愛媛県大洲市とは、がっちり仕事をご一緒することになってしまった。これから月二回はかならず足を運ぶことになる。愛媛県今治市で産声を上げた(だけなんだけど)僕としては、愛媛の仕事ができるのは本当に嬉しい限りだ。
例によって、松山空港から大洲まで、途中にある直売所を巡りながらの旅路。
産地の直売所は野菜を中心に売るところが多いが、さすがは愛媛。漁協による海産物販売を併設しているところが多い。それも無茶苦茶安い! 上の地エビは100g200円!ひえええええ 買って唐揚げにしたいよううううう
うみっぺりにある直売所ふたみでは、愛媛名物じゃこ天の揚げたてを売っている。
じゃこ天は、揚げたてに限る。旨い店を探すよりも、とにかく揚げたてを串に刺してほい、と渡してくれるところを探すべきである。
とはいいつつ、ここの味はちょっとサッパリ目。もっとハランボがいっぱいはいって黒ずみ、ジャリジャリと骨が感じられるくらいのが旨い。
もっと小規模な、魚中心の直売所。このへんの刺身醤油は「三歳(みとせ)」と呼ぶ。表示を見ると、カラメル色素やらブドウ糖やらいろんな甘み成分が入っていてちょっと辟易するが、、、この辺ではこの甘~い醤油でないと刺身が旨くないそうだ。
大洲市に入り、非常に小さいながらかなりの売り上げを誇る「あさぎり市場」の店頭で、素晴らしいものを発見!
鮎を軽く焼いて、カラカラに干した「鮎干し」である。この辺ではこれで出汁を取って、雑煮にするのだそうだ。う、う、旨そう! 3本入りが500円。残っていた3袋をさっそく買い占める。どんな出汁が出るんだろう、すっげえ楽しみだ。
どうやって出汁を取るの?と尋ねたら、「そのまま煮るとバラバラになって小骨が散るから、ガーゼみたいなのにくるんで煮るといいよ」とのこと。なるほどね!
その近くにある、観光いちご園。30歳と若い農業者さんが営んでいる。
ここの経営では、土耕栽培と高設ベンチでの栽培との二通りがあるのだけど、「土耕のほうが美味しいでしょ?」とたずねると、きっぱり一言。
「土耕のほうが断然美味しいッス。」
と言い切ってくれた。施設園芸でいちごに参入する人が多いけど、味は土耕じゃないとよくなりませんぜ。
大粒のイチゴをいっぱいいただいて、恐縮。
「さて、そろそろ昼ご飯にいきましょうか。お昼は大洲市の郷土料理をたらふく食べていただきますよ!」
といって連れて行かれたのが、、、
ここだ!
街道沿いにあるドライブインレストランの呈、うーむ これは、、、?
「ここがですね、T本君のご実家なんですよ!」
おおおおおおおおおおおおおおお
T本氏とは、今回の僕の仕事の担当者さんである。そのご実家がこことは、、、
「こういう感じの店ですけど、予約して来ると、すごくきっちりした料理をだす店なんですよ。」
なるほど、、、なんでアポロって名前なんですか?
「うーん、うちのじいちゃんがこの店を始めるときに、世間的にはアポロ号が月に、、、」
あああああああああああああああああああ そういうことかぁ!(笑)
あまりに脱力しそうになる展開。 が、しかし! この店、ものすごい実力の店だったのである、、、
愛媛の郷土料理 献立
■大洲のいもたき 里芋(夏芋) かしわ肉 おあげ 彼がT本氏である。いもたき、本当はこんにゃくが入るが、僕は食べられないのでよける!
芋炊きとは、山形県民が愛する「芋煮」と同じようなものと思えばいい。しかし、後生が違う!大洲の場合は、里芋にかしわ肉(鶏肉)、醤油味なのである。
こいつがまた、旨い!ほっくりとした芋の内部まで、上品なかしわ肉の出汁が染みこんでいる!おかわりしてしまった、、、
■鮎の甘露煮と三品盛り
ぬた…わけぎ、じゃこ天、イカを酢味噌で和える
白和え…ゴマ、豆腐の衣で大洲野菜を和える
卵焼き…ネギ入り地卵
■まるずし ホータレ鰯とアマギを酢じめにし、甘酢で味付けしたおからを巻く
このホータレ鰯とは、カタクチ鰯のことなのだけど、ほおが垂れるほどに旨い」ということでホータレと呼ばれる。アマギという魚はなんだったか、ちょっと忘れてしまった。おからを巻いたこのお寿司、愛媛の沿岸地帯で結構よくみかける。そして、しみじみと旨い。ただし飲み物と一緒にいただかないとのどに詰まる。
■フカの湯ざらし フカとハモとボイルして冷水にさらし、カラシ酢味噌をつけて食べる
フカはサメのことだ。湯引きにしたものを酢味噌で食べる習慣はわりとよくあるが、カラシ酢味噌のカラシがビシッと効いているのがこの地域の特徴か。
■巻き寿司 大洲産しいたけ、穴子入り
もうね、この穴子がたまらんわけですよ。愛媛といったら穴子。江戸前なんか食えなくなる。
そしてショックなほどに旨かったのが、これ!
■栗入りちらし寿司
なんとこの地域では、ちらし寿司に甘辛く煮付けた栗をどこどこと放り込んで食べるのだそうだ。
「え、これ、どこでも普通じゃないんですか?」
知らないよそんな食べ方!
ところがこの栗をホクリと崩しながら、甘みの強い酢飯とともにかっこむと、異様に旨い!栗の甘さと濃厚な風味が醤油味に絡まって、実に強い具材となっている。栗ご飯とか、あんまし好きじゃない僕だけど、こいつぁあ旨い!
■鯛飯 宇和島では「ひゅうが飯」とも言う
まず、運ばれてきたのは、天然物の鯛の姿造りだ! あのぉ、まだ昼なんですが、、、
この切り身を、卵とゴマを合わせたものにまぶす。
ここに、特製甘辛ダレをかけて、ワサビなど加え、ぐちゃぐちゃに混ぜる!
こいつをどどーんと白飯の上に!
ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおお
ふるいつきたくなるほどに旨そう!
そして実際にすげー旨い!
タレの甘辛さが卵の黄身の旨味と抱き合って、相乗効果で鯛のいさぎよい風味を盛り上げているのである。おもわずおかわり。
■伊予さつま 「冷や汁」。焼き鯛、焼き味噌、キュウリ、刺身こんにゃく
例によって僕のはこんにゃく抜き(笑)
これ、宮崎県の冷や汁と同じようなものだけど、味噌の味が違うので、甘みが強く独特の味である。これもご飯にかけて食べたかった、、、
そして、、、
僕が最も感動したのは、これだ。
■かに飯 肱川の川ガニの炊き込みご飯
何が素晴らしいって、あまりに潔い構成。川ガニとご飯だけなのである!
蟹の甲羅をひっくり返すと、、、
もちろん味噌が!
しかも、このカニミソがまぶされたご飯部が黄色くなっているのが、むちゃくちゃにソソル!
ご飯をかっこむ。
すると、本当に純朴な、川ガニの香りと醤油の風味、ご飯の食感と甘さが程よく混合し合いながら、口中を満たしていく。
うーん、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
これはですねぇ、なんともほどの佳い美味しさです。
重要なのは旨すぎないこと。過度に甘みや旨味が強かったり、コッテリしていたりするものは、口に入れた瞬間に強制的に脳内に快楽物質が走り、
「おいっしいいいいいいい」と絶叫興奮してしまう。
けれども本来、日本のむかしからの郷土料理に、そんなショッキングなまでに快楽がはしる食べ物は少なかったはずだ。
このかに飯は、噛みしめていくごとにカニから出た香りや美味さがにじみ出てくる。静かに嚥下した後、フッと顔がほころんで「旨いなぁ」ともらしてしまう、そんな味なのだ。とても地味で、滋味でもあり、静かに感じる美味しさ。ああ、本当に佳いものをいただきました。
■味噌汁 内子産 おふく味噌
愛媛特有の、麦がたっぷり入ってあまい味噌汁。美味しい、、、
いやーすばらしかった!
もしこの郷土料理を食べたければ、アポロにきっちり時間を取って予約を。それなりの人数でお願いすることとしてください。本当に旨かった!
ちなみにこちらが通常のテーブル席。僕らは、奥の座敷で食べました。ふつうのランチは650円くらいで内容が充実しており、近隣から客が絶えないという。お忙しい中、どうもご馳走様でした!
さてその夜、仕事が終わってから大洲市内の若手農家および若手JA職員と交流会。
みんな、むちゃくちゃ元気!
ここも、後継者がすくないといいつつ、バイタリティ溢れる街だ、、、
ちなみにお店は、中華食堂「花華」。3800円のオーダーバイキングという、いろんな料理を頼み放題という素晴らしきコースで、出てくる料理も異様に旨い!
特に旨かったのが、、、
今治で密かに名物となっているという、「焼き豚卵飯」。
どんぶりご飯の上にでかい焼き豚の切り身をのせ、半熟の目玉焼きを載せて甘辛い特製のタレをかけるというもの。きいただけでも旨そう!
うーむ
ガテン系向けの最高のメシである。これは今治にいかなくちゃな。
もちろんこれじゃ終わらない。
前回、大洲を去る前にたべた「福ちゃんラーメン」を覚えているだろうか?
「やまけんさん、福ちゃんはね、屋台のほうを食べないとダメ!」
え?屋台も出てるの?
「息子夫婦が店舗をやって、お母ちゃんが屋台をひいてるんですよ!市役所前で17時以降、食べられますから!」
よーし それじゃ行くしかない。
夜10時という、一杯飲み終わった人がラーメン食べたくなる絶好のタイミング。果たして市役所前に、福ちゃんラーメンの軽トラ屋台があり、その周りは人だかりでいっぱい!
水はセルフサービス。コップをとってタンクの蛇口をひねる。「残りスープを捨てないでください」とは、環境への配慮(笑)
「屋台ですから、火力とか手間とかかかるので、じゃっかん麺は柔らかめになってると思いますけど、、、でもね、屋台のほうが美味しく感じちゃうんですよ!」
という河野さん、そして若手農業者の言葉通り、寒い中、外でたべるこのラーメンが異様に旨い!
みれば、みんな地下道出口の手すりの部分にどんぶりを置いて食べているのが笑える。 このシチュエーション。一杯500円の安さ。自家製麺している、パスタっぽい、小麦の感じが残った麺。そして醤油は地元の梶田商店のものだ。
実に満足!
愛媛県大洲市は、すっごくポテンシャルの高い地なのではないか。そう思いながら、もうくえねー、、、と宿に帰り、睡魔と戦いながら原稿を書いたのである。