広島・福山と京都連戦 黒毛和牛の肥育と、京タンクロを思う

2009年4月28日 from 出張,食材

先週の後半は広島~京都二連戦だった。金曜日には京都の焼き肉「南山」の楠本社長から、京タンクロの研究会を立ち上げるので、専門委員に就任して欲しいということだった。その委員には松本大策さんも呼んでいるとのことだったので、かねてから大策さんに「ちょっと話を聞いてあげて欲しい」と頼まれていた広島の農場に、前日泊しながら京都に廻ろうということになったのである。

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松本大策さんは、おそらく日本で最も高名な和牛専門の獣医師でありコンサルタントだ。

「こういう肉質にして欲しい」

という依頼を受け、血統の整理から成長ステージごとに細かく分けた飼料の設計、そして飼養管理の詳細まで指導する。二枚目の顔から、聴衆を笑わせる冗談が飛び出し、まわりにいる人たちがハッピーになる。そんな人だ。

「忙しいのに、本当にすみません!」

と律儀に頭を下げてくれるけれども、僕は識っている。大策さんの方が二倍忙しい人だ。全国を回り、国内だけじゃなく中国の牛まで指導して、出張日数は300日を超えているという。120数日の僕の倍以上にハードな人なのである。僕との共通点はデジタルガジェット好き。彼のPCはレッツノートR7のSSDモデルだが、そのHDDモデルも予備に持ち歩く。液晶プロジェクタを持つこともあり、それ以外にもいろんなものがトローリーバッグの中に入っている。この日はソフトバンクのスマートフォンをいじくっていた。

さてこの日は大策さんがこれまで関わってきた肉牛生産を行う企業のお話を伺いに。

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なんと6000頭もの規模で肉牛生産をしているこの企業、といっても農家が一代で企業に 育て上げた、ものすごいところである。上の写真にある山一帯が、肉牛肥育を行う場だ。

しかも山の中腹の部分は、これがすべて牛舎だという。こんな規模で繁殖・肉牛の一貫経営を行う業者さんは、鹿児島や宮崎を除けば、初めて見たかもしれない。

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肉牛の世界といえば、上の写真に黒毛和牛しか思い浮かばないだろうけれども、実はこの国の肉牛の半分以上はホルスタインなどの乳用種だ。その中には、ホルスタインに黒毛の精液をつけて産んだ交雑種も含まれる。店頭に並ぶ牛肉がすべて黒毛和牛だったら、いろんな意味でたまったもんじゃない。そういうことである。

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その後、牧場が運営するスーパー(立派!)へ行って、店頭の視察。自分のところの肉を使う精肉売場はさすがにすごい!

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すべてバーゲンプライスといっていいほどにお買い得な価格である。

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この肉質で100gあたり798はなかなかつけられない値段だ。僕にはちょっと脂が多すぎるが、、、

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と一通り見てからホテルにて一休みし、大策さんとともに夜の福山へ。

福山といえば、僕が前の会社にいたときに一度出張にきたことがある。世羅町にある菊のブリーダー企業である精興園に行ったときのことだ。ちなみに日本でもっとも売れている花は何か?バラやチューリップなどではない。圧倒的に輪菊なのである。その中でもベストセラー品種を出しているのが精興園だ。実は社長の息子さんが僕と同じSFC出身ということで、話が盛り上がったのをよく覚えている。

で、その際に福山でラーメンを食べた。実に旨いラーメンだったので「もう一杯!」といったのだが、おかみさんが「駄目、そういうのは!」とつくってくれなかった。その代わり、魚を食べたいのだというと、いい店を教えてくれた。それが「海彦太郎」。

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何が旨いかというと、ここの海鮮釜飯が旨かったことをよーく覚えているのだ。

まずはサワラの刺身。

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美味なり、、、とろとろに脂がとろける。

そういえば、広島といえば竹鶴酒造である。

「竹鶴の酒、ないの?」

「あ、姉妹店にあるんですよ、、、持ってきましょうか?」

そりゃあ持ってきてください! ということで本当にもってきてもらって、乾杯。

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雄町を使った合鴨農法米の純米。竹鶴の酒の中でも僕が最もよく呑んでいたものだ。大策さんにも呑んでもらう。

「うわーー、以前、ダウンしてたときにある人が「呑みなよ」っていって持ってきてくれたホットワインを飲んだ時みたいな感動があるよ!」

うれしくなって、石川タツヤンに電話。久しぶりに楽しく語らってしまったのであった。

さて、前回の出張から5年ぶりの海鮮釜飯。

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うれしいことに、びしっと効いた魚の出汁のしみこんだ飯は以前の印象と同じ。ふんわりした頼りない味になりがちな海鮮釜飯とは一線を画す出来である。ただし、、、以前はなかったこんにゃくが少し入ってる。僕は実はこんにゃくだけは食べられないのだ。避けてたべるも、ちと残念。

いやそれにしても久しぶりに頼んでみて、期待通りの味だとうれしいものだ。舌の記憶を再確認。

「やまけん、もう一件、連れて行きたい店があるんだよ!」

と大策さんが僕を引っ張っていったのが、駅の高架下にあるお好み焼き屋さん「田吾」。

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「この店はねぇ、なんとお好み焼きを焼くときに牛脂(ヘット)をたっぷり乗せて焼くんだよ!それを間近でみてから、あんまりうれしくて通ってるんだよ!」

おおお! 豚の脂ではなく牛の脂を使っているお好み焼き。それは面白そうだ!

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テーブル席に座ったけれども、やっぱりその技を見たいということで、お客さんが帰った後、カウンター席でその技を見る!

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これが牛脂だ!

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ごらんの通り、牛脂が円筒にくりぬかれた形状のものを、どさっと乗せる。これをひっくり返してジューッと焼く。

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ジューッとへらで鉄板に押しつけて、水分を飛ばす!

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完成である、、、

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もう言うことはない。
ヘットの濃厚な油分を含んだお好み焼きは、こくが強い!
生麺がカリッと焼き上げられているのが、東京では食べられない味だ。

福山、これから僕はここと関わることになるかもしれない。もしそうだとしても、もうすでに、毎回行きたい店ができた。さて次回はいつになることやら、、、