4月5日、恵比寿ガーデンプレイスのホールにて、発酵学の巨匠にして食の大冒険家である小泉武夫先生の講演が会ったことをご存じだろうか。
恵比寿ガーデンプレイスでは、「発酵は旨い」というテーマのセミナーを、一年通して6回開催する。3月には味噌をテーマにして開催されたばかり。そして、今回は発酵食品の大家であられる、小泉武夫 大先生である。
実はこのイベント、うちの会社でプロデュースをさせていただいている。今、僕の会社で働いてくれている敏腕女性コーディネーターが、仕事をさせていただいているのである。そういうわけでこの日、僕はプレスワッペンをつけて、撮影をしていたのでありました。
さて実は小泉先生にはお会いしたことがない! もちろん講演には数回、行って話を楽しんではいるのだけれども、、、あの凄まじくオモシロ美味しそうな文体そのままに、話が進むのだ!
いや、文章読んでいるよりも、お話しの方がすごく面白い。あの「コピリンコ、コピリンコ」などの擬態語が連発される様に、興奮しながら訊いてしまった!
会場はもちろん満員。当初は100名程度の募集のつもりだったのが、あまりに申し込みが多いので、大ホールに場所を移し、300名定員としたのである。
このイベント、次回のテーマは「チーズ」。講師は、フェルミエの本間るみこさん。なんと2000円でテイスティング付きというから、参加した方がいいんじゃないの~?というお得イベントである。ご関心ある方はこちらからどうぞ。
■『発酵はうまい』 セミナー 第二弾 「チーズの醍醐味」http://gardenplace.jp/event/cheeseseminar.html
と書いているうちに、隣から声がかかりました。
「チーズ編、定員に達しましたので、これで受付を終了しま~す」
ということで、今後もテーマが決まり次第、告知しますね。
◆恵比寿ガーデンプレイスWEBサイトアドレス
http://gardenplace.jp/
さて、恵比寿ガーデンプレイスといえば必ずここに寄らなければ、という店がある。それは、B2Fにある「とんかつ武蔵」だ。
その昔、僕が静岡のお茶会社のIT顧問をさせていただいていた時代に、そこの専務が「最高にうまいとんかつ、食べに行こう!」と連れて行ってくれたのが静岡市にある「かつ好(かつよし)」だった。清水に本店があるこの「かつ好」は、おそらく「塩で食べるとんかつ」に関してはここが嚆矢といえるであろうという伝説的な店だ。
銅製の皿の網の上にとんかつを鎮座して客席へもってくる恭しいプレゼンテーションに違わず、絶妙な火入れで厚切りの豚の旨味を極限まで引き出したその味に、まだ大学院生だった僕は圧倒されてしまったのである。
その「かつ好」の支店として恵比寿ガーデンプレイスの中にできたはずだ。そして、その後この店を切り盛りしていた人が、のれん分けの形でこの店を引き継ぎ、店名を変えてリスタートしたという経緯をきいている。
この経緯について僕は、数年前に「食楽」の取材で店主に直接聞いたので、間違いではないと思うが、もしかするとその後また経営が変わったのだろうか。何年かぶりに店に入ってみると、揚げている人は覚えのない顔だった。
でもまあいいのだ。とんかつが美味しければ、、、この店では、一人前に3500円を出す覚悟がなければ、こない方がいい。また、二人以上で来る方が望ましい。なぜなら特吟黒豚のロース250g 3465円と、鹿児島OX豚のロース250g 3200円の、双方を頼んで食べ比べをするのが最も素晴らしい選択だからだ。
まずテーブルには、特製の和辛子ベースのマスタードとソース、香の物が運ばれてくる。
この特製マスタードが またイイ味なのである。そして、じっくり二つの温度帯の違う鍋で揚げられたとんかつが、運ばれてきた!
時間をかけて低温から揚げられるのは変わっていないので安心。かつ好の流派で使われている、特徴的に大きなカツ切り包丁でシャクッシャクッと切り分けられ、こんな銅の容器にのって出てくるのである。
うん、肉汁がじゅんわりとにじみ出る、絶妙な揚げ具合。かといって煮豚のようにじゃぶじゃぶしているわけではなく、きっちりと脱水・旨味の凝縮がなされている。
小皿に盛られた塩で食べるのがお薦めだけれども、最後の方はソースびだびだにして食べてしまうのがどうしようもない僕の欲望。とんかつとは突き詰めれば、ソースを美味しく食べる料理である、というのが僕の結論なのだ(笑)かくしてカツ片にソースとマスタードが化粧されるのであった。
美味しかった!
けれども、やっぱり以前とは少し違う気がする。まず、前回の食楽取材時にじっくり見せてもらった時に驚いたのは、かつ切り包丁の使い方だ。高温の揚げ油の鍋に包丁を入れて熱してあるのだ!そして、揚がったかつを切ると、当然ながらその高温に熱せられた包丁面によって、切り口が ジュワワワ~ と音を立てる。
「ああっ それって、肉の断面を焼き固めて、肉汁が出ないようにしてるんですか?」
と訪ねると、職人さん(たしか山本さんといったはずだ)がニコッと笑って言うのだ。
「ぎりぎりの火入れで揚げますから、断面はピンクになります。もちろんレアではなく、しっかり火が通っているけれども、ギリギリのラインです。そのピンクの断面をみて不安になるお客さんも中にはいらっしゃるんですよ。だからこうして、脇の部分に熱した包丁で火を入れてやるんです。肉汁も出なくなりますしね。」
これに参ってしまったのだ!以後、実は僕の家でもとんかつを揚げるときには、このテクニックを援用させてもらっている。
が、今回、その「ジュワワワ~」音がしなかったのだ。ナタのようなカツ切り包丁でリズミカルに、シャクッシャクッシャクッと切り分けていた。
つまり、火入れの流儀が変わったということだと思う。ギリギリの火入れで、仕上げに側面を焼いて出すのではなく、最初からしっかりピンクが残らないような火入れになっている、という考え方だろうか。
でも、さすがに僕も以前との差異を思い出せないのだ。食楽に書いた原稿のタイムスタンプをみてみたら、2006年のことになっている。さすがに3年前じゃぁ、記憶が薄れてしまうしなぁ。
ということで、謎は残った。けれども、火入れの流儀が変わった(かも)といって、やはり武蔵のとんかつが美味しいことには変わりなかった。
久々の恵比寿行。これから、セミナーのたびに訪れることとなるだろう。また立ち寄って、確認してみたいと思う。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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