大和町の田の草と遊び、そして竹鶴酒造の石川達也杜氏も遊ぶ。そして佳い酒とも出会う!

2009年5月29日 from 日常つれづれ,農家との対話,食材

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今回の仕事では、広島から車で小一時間かかる大和町での、とある商品の製造工程を視察した。それについてはしかるべき時期にどかーんと書くけど、とてもとても佳い食品。やっぱり、生産者の心が入っているものには、感情移入してしまう。

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大和町は稲作地帯だ。他の商品はあまりない。従ってみるべきものは田んぼだけである(笑)

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視察の合間に畦道を歩く。畦に咲く、さもない草花が大好きなのだ。
D700に60mmマクロF2.8をつけて歩く。

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「花マクロ 」という、花をドアップできれいに撮るジャンルがあるが、うまい人は皆、超絶な写真を撮るのであこがれていた。けど、ドアップで撮ると僕の場合だいたい失敗する。修行が足りない!

今回は結構絞り込んでF9くらいでモノに迫る。そうするとけっこう僕の意図通りに撮れる殊に気がついた。

オリンパスのフォーサーズシステムで撮影をすると、ボケの量がフルサイズより少なくなる。D700はニコンの35mmフルサイズ機なので、ボケの量が圧倒的だ。F9に絞ってこれなら、僕にはこれで十分だ。

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さてその後、この人と合流。

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竹鶴酒造の杜氏・石川達也である。
実は竹鶴の代表的な商品に、地元・広島産の雄町米を使った酒があるが、その一つの産地がこの大和町なのである!

「あ~ やまけんがいるなら、生産者さんのところに寄って、その後うちにメシでも食いに来いよ」

と言ってくれたのである。

「それにしてもやまけんが大和町に来るとはなぁ、、、 ここは松田さんという方の田んぼなんだ。」

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これが酒造好適米である雄町の姿だ。松田さんの田は一枚が6反歩と広い。効率的に作業ができそうである。

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「よく来てくれましたな」

と松田さんがご登場。この人が、竹鶴の酒を支えている。

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大和町での農業の四方山話を聞いて、辞去する。土間の黒板に「インカのひとみ」とかかれていたので「あれ、インカのひとみ栽培するんですか?と聞くと、「うちの妻がね」とおっしゃる。

インカのひとみは、果肉が黄色く栗のような薫りのするジャガイモ「インカのめざめ」のいとこのような品種だ。収穫後、貯蔵に気をつけないとすぐに芽が出てしまいますからね、と話しておいた。

さて一路、酒の町・西条へ。広島を代表する酒・賀茂鶴酒造がある町だ。タツヤンのおやじさんはこの賀茂鶴の偉いさんだったこともあって、彼の実家はここにある。

なぜか石川家に来ると、自分が醸した竹鶴を飲むのかとおもいきや、だいたいタツヤンが最近オオッと思った酒を飲むことになる。石川達也には自分のことよりも、佳い仕事をしている他の倉の酒を応援することの方が大事らしい(笑)

今回はこれだ!

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「開春」は島根県の酒。右側のラベルは読みにくいが、「開春山口」と読む。

実は大和町からずっと山口君という、とてもひとの好さそうな(そして事実好い男だということだ)男が同道してくれていた。

「やまけん、実はこの山口君は、神亀酒造でわしが辞めた後にちょうど入れ替わりのタイミングで入ってきたんだけどな、島根県の酒造に杜氏として入ってて、ものすごい酒を造っているんだよ!」

とタツヤンが太鼓判を押す男である。彼こそが、この「開春」の蔵の杜氏なのである。僕が「君」付けで書くということは、、、そう、彼も僕と同い年!またいたぞ同年代頑張ってる組!

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この二本、どちらも 生もと(きもと)での仕込みである。僕が苦手な無濾過生原酒。しかも今年の新酒。 あ~、それ、苦手。俺は一年は寝かせてある、火入れが終わった落ち着いた酒がいいんだよなぁ、、、 と思いながら杯を口に運んでビックリした!

素晴らしい! 実に立ち姿の綺麗な飲み口に、複雑なうま味だ! 竹鶴の生もともそうだけど、なんでこの造り方をした酒はどれも穏やかなうまさと複雑さを秘めて居るんだろうか。

かなりビックリしてしまった。

「これを燗にしたらもっと旨いんだよ!」

とタツヤンがまるでわがことのように言う。全くこの人は、、、

でもその気持ちもよくわかる、素晴らしい酒である。実は僕は晩酌はほとんどしない、というか皆無である。酒を飲むなら、その分のカロリーのご飯一杯分や料理に回したいと思ってしまうくらい、酒よりメシ優先派である。しかし、この酒は買っておきたいと思う。熟成させたらとんでもないことになるんじゃないかと思うからだ。

「はーい、じゃあ早めのご飯にしましょうね」

と、石川達也夫人である良枝ちゃんのこころづくしをいただく。

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タコは自分の家で茹でるのが普通らしい。香りがパアッとたってふくよかなお味。

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うれしいのはベラ。

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えーと、広島ではなんていうんだっけ。こいつを塩焼きにしたのを、甘酢に焼き浸しにしたやつが旨い。瀬戸内の名物だ。

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食後は、タツヤンが最近はまっている阿波番茶。

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これは阿波番茶の茎茶だ。

阿波番茶を知らない人もいるだろう。国内では珍しい発酵茶である。日本の茶は紅茶やウーロン茶のように発酵させない緑茶が主体だが、徳島の阿波番茶の産地では、茶葉を乳酸発酵させて造る。

それはきっと、茶が最初から含んでいる酵素の力でそうなるんだろうと思っていたら、違うらしい。

「阿波番茶の発酵は微生物によるものなんだよ。そして工程の中に「茶を摺る」というのがあって、生もとの酒造りと関係があるんじゃないかと思って見に行ったんだよ!」

ということだった。茶葉を摺った後、密閉して嫌気性醗酵にする。2つ前のエントリで、デントコーンサイレージの乳酸発酵について書いたが、ここでも同じようにするのだ。いにしえの日本人の知恵とと経験と工夫は驚くばかりなのである。

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「もうほとんど残りがないんだよなぁ~」

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葉の部分の茶はもうすこし濃い色になるはずだが、茎の部分を煮出したのはこういう色になる。緑茶と発酵茶の中間色か。濃い山吹色である。

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これは実に佳い、、、

緑茶と違って何杯も飲んでいたいと思うような、健康的なまろみがある。
煎茶を愛飲する人も多いだろうが、過剰な窒素を投入して造られた茶にあたったりすると、調子を悪くする人もいる。農薬の害について言う人がいるが、僕はそんなものよりも窒素肥料の過多による害の方が多いと思う。

なんと阿波番茶の茶の木は、まったく肥料も農薬もやらない放任栽培なのだという。

「いや、『栽培』って言っていいのかなぁ、、、なにもせんのよ。」

うーむ、それは素晴らしい。商売にはならないだろうが、この阿波番茶、僕も一度は見に行ってみたい文化である。

濃厚なプリンのおやつ。

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相変わらず綺麗な、石川家の嫁・良枝ちゃん。

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ハードな出張スケジュールの合間だが、実にいい時間を過ごさせてもらった。
どうもありがとうございました!

今週はこれで明日、群馬に行くだけだ。来週は北海道。