や鶏肉においても全く同じである。

農の世界で仕事をする僕であっても、年の半分以上を都市で過ごしているため、食べ物と命との連関を見失っている部分がある。それをきちんと自分で認識するための方法として、「牛を飼う」ということを始めたわけだ。

だから、一頭目に生まれる牛は、メスであっても肥育に回して、肉にするのだと心に決めた。いまから思えば頑なに過ぎた。繁殖にまわしときゃよかったと後悔している。本当にゴメンよ、さち。

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まあ、悲しんでばかりも居られない。6月のいずれかの日、預けてある牛舎から青森県のと畜場へ運び、と畜・解体を行うところは僕も一緒に行こうと考えている。

と畜されたさちは、一晩放血・冷却された後、部分肉へと解体される。そこからどうするか。

いま頭の中ではこう予定している。

牛からはステーキなど広範囲に使えるロースが二本、ヒレも二本とれる。二本というのは身体の右左から一本ずつということだ。このうち半身分のロース・ヒレは、静岡県の「さの萬」さんにお預けして、ドライエージング処理を45日以上かけてみようと思っている。そのドライエージング肉をどうするかはまだ決めていない。

のこるロース・ヒレ一本ずつと、モモやスネ、バラといった他の部位の行く末だが、、、

2年前に、週刊アスキー誌上で短角牛まるごと一頭通販を実施したのを覚えておいでだろうか? ロースとヒレのステーキセットと、その他の部位をミックスした焼き肉セットを、しめて250セット販売したものだ。週アス編集部の「4週間かけてじっくり売れば、売り切れるでしょう!」という予想を大幅に外し、なんと4日で完売してしまった、伝説の企画だ。

■アスキー365共同企画 「二戸産いわて短角和牛 一頭山分け企画」 を本気で開始する!
http://blogmag.ascii.jp/yamaken/09/000899.html

■完売御礼! って、もう? 4週やるはずの企画が、最初の週で終わってしまった。http://blogmag.ascii.jp/yamaken/09/000908.html

今回、ロースとヒレを除いた部位の半頭分を、この焼き肉セットにしたいと思っている。100人分くらいになるだろうか。これを通販したい。今回も週刊アスキーで通販出来れば、と思ったのだが、数量が少なすぎてペイしないらしく、企画がボツになった。ということで、このブログ自前でやります。

週アスでやったときと同じように、出荷日は短角の処理の都合で決めさせてもらい、当日必ず受け取りしていただくという制約を買ってくれる方に強いることになるのだけど、その価値はあると思う。

さて、残るロースとヒレ一本ずつとその他の部位・半頭分については、希望されるレストランさんへ販売をしたい。可能であれば、さちを偲びながら、全部位を食べるフルコースをやりたいと思っている。以前、プレミアム短角牛の全部位を食べる会を東京バルバリで実施したけど、同じようなイベントを複数軒でできたらいいな、と思っている。

特に最近、関西方面で赤身肉の関心が高まっているようなので、関西でこれを実施してくれる店がないかなぁ、とひそかに思っているところだ。

関心のある料理人さん、いらっしゃったら連絡を下さいね。

参考までに、短角牛のメスを解体した場合の、各部分肉の重量を下記に示します。価格は、かかったえさ代や加工手間賃などを加えて算出するので、お問い合わせ下さい。

※以下は半丸(半頭分)です。
※もちろんカット売り可能。1Kg単位を考えています。

部位名 重量(kg)
ネック 4.0
肩ロース 19.0
肩バラ 6.0
肩(ウデ) 16.0
トウガラシ 2.3
前スネ 5.0
内バラ 17.0
外バラ 17.0
リブロース 6.0
サーロイン 10.0
ヒレ 4.0
内モモ 10.0
シンタマ 7.8
ランイチ 9.4
外もも 6.0
シキンボ 3.0
ハバキ 2.3
トモスネ 2.5
   
合計 147.3

さちの肉をどういただくか。これはとても重要な問題なので、いろんなひとのお知恵を借りながらやっていきたいと思う。