さる1月18日、赤坂のタキトークッキングスタジオにて、土佐あかうしを食べる会を開催した。これは一般公募のものではなくて、料理人と料理メディアのみの、クローズドな会として開催したのだが、実にものすごい顔ぶれが集まった。イタリアン、フレンチ、日本料理の分野で、名店と呼ばれる店、新進気鋭の店、さまざまなシェフが集まってくれた。短角の時もそうだったが、牛肉というメインになりうる素材への関心を観た思いだ。
主催となる高知県側のスタッフもなんと12人が駆けつける。都内のクッキングスタジオにて、事前準備。ちなみに肉の試食会をすると、どうしても口を洗いたくなる。営業前のシェフもいるので、ワインというわけにもいかない。そこで、高知の乳業メーカーでありこのブログには何回も登場している、吉澤文治郎さん率いるひまわり乳業さんから、海洋深層水を提供していただいた。ありがとうございました!
腕をふるうのは横浜・馬車道のヴィノテカ・サクラのシェフ、榎本隆二シェフだ。イタリアンの文脈で肉料理はお手の物。これまでも試食会をきちんとしてくれたり、実に意欲的に取り組んでくれた。
今回使う土佐あかうしの肉は、なんと貴重なメス!4ヶ月に一頭出るかでないか、という感じのはずだが、よくぞ確保してくれた、、、肉の業者さんは高知で土佐あかうしの普及に尽力する三谷ミートさんだ。
実は先日、三谷さんが面白いことを言っていたのだ。
「あのね、土佐あかうしはと畜後の解体の時点と、熟成してからとでは、サシの出方が変わるんだ。実はと畜解体して、格付をするときには「うん、A2だな」と思っていたのが、しばらく熟成しておくとサシが出てきて「あれ、A3レベルだ」ってなるんだよ。もちろん全部の個体がそうじゃないけど、そういうことがままある。今回のも、最初はこんなにサシがビッシリ入っていなかったよ!
えええええええええええええええええええ
それホント?
土佐あかうしは、現状の格付下ではA2がメインで、ぽつぽつA3が出るくらいだ。しかし、僕が目にする土佐あかうしの肉は「これ、結構はいってるじゃん」と言うのが多かった。だから不審に思ってはいたのだ。格付後にサシが増えることがある肉、土佐あかうし。また一つ伝説ネタが増えた。
ところで今回は、料理の付け合わせや薬味などに使う野菜を全て高知県産にした。高知県はちょうど今頃の野菜産地としては国内随一といっていい。
あらかじめ仕込んで置いたもの以外の刻みが急ピッチで進む。ちなみにアシスタントスタッフの要は、山之内千夏さん(左から二人目)。神奈川県藤沢市で料理教室を展開している。この人もイタリア北部で修行した凄腕なの だ。
今回も様々なお客さんが来てくれた。その中でも、一番遠くから来てくれた、とっても嬉しい出会いがこの方。
なんと京都から「瓢亭」の高橋義弘さんが駆けつけてくださったのだ!僕が連載を書いている「専門料理」を読んで、編集者経由で「ああいう会、すごく興味あるんですよ」と仰っていたということが耳に入ったので、お声がけしたのだ。まさか本当に来てくれるとはなぁ、、、
日本料理の世界では、現状では牛肉はメインストリームの食材ではない。仲のいい日本料理人さんも「ごくたまーに、出入りのある業者さんに持ってきてもらうだけ。僕らにはメキキができんから、「ええの持ってきて」って頼むけどね」ということだった。
でも、日本にこれだけ畜肉を食べる文化が根付いてきて、日本料理でもこれまで通りと言うことはないだろう。高橋さんのご参加はその思いを強くした。
さて、開会。僕のご挨拶後、まずは高知県の畜産野郎である公文さんから、土佐あかうしとは何かという話。
公文さん、口がはえぇ~!30分に90分くらいの内容を詰め込んでる!ギャグを織り込んでるんだけど、あまりに口調が早いのでこちらが反応する余裕がないままに進む(笑)
そしていよいよ試食の開始である。
■黒毛和牛との食べ比べ: うちもも カルパッチョ 葉ニンニク添え
観ておわかりだろうが、手前が土佐あかうし。上が鹿児島で生まれ、高知で肥育された土佐の黒毛和牛。色味は黒毛のほうが深いのだけれども、食べてみれば一発で違いがわかる。今回、土佐あかうしのメス肉を1ヶ月程度熟成させたものを持ってきているので、きめが細かく複雑な味。「心地よい酸味」と参加者が書いてくれたような深い酸味を有していた。黒毛のほうは、思った通り、食後におもーく感じる脂。
ちなみにネギのような軸があるが、これは塩ゆでした葉ニンニクである。
•バラ肉 グリル ユズ風味のグレモラータかけ
今回使ったバラ肉はかなり脂肪層にボリュームがあった。
黒毛和牛なら、グリルで脂を落としたとしても相当にくどいはずだ。しかし、そうならないのが土佐あかうしのいいところ。土佐あかうしは、脂に不飽和脂肪酸が多量に含まれ、スッと溶けて、口から消えていく遺伝因子が多いことが科学的に判明しているのだ。
筋切りもしていないのでギュッギュッと噛みしめるような繊維感を感じながら、脂がシュッシュッとにじみ出てくる。その脂はキレが異様によく、すっと消えていく。食べてももたれることが全くない肉なのだ。
ちなみに上にかかっているのは、葉ニンニクと柚子の皮を細かく刻んだグレモラータ。これがパンチと清涼感を与えてくれた。
■土佐文旦のサラダ
まだハウスものだけど、ゴージャスな香りのする土佐文旦とフルーツトマトのサラダ。
■ サーロインのタリアータ 花ニラ・文旦のマルメラータ添え
サーロインは牛肉の華といえる部位だ。だからレストランからの注文が集中する。けど、土佐の年間と畜数は1000頭以下。どうしても足りない。だから、他の部位とのセット買いをしていただければと思う。
実は今回、品数が多くて進行が押していたこともあり、シェフを少しせかすことになってしまったようだ。若干、焼きが甘い。もう少し火を入れて、余熱で中心部がしっとりいけばよかったのだが、申し訳ないことをした。でも、勿論サーロの旨さは十二分に出ていた。
■すね肉のボリート フルーツトマトとハスイモ、四万十川産青のりのバニェットソース添え
ボリートは以前、短角牛を堀江純一郎シェフに料理してもらったときも出てきた、イタリア風おでんといえる煮込み料理だ。今回のポイントはなんといっても付け合わせのバニェットソース。四万十川の青のりをふんだんに使っている。海藻を好まない国民性だと受け入れられないだろうが、日本人には堪らない、清流の海苔の香りと酸味が一体化した、美味しいソースなのだ。
ゼラチン質たっぷりのすね肉、煮込むとホロホロと崩れる。来場したシェフから「煮込みに使いたい」という声が上がっていた!
■外もも 米ナスとトマト煮 ショートパスタ和えグラタン仕立て
これはもう、観ればわかりますな。コッテリしたラグーを吸ったフジッリ、むっちゃ旨かったです!
と、こんな感じでフルフル5時まで買いは続きました。ご参加いただいたシェフやメディアの皆さま、本当にありがとうございました!
いよいよ来年は、南国土佐へ産地ツアーを敢行する予定です。これはおそらく一般の方も、、、お楽しみに!
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