で、高知市内にて畜産関係者さんへ講演。終了後、土佐あか牛を使ってくれているという焼肉店「牛王」へ。
この牛王では、メニューにちゃんと「土佐あかうし」と書いて肉を出している。実はそう言う店、高知でも少ない。生産量が圧倒的に少ないからということもあるけど、ちゃんと表示して売る店がないというのは悲しい。この辺は岩手の短角牛も同じなんだけどね。
この日用意してくれた土佐あか牛の肉。生のままでそのまま食べる。サシがビシッと入っているからべっとりするかと思いきや、そんなことはなくサラリと脂が溶けていく。
土佐あか牛の特徴は、脂肪融点が低いため、脂がスッと溶けて口に残らないことなのだ。だから黒毛のサシでたまに出会うくどいやつのように、一枚か二枚でもういらない、という感じではない。この日も肉が足らず、ズンズンとお変わりし続けてしまったのである。
若き店長(真ん中)、頑張ってください!
さて 仕事も溜まっているし、一次会で失礼いたします、、、としようと思ったのだが!
ひまわり乳業の文さんが「まあ、やまけんが来ちょるのに、一次会で終了はいかん」と、ホテルとは逆の方へ!でも文さんには文句なしでおつきあいしないとな、と歩いていく。文さんと会った懐かしい「バリムーン」があった55番街を横にみつつ、大通りに面したところの奥まった1階に、目指す店があった。
「旬菜と肴 なとな」
高知市追手筋1丁目9-30
088-823-7887
いやもうね、これぞ高知の「はちきん女性」という小股の切れ上がったいい女将が、美味しい料理をふるまってくれるのですよ。
もう腹一杯食べていたのだけども、大皿に盛られたイタドリの煮物をみて食べたくなる。
シャクシャクした食感が楽しい。
「ダイコンっ葉を漬物にしたのとお浸しにしたの、両方食べてみる?」
うん、うん、食べます。
シラスの塩加減で食べさせる大根葉。そしてお浸しには小さな根も。
司牡丹の純米酒の燗をいただきながら、文さんと僕とで、焼肉屋の後にフルコース開始である。
「清水のサバの活きのいいやつあるよ!葱とミョウガと絡めてたべてみる?」
はい、食べたい!
本当に激烈に鮮度がいい! 東京じゃあサバは締めないとくえないからなぁ、、、こちらの海が羨ましい。
「今のサバを炙って塩たたきにしたの食べたい?」
うん、食べたいです。
炙って軽く火が入ったサバがまた実にクセが無く美味しい。塩ももちろん高知で製塩している海塩だ。最近では高知でもみんなたたきは塩味がトレンドらしい。
「じゃあ次は鰹。戻りガツオがまだ脂がのってないから、タタキじゃなくて、ゴマとかミョウガとかと揉んだやつ!」
はい、いただきます。
うーん
うめぇ、、、 この女将、実に試合巧者である。
実はひっきりなしに小鳥のさえずりのようにおしゃべりをしながら勧めてくれる料理の形容が、絶対に断れないような旨そうなものばかりなのである。
そして実際に、美味しい。調味料はギリギリまで控えめの塩梅。子供の頃に「こうして欲しかった」というような素材の組み合わせ。
「さっきの大根菜の塩漬けといっしょに握ったおにぎり食べる?」
はいたべます。
お吸い物には、なんていったか忘れたが(たしかニロギ?)、小さな魚が丸一匹入っている。
他の料理は基本的にはイリコ出汁だが、お吸い物は一番だしを引くという。これがきっちり料理屋さんのお味。
大きなタッパーにナスの煮たのを発見。ナス好きとしては喰わねば!
炒めた後に煮含めたのか、照りてりとしていて、味もしっかりしみて美味しゅうございます。これはイリコ出汁での煮浸し。
「おいっしい有精卵の卵焼き、食べたい?」
食べたい食べたい!
「カパッと3つ玉子をあけて、青ネギぱらぱら、醤油と○○○(→忘れた)、あまり混ぜちゃダメ。黄身と白身がそれぞれ別の味になるから、それを味わうのがあたしの卵焼き。」
これがまた言葉も出ないほど絶品な出来だった。
文さんとしばし「うーむ、、、」と唸ってしまった。この店、佳い。
〆はこの卵焼きの玉子をつかった玉子ご飯。
最初は玉子だけで、醤油はほんの3滴くらいにしてね!どばってかける人は好かん、、、と言われたので、嫌われたくないのできっちり3滴くらいに収める(笑)
玉子の風味をきっちり味わったら、鰹節とシラスと青ネギを投入。
いやもう、至福。シラスの塩気が最後の一粒まで米粒をかっこませるのである。
それにしても女将が佳い。女将の名は原愛弓さん。高知の山のてっぺんにある家で育ったそうだ。お祖母ちゃんの家ではあか牛を飼っていたという。
彼女の料理と会話に痺れた客がよなよな通う。そんな店であることがすぐにわかる。
いや、これはまた再訪しないとね。実に美味しゅうございました。
こうして、針で刺したら破裂しそうな腹をかかえてホテルに帰着したのであります。文さん、ご馳走様でした!