2009年1月14日 from 出張
実は福岡県の事情には、とても疎い。博多以外には北九州市にしか足を運んでいないという、かなりアンバランスな福岡体験しかもっていなかったのである。けど、たった2回の久留米訪問で、まるで10年遊んできたかのような仲間ができてしまった。なんだろうかこの暖かみは?きっと、久留米という地域が持つ性質である。
肥料屋、という仕事がある。読んで字のごとく、農業者に対して肥料を販売することを生業としている人達である。こんにち使われている肥料には、窒素・リン酸・カリといった三大要素を化学的に合成した、いわゆる「化学肥料」が代表的だ。一方、有機質の材料を醗酵させてつくった「有機質肥料」もある。そして、肥料の効きをよくするための各種の添加剤、栄養剤といったものがあり、化学の知識がないとなかなか理解がムズカシイ世界だ。肥料メーカーがつくった製品を卸す問屋機能だけの人間もいれば、自ら肥料をつくり出してしまう人もいる。この男・富松もその一人なのである。
久留米市で「丸富」という肥料屋を営む彼は、数年前に僕と仲間とで実施した就農希望者向けセミナーである「就農塾」に参加してくれた。なんと久留米から毎週水曜日、東京に受講しにきてくれたのである。この就農塾、彼ともう一人、京都の宮津から来てくれた飯尾醸造の彰浩君が皆勤賞という、遠距離ほど熱意があるという結果であった(笑)
富松がつくるのは有機質肥料。それも様々な原料を醗酵・熟成させた液肥である。 製造工程と発酵タンクを見せてもらったが、金がかかっている、、、
実はこうした発酵液肥の原料は、一定以上の糖分が含まれていないといけないので、廃糖蜜などの原料となる。肥料屋さんが集中するので、一定価格以上で確保しなければならず、そんなに安い買い物ではない。
富松のタンクに顔をつっこんで香りを嗅ぐ。実に濃厚で濃密、よい醗酵と熟成が進んだ良質な醗酵資材だった。「バイオシャイン」というかっちょいい名前のこの肥料、希釈して土壌に散布してもいいし、葉面散布してもいい。僕も試してみたいのだけど、圃場がないからなぁ。残念。
その丸富のはす向かいに、気になる店発見。
山本農機具製作所! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
鍬(くわ)マニアの僕としてはちょっと立ち寄らずにはいられない店だ!
「え、農機具みてく? いいよ、あそこはうちの家族みたいないえだけん」
と訪ねていく富松。
耕うん爪とは、農作業用のトラクターで使う、土を掘り返す爪の部分だ。この切れ味によって耕耘の効率が大きく変わる。
店にはいると、鍛冶場もきちんとあって、手作りで鍬や鎌をつくっているという!
うがー 欲しいよう けど持って帰れねぇ。
皆さんご存じですか? 日本全国で、鍬の形は大きく違うのです。
違いは刃先の形状、柄の長さ、柄と刃の角度に集約されるのだけど、ここ久留米の鍬は柄が短く、刃と柄の角度が非常に鋭角。どのように使っているのだろうか、見てみたいものだ。ちなみに僕が畑を持っていた神奈川県つまり関東の鍬は、柄がもっと長くて、柄と刃の角度は90度に近いものだった。これだと振りかぶってガッと地面に刃を刺すことができる。土壌の質によって農具は変わるのだ。
この久留米方式の鍬は、山形県の庄内地方で昔使われていた鍬と似ているな、、、
これがこの店の主力商品であるロータリー爪だ。「切れ味が違う」らしい!
このような、いわゆる鍛冶屋さんは、日本で急激に減少している。いずれ、きちんと手で打った農機具はなくなってしまうんじゃないだろうか。早く僕も、自分の農場をもって、農機具小屋を建てて、全国の農具を蒐集したいものだ、、、
「さて、そろそろメシでも食いに行こう!」
富松には、本当の久留米ラーメンを食べに行きたい、と言っていた。
「うーん、じゃあ、俺たちがいつも食べに行ってるところがいいかなぁ」
うん、そういう地元の人が行く店がいいな!といって連れてきてもらったのがここだ。
■丸好食堂
「食堂」という名のごとく、実に大衆的な店構え!そして実にソソル品書き!
うーむ こりゃあ片っ端からいってみたいね。
「面白いのは「酢豚」ってやつね。中華料理の酢豚じゃないんだ」
といって出てきたのがこれ。
あ、なるほど、チャーシューにお酢をかけてサッパリと食べるってことね!
これがまた、なかなか乙なものなのだ。茹でたチャーシューに適度な酸味が加わって、変化のある味に。
ホルモンは、かなりグアッと特有の香りがあるストロングな味。
焼きめし、焼きそばもなんだかソソルプレゼンテーション&味なのだ!
みよこのカマボコのピンクいっぱいの焼きめし。シンプルで実に美味い。これはチャーハンではなく「焼きめし」なのである。うむ。
そして真打ち登場。初めての久留米ラーメンだ。
博多の、長浜ラーメンと比べると面は中太。僕は圧倒的にこっちのほうが好きだ!博多にいったらラーメンは儀式として食べるけれども、やっぱり滑らかな舌触りに、噛んで官能的な太さがあった方が美味しいと思ってしまう。
スープも、かなり野性的な匂いの店もあるぞと聴いていたが、なんのなんの、とてもマイルドで美味しいじゃないの!
これが食堂で極めて安価に出されているという不思議。うーん 久留米、いいじゃん、、、
「まだもう一軒連れて行きたいんだよ!」
といって連れて行ってもらったのが、久留米の繁華街にある一口餃子の名店だという。
■娘娘(ニャンニャン)
なんとこの店、自宅に帰ってからdancyuのバックナンバーの餃子特集号をぱらぱらめくっていたときに、すでに取材されていたことを発見!さすがdancyu、さすが久留米!
この店の餃子の特徴は、酸味の効いたタレにニラのみじん切りを加えたものと、すりゴマを混ぜていただくと言うことだ。
この丹精に包まれた、小さな餃子とニラの風味と酸味のあるタレとのマッチングが最高! とても美味しい餃子である。もちろん水餃子もあり。こちらの方があっさりしていて好みかも。
いやー旨い。
旨いだけではない。この久留米にて、たくさんの仲間が、ごく短期間にできてしまったのである。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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