2009年11月12日 from 出張
食用ホオズキサミットの現地視察の後は、岩泉町の地場商品の開発・販売をおこなっている岩泉産業開発の三上さん・塚原ちゃんに、岩泉の生産者を巡る旅に連れていってもらった。
塚原ちゃんというのは、このエントリで紹介したアイドルである(笑)
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2009/02/post_1277.html
福島出身の彼女が、岩泉の自然と人に触れあううちに大好きになり、ここに移住してしまったというのが素晴らしい。けど、一日この地を巡って、そんな彼女の気持ちがわかるような気がした。とにかくまず、町中の時点ですでに自然が美しい!
「まず最初は、ヤマケンさんが大好きな安家地大根を重点的にみていきましょうね。」
安家地大根とは、この岩泉町が日本全国に誇る在来大根である。その特徴はみていただければすぐわかる。
ご覧の通りの鮮烈に赤い色。葉も赤いところに注目。この断面が実に美しいのだ。
表面から形成層輪の部分までが綺麗に帯状に紅に染まっている。そして中心から放射状にポツポツと赤さが差している。赤色大根や紫色大根はだいたいこういうパターンの色彩になるけど、安家地大根はこの模様がかなりはっきりしている。
岩泉町の安家地区では、生食はもちろんだけど、だいたいこれを酢漬けにするか、凍み大根にするのが普通だという。車中で話をしていて面白かったのが、
「この辺ではたくわん漬けはほとんどみられない」
ということだ。
え?通常、この日本で大根のスタンダードな食べ方はたくわん漬けだと思っていたのに、、、
「それがですねぇ、たくわんに必要な米ぬかが、昔はこの辺じゃ手に入らなかったんですよ!!」
あ!そうかぁ、、、 岩手県北部では季節風ヤマセの影響などで、米が獲れにくい土地がある。この安家もそうであったか!そうなると、米ぬかが獲れないから、米ぬかに漬けるたくわんは普及しない! そんなこと、あるんだなぁ、、、と感心してしまった。
そういえば、愛媛県大洲市では、漬物といえば奈良漬けが普通だ。これもまたきっと意味があるんだろう。
さてそんな安家地大根は、葉っぱも重要な食べ物になる。「ほすっぱ」とか「ほすな」と呼ばれるのが、「干した葉」である。
「ほすっぱを橋の下で干しているのを観に行きましょう!」
おお、本当に橋の下に、大根葉が干されている!
こうして冷暗所で干され脱水したものが、冬の間の大事なビタミン源になる。通常、日本のスーパー店頭では葉のついた大根は販売されない。葉がついていると、根部の水分を葉が消費してしまい、すぐにしなしなになっちゃうからだ。けど、本当は大根の場合、葉の方が栄養価が高い。だからこうして葉を使うのは理にかなっている。
橋の近くで白菜を拡げ、漬物の準備をするおばあちゃん。この辺ではやはりまだ冬の保存食を作るというのが日常的行為なのだ。
「やっぱり、雪に閉ざされて数日過ごさないといけないって頃がありますからね。以前、停電が起こったときに、心配になっておばあちゃんに電話したら、『ぜんぜん問題ないよ』とケロッとしてました。雪国ではみな独立しているんですよ」
というのが面白い。
さていよいよ安家地大根の畑へ。すでにおうちから味がある。
挨拶をして作業場に入ると、以前はべこ(短角牛)の餌を煮たりしていたであろう大きな釜がある。そして立派な安家地大根が 無造作に置かれているのであった。うーん もうこれだけで相当に佳い感じ。
しかし、、、
生産者のお父ちゃんお母ちゃんの顔がまた、最高なのであった!
この時、ちょうどヒエを刈り取っていたところ。
穂軸だけを刈って干すようだ。そして穂軸はハウス内で乾燥。
さあそしていよいよ安家地大根!
畑ではすでにもう全部抜いて、保存用と出荷用、そして種採り用に仕分けをしているところだった。
「貯蔵してるのもみせてやるよ」
と、せっかく土室に埋めたのを掘り出してくださった。
大根やにんじんなどの根菜は、こうやって土室をつくって保存することができる。
杉の葉っぱに包まれているのが大根だ。杉の葉で包むと、ネズミなどにかじられないとかそういうのがあるのだろうか。
出た!これはちなみに、種を採るようの大根。雪が溶けてから植え直して、花を咲かせて種を採るのだ。自分ごのみの形のものの種を採っていくので、こういうスラッとした形がお好きなんだろう。
もう見た目も内実も最高なお二人! 「茶飲んでって!と強く引き留められるも、時間の都合で次へと急ぐ。うーん ここはまたゆっくりよらせていただきたい場所だ!
綺麗な流れのある場所でちょっとブレイク。
岩泉のアイドル、塚原ちゃんの激写である。
ちなみに言っておくと独身である。 岩泉に一緒に骨を埋めてくれる男性募集中とのこと。世の中の男はなんでこんな人をほっておくのか。我こそはと思わん男はぜひ岩泉へ征け!
干し柿作りをしておられるおじさん。
川から取水した水は、流しっぱなしにしないといけない。盛岡の町から孫が来て「おじいちゃん、水は使わないときはとめないと怒られるんだよ!」と注意されるらしい。
さて、お次は安家地大根をめぐる元気なお母ちゃん、嘉村さん。
彼女の畑の安家地大根は、遺伝子がけっこうばらけているようで、同じ安家地大根の種なのに、形質や色がかなり暴れたモノが獲れている。
一番右側にあるのは紫色が濃くて直根が長い。けど、これも安家地大根の種からできたそうである。受け取るほうは混乱するかも知れないが、純系ばかりで育種していくといずれ種の強さがなくなるようだから、これはこれでいいのだろう。
とちの樹の蜂蜜をいただく。ありがとうございました!
「じゃあ、安家地大根に別れを告げて、短角牛をみにいきましょう!明日には山からおろしてしまうそうなので、、、」
と、かなりの時間をかけて向かった山中に、素晴らしき放牧風景が拡がっていた!
川を渡らないと放牧地に入れないようになっている。塚原ちゃん、ジャンプして石を踏みきれず、片足を水没。
6産以上はしていそうな年輪の入ったベテラン母牛。
帰り道、お約束のように僕が片足を水没(笑)やられた、、、
ここから1時間半程度、盛岡市の中心部から10分程度のところで、地域の農家を廻って集荷したいいものを販売している、「八百よろず屋 野菜畑」を訪問。
この店は第三セクターが運営したりしているものではなく、この小島(おじま)さんが自分で建てて運営している。
「産直じゃなくて、僕が農家を廻って出荷してもらってます。また、調味料とか洗剤とかも、無理して地元産を使うのではなくて、佳いものを作っているところから仕入れています。」
とおっしゃるとおり、飯尾醸造のお酢があったり、諸井醸造所のしょっつるを使ったおむすびなどが置いてある。かなりレベルの高い、食のセレクトショップだ。
持っておられるのは、コシヒカリの親でもある米、陸羽132号で醸した日本酒。彼がこの幻の米の生産を後押しして、地元の酒蔵に仕込んでもらっているそうだ。
店内には、こびる食堂という小さな食堂が併設。これがまた最高な感じなのだ!
すげー 安くない?
調子に乗ってたくさん頼んでしまった。
本日のスペシャル、野菜かきあげ天そば。
蕎麦は有名な葛巻地区の、豆腐と玉子をつなぎにしたものだ。
そして短角牛丼!
すみません 僕、白滝たべられないので除去しました、、、
山形で人気の大豆「秘伝豆」の納豆。実は秘伝が生まれたのは岩手の試験場らという。そこで、小島さんが地元の納豆メーカーに頼んでPB商品化。これが実にすばらしい納豆なのだ! ファンも大勢いて、段ボールで取り寄せて、冷凍して小出しにして食べている人もいるそうだ。
豆のズシッとした風味が実に骨太で佳い。発酵状態も良いです。
カレーライスがまたイケル。
既製品は一切使わない。ネパリバザールのフェアトレードスパイスを使った本格派である。こういうところで食うカレーとしてはまったく想定できないほどに旨い!
このこびる食堂のメインシェフは松木戸さん。岩手県の職員だったのが、辞めてこの道へ。
なんと、話を聴いていると、横浜で短角牛を一頭丸買いしている麺房亭の黒塚さんのところで働いておられたというではないか!ひえー先日の岩手ツアーに来てくれた黒塚さんだよ、、、人の縁というのは、、、
お料理、すべて美味しゅうございました!
さて、行程の最後はもちろん福田パンです。
識らないうちに新メニュー「キーマカレー」が登場していた。
この時買ったのは「ナポリタン+チキンミート+野菜」と「トンカツ+ごぼうサラダ+野菜」そして「キーマカレー・ポテト+野菜」である。最初の二つは新幹線のなかでいただきました、、、
こうして二戸~久慈市山形村~岩泉~盛岡を結ぶ岩手の旅を楽しんだのでございました。いやー 実際はあっという間だけど、ブログに書くと長かった!
ご関係各位、本当にありがとうございました!
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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