2010年2月17日 from 出張
「石川僚選手の自給率は64%」
のCMでちょっと知名度が上がった(笑)、国産自給率を向上していこうという推進運動「フードアクションニッポン」(FANと略)の話は以前にしたと思う。
その中で、自給率向上に資する食品やビジネス、研究などを表彰する事業をやろうということで、フードアクションニッポンアワードというのをやることになった。審査員には東京農大の小泉教授や田崎真也さんといったそうそうたる顔ぶれが集まり、個人的にもこれは頑張らないとな、というイベントだった。
選考はものすごい労力を費やして行われた。応募総数なんと1200件! 当初、集まりが悪くて「全部で200件程度で終わっちゃうかも」という不安の声が出ていたほどなのだけど、応募期間の最終日にドドドドッと寄せられた。
A3の用紙数枚×1200件。ファイルにとじられたものが事務所に送られてきたが、段ボール2箱分あってびっくりした。
「これ、全部みるのかよぉ、、、」
ええ、見ましたよ。出張先に向かう新幹線の中で、でっかくて分厚いファイルをひろげて、、、
同じく審査員を務められた消費科学連合会会長の大木美智子さんが、
「私は消費者だから、こういうものがあるとすぐハカリで重さを量るの(笑) そしたら、、、この資料30kgもあったのよ!」
体重計で測られたそうだが、本当に膨大な資料である。その中から各審査員がピックアップしたものを、事務局のほうで記載内容に偽りがないかどうか、聞き取りなどを行いチェック。
そして迎えた最終審議は、なんと6時間に及ぶものだった。電通の立派な高層階の会議室で、「いやーなんかVIP気分」と愉しんでいられた頃はよかった。議論百出し、紛糾し、6時間である。終了後の各審査員はみな放心状態。
個人的に印象に残っているのは、田崎真也さんはやっぱりきちんとした人だな、ということ。ソムリエ協会で様々なコンテストに審査の側で参加している経験もあり、論理が一貫しておられた。
とまあそんな膨大な労力を重ねて、先日15日に発表会が開催されたわけである。
控え室での審査員の顔合わせ。なんといってもこのアワードに関わることによって得られた一番の収穫は、小泉武男先生とお会いできたことだ(笑)
先生の大ファンとしては本当に至福のひととき。
あと、同じく審査員を務めた雑穀の普及活動をしていらっしゃる王理恵さんも、実にチャーミングな人だと思った。ものすごくクレバーで、コミュニケーション力の高い方だった。
さて表彰式は一般の前ではなくプレスと受賞者、関係者のみで行われる。品川の会場では事務局スタッフ総動員で大イベントの準備が進んでいた。
授賞式後に交流会が開催されるホールには、入賞者のパネルが並ぶ。ちなみにフードアクションニッポンアワードの賞は、「プロダクト部門」「企業部門」「コミュニケーション部門」「研究開発部門」という4つの部門にわかている。それぞれの部門の入賞と最優秀賞があり、そして部門間を超えた大賞というものがあるという位置づけだ。また最終的に、農林水産大臣が選ぶ賞というものも加えられた。
それぞれ入賞者には内定の通知が行っているが、この段階では最優秀層がどこかなどは明かされていない状態だ。
ホワイエには表彰後の交流会のため、各受賞者がその活動をパネル展示している最中だった。受賞の決まっている面々には、僕がこれまで出会ってきた人たちも多い。しばしの交歓を愉しんだ。
石川県の金沢で、なんと100町歩もの大規模で小麦と大豆を作る井村辰二郎さん。しかも、有機JASを正面から取得されているものがほとんど。有機系の宅配ネットワークなどで有機麦茶などを見かけたら、それは結構な確率で井村さんが造ったものだ。また、小麦をパンや麺にする、大豆を豆腐や味噌・醤油にするということは当たり前、日本酒、米粉パンなどさまざまな加工食品を作り出している。それも有機JAS対応品が多い。とにかく桁違いだ。北海道なら居そうだけれども、これを金沢でやっているのがスゴイ。ちなみに今、僕の家でメインの醤油になっているのは井村さんの「金沢大地」ブランドの醤油だ。
「大地を守る会」のO女史は、友達というかなんというか、、、ずいぶん長い付き合いだ。ここのところ、会長である藤田和芳さんがメディアに出ているので、大地を識っている人は多いだろう。この国の有機農産物ネットワークは、大地を守る会が始めたと言っても過言ではない。受賞は当然だ。
そして大地とある意味では共闘してきたといってもよい存在「らでぃっしゅぼーや」も受賞者。そうした専門流通業者だけではなく、生協の業界ではPALシステムと生活クラブ生協が名を連ねた。
「おっ 久しぶり!」
と声をかけてくれたのはこの方!
山形は庄内で郷土素材を中心に提供するイタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」の奥田シェフだ。この人は文化面での活躍が大きかったわけだ。地方レストランのブームはこの人がつくったようなものだもんなぁ。
恵泉女学院大学の皆様。知ってますか?この大学のキャンパスには、教育機関では全国で唯一、有機JASの認証を受けた圃場が存在するのだ!
眼鏡をかけていらっしゃるの澤登先生。実は僕が有機JASのオーガニック検査員協会で研修を受けた時の会場が恵泉であった。その認定圃場で検査の実習を行ったのだけど、大学のキャンパス内で有機JASを取得しているなんてスゴイ!と恐れ入ったものだ。当然、この女子達が農作業をし、各種の記録を取り、そして野菜を販売する時には有機JASマークを貼って(「格付けをする」という)いる。ほんと、素晴らしい学校だと思う。
ご参考:
http://www.keisen.ac.jp/institution/farmgarden/farm/
「おおおっやまけんさん!」と声をかけてくださったのが、茨城にて梅山豚を生産する「塚原牧場」さん。
相変わらず塚原社長、俳優みたいだぜ。おとなりは塚原さんの右腕的存在の鈴木さん。ドレスアップしたところを初めてみましたワイ。お美しい、、、
梅山豚は、エコフィードと呼ばれる、食物残渣や未利用資源で素晴らしい飼料を設計し、高品質な豚を生産してきたということが評価された。飼料穀物が高騰してから一気にエコフィードに傾倒した経営体が多かったが、麦茶滓の利用などについては塚原牧場が先鞭をつけたのである。
そして、岩手県からはプレミアム短角牛生産者集団が!
普通の育て方短角ではなく、農家自身がつくったデントコーンを7割以上食べさせたプレミアムの方だ。これはもう文句なしなのである。
そして、都内にかなりの店舗数を展開しているおむすびチェーン「おむすび権兵衛」。
グレーのスーツを着ているのが岩井社長だ。 この権兵衛、素晴らしい理念を持って、見事な事業展開をしているチェーンなのだ。その辺にある新興おにぎりチェーンとはわけが違うのである。後日、改めてここについては書きたい。
さて、いよいよ授賞式。各委員が部門賞の表彰者になるのだけど、僕はこの後に講演をすることになっていたので、この時点では高みの見物だ(受賞結果も知ってるしね)。
で、フードアクションニッポンアワード、今年度はどこが大賞を受賞したかというと、、、
飼料米を6割以上食べさせた「こめたま」「玄米卵」のトキワ養鶏である!
これはもう文句ないでしょう。卵の黄身の色は餌で決まるわけだけど、飼料米を与えることで君の色は標準より10段階くらい淡く白っぽい色になる。そして黄身に含まれる脂肪酸組成のうち、オレイン酸・リノレン酸の含量が高くなる。ちなみに通常の輸入コーンを中心とした餌を食べさせるとリノール酸中心になる。健康への影響として、オレイン酸を採った方がいいということはあるが、それより何より味が変わる! こめたまを食べたことがある人ならそれは十分に承知していることだろう。
プレゼンターを務めた赤松農水大臣から呼び上げられる際、うつむき加減に待っていた、トキワ養鶏の石澤専務。
堂々の大賞受賞である!
「青森県の減反面積である20000ヘクタールで、1ヘクタール当たり1トンの飼料米を収穫できれば、青森県民が年間に必要とする卵を生産が出来る。それによって、日本全体の食糧自給率は約1パーセント向上する」
と明確に飼料米の貢献度合いを定義したところにこの人の真骨頂がある。選考会議でもほぼ満場一致での選出となった。
その他の各部門の受賞者については下記をぜひご覧いただきたいと思う。
さてそれでは本日のワークに行って参ります。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
本サイトの著作権はやまけんが保持します。出版物・放送等に掲載される場合はご連絡を下さい。トラックバックはご自由に。