2009年8月 3日 from 出張,農家との対話,農村の現実
愛媛県大洲市のJAが、来年4月に大型直売所をオープンする。そこの立ち上げプロジェクトの仕事を今年も請け負うことになり、これから毎月のように愛媛に通うことになる。
全国には2万カ所を超える直売所があるらしい。「らしい」というのは、正式に悉皆調査をしたデータがないため、どれだけ店舗があるのか誰もわからないのだ。中には年間20億円以上販売するようなモンスター直売所もあり、百花繚乱。
直売所のビジネスモデルはなかなか興味深い。直売所の胴元は、だいたい農協か生産者の集団で、場所とレジ打ちなどの店員を確保する。そこへ生産者が直接、自分で袋詰めまでした商品を持ってくる。価格と自分のIDをバーコードシールなどに刻印し、出荷物に貼って棚に陳列するところまで自分で行う。価格は自分で自由につけるのが基本だけど、売れ残った商品は自分で持ち帰らなければならない。だから売れる品目・売れる価格帯をみなが研究する。販売手数料として、売上の7%~10%くらいを直売所に納める。市場流通だと、中間流通に30%、小売に35%ほど持って行かれてしまうけど、直売所だと手数料が安い。従って、農家には手取りが多くなり、消費者は割安に、しかも新鮮な農産物を手に入れられる。これが直売所というビジネスの概略だ。もちろんそんなに単純なものではなくて、いろんな例外があったりするのだけど、おおむねこんな感じ。
ただし、これだけ沢山あると、同一地域内での食い合いにもなっていく。事実、商圏人口に比してあきらかに直売所が多すぎる地域では、期待した売上に到達しないケースも多発している。
だからこれからは、食い合いにならない棲み分けと、その地域ならではのオリジナル商品の開発が欠かせない。
ということで、僕の会社の今回の仕事は、大洲市にできる直売所で販売するオリジナル商品の開発というのが軸なのである。いやー すごい楽しみ。だって大洲周辺には、おもいもよらぬ面白き食文化があるのだもの。
さてこの日も様々な検討をした後、いつも泊まるビジネスホテルオータではなく、隣町である内子町の石畳地区へと向かう。
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既報のとおりだけど、農業者むけの講話をしたときに、石畳の農家民宿のお母さん方が待ちかまえてくれて、「あのね、うちのほうではじゃこの出汁でカレーを作るんですよ。いちど食べにきて!」というのだ。そういう誘いにはとても弱い僕である。
大州・内子を走り回ってきたキャリアのウバガイ部長様も「こっちのほうはようこんのー」と首をかしげながら、どんどんと道を上っていく。かなり高度が上がったなぁ、という地点に、本日の宿泊地「石畳の宿」があった!
この石畳の宿は、この集落に住む農家のお母さんお父さんがたが運営する農家民宿だ。知る人ぞ知る宿で、実はそんなに宣伝する必要もなく、お客さんがどんどん予約を入れてくるところ。それもそのはず、この地域は本当に魅力が一杯なのだ。
「あー 宝泉さん!」
と市役所の河野さんが声を掛ける。この地域で産まれ、そしてこの地域をずっと守り続けている市の職員・宝泉さんである。
日が沈まないうちに、ささっとこの石畳地区を廻らせて貰う。まず連れて行ってくれたのが水車小屋だ。
「いやー 実はこの水車小屋、地域のみんなでこつこつと手作りしたんですよ。」
うええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ?
手作りかよ!?
実は「水車小屋ねぇ、ふうん、、、ま、綺麗だけどね」くらいに思ってみていたのだけれども、手作りだとぉおおおお? それはビックリである!
それだけではない。この辺の景観はすべて石畳に起居するみなさんがこつこつと整備し、綺麗に維持していると言うことなのだ!
大洲周辺によくみられる屋根付き橋ももちろんある。端正な佇まいだ。
この水車小屋周辺からさらに上に登っていくと、天空を望む山上の風景がまたとてもよい!
弓削神社という、池の中にお社があって、そこまで屋根付き橋で渡るという、風情のある神社の佇まいが美しい。
さてと、陽もとっぷり暮れて、メシの時間である。
宿の部屋はまた実に渋い。もちろん古民家を移築して建てたものだ。
さてここの食事は、地元のお母さんたちが毎日、交代しながらつくってくれるものだ。
定番のお煮しめ
そして愛媛ならではの、具材たっぷりのちらし寿司。
ううむこの具材細やかな刻み加減にまぶし加減が素晴らしい。味も甘すぎず美味しい(愛媛の味付けは全体的に甘いのだ)。
そして圧巻だったのが、山野草の天麩羅!
「えっ そんなものまで?」とビックリするようなものが天麩羅に揚げられる。ドクダミの葉やカラスエンドウの葉から始まり、ツツジの花とか、、、これがまたどれもちゃんと特有の香りがあり、美味しく食べられる!
そして、美味しいおうどん。
東日本や日本海側では、山あいの町では蕎麦で〆ることが多いけど、四国ではうどんが普通だ。美味しかった、、、
あれ?しかしカレーが出てこないぞ!? 俺、じゃこで出汁をとったカレーを食べにきたんじゃなかったっけ?
「あらあらあらあら、そうだったっけねぇ、、、 センセ、明日の朝ご飯でもいいかしら?よければウチで造って持ってくるわ!」
とリーダー格のお母さんがニコニコというものだから、そりゃもう是非お願いしますということに。本日はここのスタンダードコースである。
「じゃ、のみますか」と宝泉さん、にごり酒を出してくる。
いきなりぞろぞろとここの集落の人達が集まりだして、寄り合いである。そう、大洲市の直売所では、この石畳の方からもいろいろと出荷していただきたいなぁ、というオルグ活動をしにきたというのも今日のミッションなのである。
話が弾む中で非常に驚いたことがある。僕のブログの過去ログによく登場する、山形県の職員にして地域興しの達人である高橋ノブさん。この方がこの石畳によぉーーく出没しておられるのである!
「えっ ノブさんのこと知ってるの?いやぁ、彼のおかげでワシらは手打ち蕎麦屋を始めたんでねぇ、、、」
そう、この日は営業していなかったが、休日などは一日に100食を超えることもあるという人気のそば屋が、地区内で営業されているのだ。蕎麦も自前で生産しているという猛者が、この地域にはいる。
仕事を終えたお母さん方も集まり、ああだこうだとお話し。その中で、石畳らしい美味しさの話になった時、ちょうど素晴らしい甘味が出されたのである!
和栗の渋皮煮。もちろんこの石畳で獲れた栗をつかったものだ。なんとこれは宝泉さんのお母様が造るもので、この地区でも名人なのだそうだ。
この渋皮煮が、もうドえらく旨いのである!
ええいもう一段寄るぞ!
あまりに滑らかな栗!ネットリと風味の深い栗の実が舌に絡みついてくる。甘いが、くどい甘さじゃない。んー 至福のご馳走。
「これ、すげーーーーー旨いじゃないですか!」
「あら、そう?」
と宝泉ママはニコニコ。
ここでぴーんとひらめいた。この栗の渋皮煮をつかって、誰もが食べたくなるようなある商品、つくれるじゃーん、、、その話題で30分くらい盛り上がる。うーむ面白かった!
来年4月までの間に、商品開発がうまくいったらここで公開したい。もうね、すげープレシャスなものができるはずですよ。
もう腹もパンパンだけど、餅。
さらに、餅(笑)
揚げた餅を、濃いめのうどんだしでいただくのが実に美味い。
こうして世は更けていったのである。そして朝!
夢に見た、じゃこで出汁をとった、ちくわが具材のカレーをいただいたのである。それも二杯、、、
何も言うことはない。旨いですよ。愛媛には松山だけじゃなく、ものすごく宝のような地域がある。ゆったり癒しの空間を味わいたければ、大洲と内子、そして石畳へどーぞ。後悔しないと思いますよ。ただし、うまいもんの事前勉強は忘れぬよう。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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