2009年7月16日 from 出張
某案件で大阪は泉州へ。泉州といえば水ナスであり。ズイキの産地である。産地のJAさんの先導でこの二品目を美味しく食べられるという地元の名店へと誘っていただく。
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■佳羅守 すし半
大阪府泉佐野市日根野
072-468-1020
うーん 読み方がよくわからんが、「からもり」と読むんだろうか。
農協の担当者の川岸さんによれば「身内で呑むなら向いの居酒屋で、お客さんはこっちに」というお話し。すみませんねぇ、、、
すし半という名前だけあって寿司屋の呈なんだが、実はこの店ですしだけ食べるのは本当にもったいないことらしい。
「料理がね、いいんですわ」
ということで席に着くと、まずはJAおおさか泉州の管内の名品である水ナスとズイキ料理のオンパレードである!
ズイキのゴマ和え。ズイキとは何か識ってますか?サトイモの茎の部分です。そこを食用にしたときに美味しい品種を植えて、子芋が付く前に茎の部分をざっくり切って出荷するわけだ。夏の風物詩だけど、僕もあまりこの品目については知識がなかったので、勉強になった。
ズイキ自身には味はないので、あえ衣の味でシャクシャクとした食感を楽しむこととなる。ネットリとあたったゴマのクリームがまろやかで美味しい。
お次は水ナスをなんとそうめん仕立てに。
農協のお二方も「これは食べたこと無いわー」といいながら啜りこむ。清涼感ある一品。ただし水ナスの水ナスたるゆえんは消えちゃうけどね。
ズイキと太刀魚、ぶどうの酢の物。ぶどうの香りが酢酸を吸わせたズイキにからんでなんとも不思議。
夏の定番、ハモの湯引きとズイキの梅肉和え。
うすく出汁をふくませたズイキに梅肉の酸が合って美味しい。
お次はまたもや水ナスの田楽仕立て、ゴマ味噌のせだ。
いや、もうこんなのがまずいわけがありませんわ。エビと揚げナスの相性がまた最高。東京では、水ナスはそのまま切って刺身にするか漬物しかみたことがないとおもうが、本場泉州ではこのようにいろんな料理法で楽しむらしい。もちろん主力は漬物だそうだが。
びっくりしたのが、水ナスの揚げ浸しにイチジクを添えたもの。
いやー イチジクかよ!しかもよく見ると、イチジクは衣をまとわせて天麩羅にあげたものを輪切りにしてのせている。内部の味と香りがきちんと立つように火を入れてあるのだ。
「こんなすごいもんばかりこの辺じゃ食べてるんですか!?」
と農協の方にきくと、ぶんぶんぶんと首を横に振り、
「いやいやいや 今日は水ナスとズイキをいろいろ食わせてくれや、漬物以外で、っていったから大将が気張ってこんなんつくったんやと思いますわ。いつもは漬物しかようしませんわ。」
というのでずっこけててしまった。イチジクとの相性はまあ正直言ってちょっと疑問に残る部分もあったが、首尾一貫して水ナスのイメージを壊してくれたので、非常に楽しかった!
さて、この店の本領はここから発揮されたのである。
「でね、今日は泉州のもう一つの名物であるタマネギを美味しく食べて貰おうと思ってましてねー」
あっ そうだった! 泉州といえばタマネギ。「貝塚早生」という昔ながらの品種が超・有名で、有名なブランド産地である淡路島よりも昔からタマネギに取り組んできていた由緒正しい産地なのである。ただし貝塚早生の次期はもう終わってしまったと言うことで、おそらく「七宝」などのよくある品種になってしまっているとのこと。
「でね、タマネギとハモの鍋を食べて貰いますわ」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ
タマネギとハモ!
これ、識らない人は「なんじゃその組み合わせは」というだろうが、関西のタマネギ産地ではかなり食べられているメニューなのである。数年前の冬に淡路島に行った際も、「惜しいなぁ、食わせたいなぁ、けど、ハモもタマネギももう季節じゃないねん」と言われてしまった。ここで食えるとは!
しかもハモといえば関西。「どうぞー」と運ばれた大鉢の中に、ぎっしりぎっしりとハモの実が盛り込まれている!
この皿盛りの中央右部をみると、肝らしきものも乗っている!ひゃぁあああああ 久しぶりに総毛立つような期待にうちふるえる!
ハモの実の下にはタマネギがぎっしり。
それだけじゃなく、なぜかじゃがいももぎっしり。じゃがいもも?
「はい、この辺じゃよく食べますわ」
ふうん、、、鍋にじゃがいもねぇ、、、と、ホクホクしたものがあまり好きじゃない僕としては煮え切らない反応をするが、実は後半、このじゃがいもの旨さに悶絶することになる。
鍋にはあらかじめ調味されたスープが煮え立ち、そこへじゃがいも、タマネギを投入していく。
そしてハモの切り身をここへ投入!
瞬時にハモの実がギュギュッと丸まって、美しい骨切りラインがあわらになる。
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
ひっさしぶりに、超絶にうめぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!
びびりました。
ハモの繊細な身肉に、スープとタマネギの甘さが染みているのだ。単に湯引きしたハモ肉ではなく、たっぷりの旨味と野菜の甘みを含んだこの一品、久々に出会ってしまった強烈なコンビ、まさにIWGPタッグ王者(?)である!
いやもう、僕はひたすらむさぼり続けた。とにかくやたらめったらに旨いのである。しかもタマネギの甘さがどんどん溶け出してくるので、スープの味が変わっていく。飽きることがない! ミツバもいれてリフレッシュ。そして、写真はないけど、じゃがいもがホクッと火が入ったのがまた旨い!なんだよ予想を裏切りまくりだぜ!
「美味しい」「旨い」というフレーズはプロのグルメライターは書いちゃいけないよ、と誰かが言っていたけれども、残念ながらオレはプロのグルメライターじゃなくて農産物流通コンサルタントなのである。だから繰り返し書くけど、
こいつはすんげぇ 旨い!
そうこうしているうちにこの店の社長のご登場。ものすごい存在感の男である。だってほら↓
すごいパワー!
幸堂社長、この道ン十年のベテラン板前にして経営者。魚の食い方には実にうるさい。
「あっ もうそのハモ、火が通りすぎヤワ、それじゃいかんいかん!」
仲居さんにもう一式鍋をもってこさせ、昆布をおとした湯を沸かし始める。
「ちょっとまっててや」
ハモをすっと湯にくぐらせる。
関東人には「ええ?」というほど短い時間でさっと引き上げ、南高梅の梅肉を擂ったものが入った皿へ。
湯気が盛大にあがっているのを、「はよ喰って!」とせかすので急いで口へ。
ホロロロロロロッととろける身肉。そして生臭さとは全くもって無縁な、なんとも綺麗な白身の香りがフワぁっと鼻に抜けていく。ハモって、こういうものだったのね、、、無粋な関東人で申し訳ありませんでした。
〆は、ハモ鍋のスープにそうめん。
「このそうめんは、3年半の熟成もんやで。そうやないとまったく風味がない!」とそうめんの選び方も技アリ。
いやぁ、参りました。
とにかくハモとタマネギ鍋の素晴らしさには、久々にノックダウンされてしまった思いだ。古い読者のかたも、ひさしぶりに「おおおおおおおおおおおおおお」をみたという人も多いだろう。それだけの衝撃をうけてしまった。やっぱり関西を勉強しないとダメだなぁ。
ホテルに帰って原稿書きに戻るも、満腹のため、進まず。そして翌日、炎天下のなか、水ナス畑をつごう二軒まわったのである。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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