石川県の元気な農業者紀行 超ド級に面白い農家達がこんなにいるのであった! その2 林農産と井村さん

2009年3月30日 from 出張,農家との対話

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さて、大急ぎで次の生産者さんのところへ。お次は、石川といえば必ずこの人が出てくると行って過言ではない林農産さん。

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西田さん家でお昼を一緒に食べていた人である!
正体は、35haの規模で稲作を行っている、地域でも有名な篤農家だ。

「まあまあ、まずは作業場を観てくださいよ。」

と案内された作業場内には、6名の社員さんが立ち働き、お餅の加工をしていた。
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石川県は稲作中心の産地だ。稲作とは切っても切れないのが餅加工。

「市販の大メーカーの餅なんて、餅じゃないからねぇ」

というように、実は石川県内でも、周りの消費者や農家までもが餅を買いに来るという。味が圧倒的に違うのである。

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事務所内に入ると、笑っちゃう社訓が額装されていた。

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「補助金はモルヒネ」!!!!!!!!!!!!!!!

名文句である。もちろん林さんの手によるものだ。彼のWebをみると、それについてこのように解説されている。

「一般に、農業は弱い産業だから国が守ってあげなければならないと言う事で、 補助金と言う名で色々な助成をしています。林さんちでは、親の代から農業補助金事業は受けるなという家訓があり、 法人化してからも、それを守っています。したがって、営農資金は全額、自己資金と借入金です。 でも、どうしても自然に入ってくる補助金もあるので、中毒患者にならないように、 補助金はモルヒネという表現にしました。
林さんちが、まがりなりにも経営出来ているのは、 補助金中毒にならず、自主独立の気持ちがあるからです。ここ3期は、おかげ様で法人税も支払えるようになりました。 ようやく国道の真中を走れるぜ!」

立派である。その林さんが目指すのは、「23世紀お笑い系百姓」である。

「インディアン、アボリジニ、アイヌといった自然と共生している民族は、 何をするにも孫の事、そして重要な事を決定する時には7世代先の事を考えるそうです。林さんちも、 それにあやかり200年先の事を考えて行動しようと考えました。
しかも楽しく笑ってやれる方法は 無いかと日々努力しています。「バカは世界を救う」頭の良いと言われる方々が地球をダメにしている今、 今こそ、お笑い系百姓の立ち上がる時です。まったく今までにない感性の林さんちに触れて見て下さい。」

詳しくは彼のWebをみていただきたい。随所に痛快にバカバカしい写真や意匠がちりばめられている。

■林さんちのお米、玄米、おもち
http://www.hayashisanchi.co.jp/

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はいどうぞ、とかき餅の揚げたのを出していただく。もちろん林さんちの餅だ。

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味は実に素朴そのもの。米の持つ甘さと旨味に、黒大豆の香ばしさがアクセントに。いまや中小メーカーのせんべいやかき餅の原料までも外国産米になってしまっている一方で、農家が造るこうした加工品は非常に重要であり、相対的にホンモノ度が増しているといっていいだろう。

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林さんの農業について僕がとやかくいうのも不適切である。しかし、話題に上った中で、これだけはみせておきたい。

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この地図は、林農産が所有または賃借している農地を塗ったものである。35haといえば相当に規模が大きいが、それが広く一枚になっているわけでは全くない!飛び地になっているのがわかるだろう。上の写真で林さんが指を指しているあたりは住宅街。

「ここでやるために、農薬や肥料を減らした特別栽培をしているんですよ。住民への配慮を逆手にとってね」

と明るく言うけれども、そういうところでオーバーヘッドコストもかかる。

最近、いろんな雑誌で農業ビジネス特集が賑わっているけれども、本当にきちんと調べて、識者の監修で書いてるのかよ、と疑問に思うものが非常に多い。テレビで放映されている農業関連の話題も、無知なディレクターによってバイアスのかかったものになっていることもあるそうだ(先日、日本農業新聞の記者さんが、番組内で台本通りに読むことを半強制されたということを告発していた。)。

そういうところでよく言われるのが、「土地を大規模化・集約して効率的な農業をすれば」ということ。でもね、日本の農地がそんなに簡単に大規模化・集約できるわけがないのである。地権者が何人も居て、しかも地形も平坦ではなく、集約しようとすれば大規模な土木工事を必要とするような農地が多いのに、よくもナンセンスなことを言えるなぁ、と思ってしまう。

「ま、我々は自分のできる範囲でいい米作りをやるってことですよ。笑いながらね!」

と林さん。うん、笑いは重要だよね!

さて大急ぎで次なる地へ。お次は、僕も「石川にこんな人がいたのかよ!」と驚いてしまった人だ。

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井村辰二郎さんは、ちょっと驚きの農業経営をしている。麦・大豆・米で100haの規模で営農しているのだが、なんとその多くの面積がJAS有機である。

このブログを読んでいる人ならおわかりだろうが、現在日本で最も管理された農作物は、認証を受けた有機農産物である。認証を受けるために農家は圃場ごとに膨大な資料を作成・提出しなければならない。そして、基本的には化学合成肥料・化学合成農薬を使わない農法で生産しなければならない。最近、「有機といっても、別表に掲げる、認定された農薬は使ってもいいとされていて、結局は安全とは言えない」という議論が散見される。でも、だからといって有機認証を取得していることを貶めるのは、ちょっと筋道が違うように僕は思う。

で、北海道でもないのに100haの規模でJAS有機を取得し、麦・大豆などの重要作物を生産する人がいると言うことに、僕は驚いてしまったのだ。

井村さんは地元の広告代理店に勤めた後、97年に実家を継ぐ形で就農。らでぃっしゅぼーやを始め、慣行農産物以上の基準を持った取引先から引く手あまただそうである。

しかも、自前でメーカーと組んで商品開発を積極的に行っている。

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これらぜーんぶ、井村さんの原料素材で造られたものだ。

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本当に珍しい、有機の大麦は、このように麦茶となり販売されている。

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「いま開発中のものを食べてみてください!」

とその場で開けてくれたのが、豆乳プリン。超微粉加工したものを使っているらしいが、一昔前にはやった大豆の微粉加工機よりももっと細かくできるらしく、舌触りがざらつかない。とても美味しいプリンであった。

もうひとつ、井村さんが取り扱っている石臼が面白かった。

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こんなハンディタイプで、麦でも大豆でも挽けてしまう電動石臼である。うーむ事務所に一段欲しい(何に使うんじゃ!)。

と、駆け足で農家を廻ってから、金沢の繁華街「かぶ菜」に向かったのである。ようやく、メシ。