2010年2月18日 from 出張
工藤君、といえば錦糸町「井のなか」の店主にして僕とは無二の親友、だけれども、その工藤君ではなく新しい工藤君との出会いがあった。
以前、岩手の二戸で短角牛を専門に出す日本で唯一の焼肉店「短角亭」でギュウギュウに肉を喰らっていたとき。二戸が誇る養鶏の大企業・十文字チキンカンパニー社長の十文字さんが形態を取りだした。
「やまけんさん、面白い男が居るのでぜひ紹介したい。 あっ 工藤さん? あのね、やまけんさんが隣にいて、いま二戸で飲んでるんですよ! いまどこ?盛岡?だったらすぐ来られるよね?一時間くらい一緒にメシ食って最終で帰れるじゃない。おいでよ~~」
かなーり無茶な誘い方である。俺なら絶体に行かない。しかし!
「え?来る?じゃあ待ってるよー」
来るの!?しかも盛岡から? ちなみに盛岡~二戸間は新幹線で20分程度、とはいえ新幹線ですよ。まじかいな、、、
そうして1時間後にかけつけてくれた工藤君は、ガタイと威勢の佳い気持ちのいい男だった。
「彼が経営している飲食店がいくつかあるん だけど、実に佳いんですよ!」
と十文字さんが絶賛する。そうか!それははやく行かねば、、、しかも彼と話すうち、なんとなくピンと来て訊いた。
「もしかして、70年か71年産まれ?」
「あ、そうです!」
同い年である、、、なんかね、クイッと来るものがあるんだよね。
東京に帰ってからすぐに、彼から小包が届いた。オリジナルのパッケージに入った冷麺とじゃじゃ麺のセットだ。実は彼が率いる「コラゾンカンパニー」では、加工食品の製造から、首都圏向けの食材販売まで手がけている。
「短角牛もバンバン売ってるんですよ!」
マジ? しかも送られてきたオリジナル盛岡冷麺、麺が図太く、スープもはっきりした味付けで旨い! ぴょんぴょん舎の軟弱冷麺とは違う! これは早く現地に往かねばならん!と思いながら月日は経ち、数えれば半年以上後。ようやく実現したのである。陸前高田から八木澤商店の河野社長の車で盛岡に送っていただき、よし、コラゾングループ傘下の店に行こうと思い立ち、工藤君に電話をかける。またいきなりのお誘いなのである。
「おおおおおおおおお ご一緒しますよ! そうだなぁ、やまけんさん何食べたいっすか?」
そうねぇ、がつんとしたものが食いたいかな。
「わかりました! じゃあ僕の兄貴がやってる韓国料理の店にいってから、うちの店を廻りましょう。うちの経営してる店は割とB級感の強いところとかが多くて、ガツッとしたのは少ないんですよ」
駅前のホテルのロビーで再会し、また岩手に僕を誘った佐藤ヨシヒコ氏(S藤氏)も呼び寄せ、目指したのは盛岡じゃじゃ麺の「白龍」のある通り。
「この鳥居をくぐらないで左に20歩歩いたところが兄貴の店です。」
CUCCAと書いて「クッカ」と読む。おしゃーれな店構えである。店内にはいると女性客ばかり。なんだこれガッツリ系じゃないじゃん!とにわかに緊張。隠れ家感のあるこあがりに上がり込む。
彼のもう一つの名刺「サネバネ本舗」のをいただく。「さねばね」とは岩手の言葉で「しなければならない」のことだ。
工藤君は、以前は関東でフィットネスクラブのインストラクターをしていて、辞めてシステムエンジニアになったり、いろんな遍歴をしてきた男だ。その時代の話を聞いているだけですごく面白いのだけど、やっぱり心の底から食べることが好き。それも僕と同じくガッツリ系が好き。
だからこそ、最初から飲食にいる人間には出来ないようないろんな芸当をやってのけている。きけば人気の高い銘柄豚の、精肉だけではなくモツまでも手がけていたり、幅広い。かなりの商才だ。商才だけじゃなく、彼の商品作りも非常に面白い。まあそれはこの店以降によくわかることになる。
「兄貴にいろいろ頼んでありますが、まずはホルモンのチゲからいきましょう! 」
うーむ この真っ赤な灼熱地獄的様相でクツクツと煮えている感があまりにソソル。
工藤君自慢の 豚モツ、甘辛いチゲの風味とタマネギの香りが合って、思わず最初から白飯が食いたくなる!
この席に、別の会に出席していた鈴木さんも乱入! 鈴木さんは、一昨年に第一回の「岩手県北産地ツアー」を開催したときの、二戸振興局のキーマンだ。彼の素晴らしき熱い采配で会は見事大成功。しかしその年度末に、盛岡の本庁流通課への異動が決まってしまった! うわーん! けど栄転なのだし、これはおめでたきこと。その鈴木さんと久々の再会だったのである!
意外や意外、鈴木さんはカメラ好きであった!
「実はあまり口に出しませんでしたが、私は高校時代からカメラやってたんです。けど、、、ミノルタのカメラだったんですよ!いまはソニーになってしまって、ちょっとなぁ、、、と思って居るんですが、、、やまけんさんはキヤノンからオリンパスへ行って、今はニコン。ちょっと世界が違うしなぁと思って話してませんでした。」
なんだよーーーーーーー 鈴木さんそんなこといわないでカメラ話で盛り上がりましょうよ!
「そうなんですよ実はそろそろデジタルも欲しいんですが、、、ミノルタファンとしてはソニーブランドになったのを買うのはちょっと嫌だなぁ、と、、、かといってニコンは!やっぱりニコンには敵対意識が残っているんで、うーん、、、」
カメラマニアの心って複雑なのである。僕はデジタル一眼時代からカメラを始めた人間だから全然そんなことないんだけどね。
さてこの店はやっぱり美味しいものをいろいろつまみたい女性客にフォーカスしているようで、鍋も小さめ、色んなチゲの味を楽しめる。
テンジャンチゲは、ちゃんと本物の納豆を使っている! 韓国のテンジャンチゲは納豆をすりつぶして使うんだけどね。これも美味。
スンドゥブチゲは卵の黄身を割って 、純豆腐に半熟卵がまとわれるようにして食べるのが吉!
これ、名前忘れたけど、よーく熱した石鍋に味付けした卵液をドドッと入れてかき混ぜ、スフレ状にして熱々を食べる料理だ。
石鍋は熱を逃がさないから、ジュブジュブと均等に素早く熱が入っていく。韓国の濃ゆい味付けで、卵料理とは思えないコク。
「やまけんさん、うちのほうでエゴマの葉っぱを大量に購入して、ぜんぶ醤油漬けにしてあるんです。それを巻いたおにぎりが旨いんですよ!」
おおおおおおおおおおおおおお これホントに旨い!
「岩手の方ではエゴマは常備してるくらいの重要な雑穀なんですけど、でもそれは実の方なんですね。農家さんはエゴマの葉っぱは捨てちゃってたんです。モッタイナイ!いまうちが買い取りを始めてますけど、スンゴク美味しいんですよ!」
うん、これは実に旨いよ! この後に廻ることになるコラゾンカンパニーのグループ各店でも食べることが出来るようになっている。
キムチグラタン。ラザニアのようにキムチが折り重なってソースとチーズでじゅくじゅくと泡立つ熱さ。ウマし。バゲット載せていただきます。
いや、なかなかの満足度ですよ。お洒落だし、料理も美味しい。ジンロを呑みつつ小粋な韓国家庭料理が楽しめる。昼は白龍、夜はCUCCAという感じか!
さて コラゾンカンパニーの夜はここからが始まりなのであった。
(続く)
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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