この世はものすごい偶然に満ちている。このエコ・ブラックというコーヒー飲料との出会いも不思議なものだった。
ある通販会社といま仕事をしているのだけれども、その商品評価の席で、男性社員の方が「冷たいものでもどうぞ」と出されたのがこのコーヒー飲料だった。普通なら缶コーヒーが出てくるだろうに、紙パックであることにまずは興味を惹かれた。どうやらその紙パックは、間伐材を利用したパルプが相当量使われていて、使えば使うほどに国内材の振興に役立つという趣旨のものらしい。
そして、シール封をとって一口飲んで、その味にハッとした。予想外に美味しいのだ。このブログを前から読んでくださっている読者ならご存じだろうが、僕はコーヒーが大・大・大好きだ。自分でもネルドリップをしていたが、ここ最近は自家焙煎の名店・カフェデザール・ピコで、ほぼ毎日焙煎したて、挽きたて、煎れたてのコーヒーを味わっている。そのせいで、どうにも酸化した豆で出すコーヒーがイヤになってしまった。このコーヒー飲料も正直なところ、あまり期待しないで口にしたのだが、酸化した味ではない、適度な酸味があり、雑味はなくクリアな味と、控えめだが綺麗な香り。素性の佳い豆ではないかな、と思った。
そしてフェアトレード商品であるということ。一言で言えば「買い叩いていない」ということだ。僕の盟友である野崎という人間が教えてくれたことには、
「やまけん、ヨーロッパやアメリカではエシカル・ソーシング(Ethical Sourcing)という考え方があってな。倫理的な調達(仕入)をしないといけないということで、つまり相手企業や国の環境に課題な負荷をかけたり、低賃金に貶めたりしてはいけないという考え方が主流になりつつあるぞ」
という。貿易に限定したフェアトレードの概念のメタレベルの考え方といえるかもしれない。この話は、そのまま日本の話に通じる。いま、日本では大手スーパーや外食産業などが、出入りの業者や生産者から収奪する購買活動をしている。消費者は「モノが安くなった」と喜んでいるけれども、その分、メーカーや第一次産業の生産者はコッテリ絞られている。彼らも家に帰れば消費者だ。つまり、消費者自身が消費者の首を絞めているという循環になっている。
こうしたことを監視するNPOが米国にはあるそうだ。よろしくない活動をしている企業、たとえばウォルマートなどの所行を詳細に調査し、レポーティングしているらしい。それによって企業が行動を改めるというサイクルが確立しているという。そういえばスターバックスが最近、生豆の購買方針を改めるということがあったらしいが、それもこのエシカルソーシング活動の影響ではないかという向きもあるそうだ。
ということで、この商品にかなり興味を持ったのだけど、それ以上の情報もなく帰ったのである。
そして先日、、、
僕の母校である自由の森学園高校の食堂(日本最高の学食である)の泥谷ちよこさんから連絡があったのだ。
「あのね、自由の森の父母で、フェアトレードのコーヒー飲料やってる人がいてね、ちょっと相談に乗ってあげて!」
うーん 忙しいのにめんどうなことを、、、とふと思ってしまったのだけれども、母校の義理である。連絡を取って時間を調整することとした。
そして、静岡県は浜松市にある飲料メーカー・田原飲料の後藤さんから電話が来たのだ。
「実は、フェアトレードの紙パックコーヒー飲料、エコ・ブラックという商品を作っていまして、、、」
ん?
んん??
んんんんんんんん?
それって、、、
「あの、それってもしかして●●●社の通販で売ったりしてませんか?」
「あ! ご担当者さんにいまお願いしているところなんですよ!」
「それ、、、飲んだことあります。そして非常に気に入りました。」
なんということだ! この世は本当に、こんな出会いに満ちている。
後日、会社に足を運んでいただいたのだ。
■田原飲料 フェアトレードショップ サウスウインド
http://www.southwind-tahara.jp/user_data/shop.php
田原飲料さんはメーカーとはいっても、どちらかというと飲料商品の卸業務を主とする会社だ。自社製造の飲料商品は、会長さんご自身が細々と造っている清涼飲料水と、このフェアトレードコーヒーのみ、ということだった。
「うちみたいな小さなメーカーが商品を世に出すためには、とにかく品質がよくなければ何にもなりません。ですから、生豆の品質と焙煎、そして抽出には手を抜いておりません。」
という。
そして後藤さんが鞄からとりだしたのがこのセット。
ええと、まだ読めてないのでよくわからないが、エクアドルとのフェアトレードの中で、エクアドルのキーパーソンが書いたハチドリのマークおよびストーリーがセットになったものだ。これから読みます。スミマセン読んでから書かなくて。
でもね、とにかくこのコーヒーがいいんすよ。ウチの会社はこの夏、本製品を来客用のお茶に使うこと決定。
ちなみに価格だが、ネット上での直販は箱単位となる。一パック195gで150円。それが30本入った箱で、4500円。いいんじゃないですか?アイスコーヒーを出入りの喫茶店に頼んだら、もうちょっと高いでしょう?さっそく二ケース発注したのである。
ちなみに残念ながら首都圏でこの商品を小売りしているところは少ないそうだ。自然食品店の「ぐるっぺ」では売っているらしいが、それ以外には、気軽に立ち寄れる店ではまだ取り扱いがないようだ。
佳いコンセプトなので、ぜひ売れて欲しいと思う。頑張ってください田原飲料さん。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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