2008年10月22日 from 出張
Radixの会という生産者の集団がある。名前を観てぴんと来る人もいるだろうが、有機・特別栽培農産物や無添加食材などを宅配する「らでぃっしゅぼーや」と取引をする生産者達の集まりだと考えていい。
らでぃっしゅぼーやは、このジャンルでは大地を守る会と双璧をなす存在で、それぞれが9万世帯以上の会員を有している。歴史的には大地を守る会の方が先にできているが、個人宅への宅配、つまり個配サービスを最初に展開したのはらでぃっしゅぼーやの方である。
以前にも書いたかも知れないが、僕は大地を守る会の藤田会長とは、大学で畑を拓いていた時代からおつきあいをさせていただいているので、大地との関わりは長い。一緒に仕事をさせていただいたこともある。一方でらでぃっしゅぼーやとの関わりはあまりなかった。
最初にらでぃっしゅぼーやの関係者と知り合ったのは、有機農業関連の世界に関して、師匠と思っている徳江倫明さんと、前の会社で一緒に仕事をしてからだ。徳江さんは、らでぃっしゅぼーやの代表取締役をしていた人だ。その関係で、長崎のとある産地に見学に行ったとき、森崎という同い年の男と出会い、意気投合した。いま、この森崎はらでぃっしゅぼーやの生産関連の部長になっている。他にも数人、友達ができた。しかし、まだらでぃっしゅぼーやの会員になって個配を受けたことがない、、、(汗)今、申込書を記入する余裕もないのだ、、、といっている割に、ブログは書いている。
さてこのらでぃっしゅぼーやの生産者が相互に情報交換をするための会がRadixの会だ。とはいっても、らでぃっしゅぼーやとは独立した会として運営をしている。
僕はこのRadixの会は、有機農業に関するもの凄い叡智を蓄えた集まりではないか、と考えているのだ。
彼らは年に数回、各地で勉強会・講習会を行う。有機農業の技術は、通常の化学肥料・化学合成農薬を使う慣行農法とは違うので、全く体系が変わってしまう。残念なことに、日本では農学のアカデミズムの世界では、有機農業はまともに扱われてこなかった。従って試験場やJAの営農指導員が有機農業を指導することはほとんどない。
だから有機・特別栽培の技術は、独自の体系をつくっていくしかなかったのである。ここ15年くらいで世の中が変わり、特別栽培(以前、減農薬・減化学肥料と言っていた栽培方法だ)品は若干増えてきた。けれども、その技術体系の礎を作ってきたのは、いろんな攻撃に遭いながらもジッと耐えてきた有機農業家達なのだ。
Radixの会も、その流れを創ってきた大きな一派なのである。
「やまけんさん、そのRadiixの会の東北地方の若手生産者が交流する会があるから、来ませんか?」
と声をかけてくれたのは、Radixの事務局を切り盛りする島田ちゃんだ。森崎が「彼女がいるからRadixは廻ってるンや」という人材である。
そして、まだ稲刈りシーズンには1ヶ月ほど早い頃、秋田県の大潟村に飛んだのである。
大潟村には何回目になるだろうか、、、八郎潟という大きな沼を干拓してできた、開拓地。国策として生産増大のかけ声がかかっていたころに全国から入植者を募集して、大型機械を使って一枚1ヘクタールという大規模な田圃で営農する稲作を進めた地域だ。それからわずかの間に、日本では米が余り始め、減反を強いられるようになった。いろんな意味で象徴的な地といえる村なのだ。
この大潟村を見下ろす寒風山の、回転展望台前の駐車場に、東北各県から若手生産者たちが集まってきた! 皆、本当に若い。そこここに僕も識っている人がいる。のでちょっとホッとした。
展望台に登り、今回ホストとなる大潟村の生産者さん達が、村の成り立ちを説明してくれる。
みんな揃ったところで、いよいよ大潟村へ移動。まずは彼らの圃場へ直行し、稲の様子を見学だ。 ちなみに、この会には生産者だけではなく、らでぃっしゅぼーやの配送会社のスタッフまでが参加している。
その数は実に1/3くらいにはなるだろう。そう、実はこの配送スタッフがらでぃっしゅぼーやの生命線でもあるのだ。それについては後で書こう。
稲の栽培についての説明が続く。
気持ちいいほどに晴れた青空の下、実に活発な技術情報交換がなされていた。さすがにこういう会に参加する生産者たちは、みな「どうなってるんだ」「こうなってるんか」といろいろ手を伸ばす。
さて
田圃を堪能した後は、なぜかいきなり「フットサル大会」である。
なんとこのフットサル大会で、夜に食べるBBQの具材、特に肉の内容が決まるという、、、もしビリになると、ブロイラーの肉しか食べられない、、、(笑) このためか、みな異様に気合いの入った大会となったのだ!
いやー
僕も少しだけ入ったけど、走れない、、、後半、足の甲をグギっとやってしまって半リタイア。しかしさすが、農業生産者と配送スタッフ。どのチームにも試合巧者が居て、白熱した戦いを繰り広げていたのである。
BBQはかなり真っ暗な場所で開催されたので、写真撮影は放棄!
肉はまあいいとして、庄内の生産者グループが持ってきてくれた、本もののだだちゃ豆が旨い!うちのグループは庄内の佐々木君という若手が居たので、たっぷり食べることができた。超・絶品な豆だった、、、
しかし、この時最も面白かったのは、3団体の米の食べ比べ。飯盒で炊いたご飯を食べ比べたのだが、すでに一年前の米なのにも関わらず、どれも実にレベルの高い味だった!
この時、「やっぱりRadixの人達の栽培レベルは高いんだな、、、」と素朴に実感してしまった。誰だって、クエバワカル。
さて、大潟村唯一のホテル、サンルーラル大潟にチェックインして、宴会だ。
らでぃっしゅぼーやの、ある種の”顔”といえる後藤さんがブワーッと盛り上げる。ここからが本番か!
それにしても、Radixの若手農業者の層の厚さ、そしてパワーには恐れ入った!
みな、実に個性豊かであり、そしてみな自分の創っているモノに対する自信と誇りを隠さない。今ここにいる連中だけを観ると、後継者不足ってなんだよ?という気になってしまうから不思議だ。日本の各所で、超・高齢化している農村を廻っている僕なのに、、、
ちなみに、Radixの会の代表は、このブログの過去ログ、岩手県400キロの旅編に出てくる、陸前高田の超・こだわり醤油醸造元である「八木澤商店」の河野さんだ。この日は、奥さんの光枝さんがいらしていた。 八木澤商店は、こだわり醤油を使った旨い漬物を作ろうとして、自根キュウリを求めたが、周りで誰も作ってくれない。「じゃ、俺が作ってやるよ!」と自社で無農薬の自根キュウリ栽培を始めてしまったという、そら恐ろしい人達である。そんなもの凄い人がトップにいる団体なのである。
こんな風に夜は更けていった、、、
5人くらいの相部屋で眠りかけたところで、ふと目が覚めると、らでぃっしゅの森崎が、大潟村の志田さんと熱く語っていた。いや、志田さんが森崎ににじり寄っていた。
「最近のらでぃっしゅはどうしたんだ! 」
「いや、そうじゃないんだ。俺たちはこう考えてるんだ、、、」
この時、眠さ150%だったので、うおー聴きたいと思いながらもそれを子守歌に寝てしまった。けど、この熱い議論は、信頼関係があってこそできるもんなんだろうなぁ、と思ったのだ。
さて、朝。 なんと午前中は、しっかりと「Radixの明日のために」を考え、議論する場が用意されていた。
あっ これって9月のことだったっけ! 時の経つのが早すぎるぜ、、、
ネットサービスの「関心空間」というのがあるが、このような形で、Radixの生産者たちが情報交換や情報発信をできるような仕組みができるとしたら、どんなサービスがあったらいい?というものだった。これをKJ法的にカードで意見を出し合い、整理していく。
そして発表するのである、、、ううむ、このノリ、なんだか懐かしい。 「実はこんな感じで、毎年やってるんです。前日にスポーツ大会をやるのは、いきなりチーム組んでもうち解けないから。二日目にこれをやるっていうのがいいんですよ!」と島田ちゃんが言う。確かにね!
しかもいいな、と思ったのは、チームには生産者、らでぃっしゅぼーやの人間、そして配送会社の人達がまんべんなく入っていることだ。
らでぃっしゅぼーやの配送は、各ブロックごとに別々の配送会社が担当している。が、その配送会社同士の繋がりも濃い。
各会員の自宅へ個配を行う配送スタッフは、いってみればらでぃっしゅぼーやの顔そのものである。会員にとっては、配送スタッフこそがらでぃっしゅとのインターフェースなのだ。その彼らが、積極的に商品や生産者の情報を届けようとしているのが、素晴らしいところだ。
「我々がもっと生産者さんのことを識れば、それを伝えることができるんですよ!ですから、いろいろ教えてください!」
という姿勢を持つ配送スタッフが多かったこと多かったこと。
偽装請負やらなにやら、自分の仕事に誇りを持てないような状況に追い込まれている人が多い中、らでぃっしゅの配送スタッフの活き活きした顔は、かなりまぶしく格好良く写ったのである! これは今回の収穫だった。
さて、ここで会は〆となり、解散。
有志が、志田さんの田圃や大潟村の集荷施設の見学へ行くという。そして、なんと配送スタッフが志田さんの田の草取りをするという! いいねぇ、いいねぇ!
志田家にて、素晴らしき昼食。 都合、30人くらいに振る舞ったんじゃないだろうか?ご馳走様でした、、、
おにぎり、美味しゅうございました。
まだ季節じゃないけど、きりたんぽ鍋、美味しゅうございました!
子供達のポニョの踊り、可愛かったです、、、
9月初旬の秋田では、稲の熟度はこんな感じだ。
今年はねぇ、例年には出ないいもち病が出たんだよ、と教えてくれた。温暖化の波は、病害虫の出方も大きく変えている。日本の農業技術体系すら変わってしまうかも知れないなぁ。
配送スタッフ達が、長靴を履いてヒエを抜く。
田に入ったことがある人ならわかるだろうが、稲の葉は葉物のように鋭く、先っぽがつんつんと肌に触れると、あとで堪らなくかゆくなる。ヘタに葉を引っ張ると切れてしまうこともある。だから手袋と、事務員さんがするような肘ガードが必要なのだ。なかなかに大変な作業なのである。
陽が少しずつ落ちてきて、作業終了。
彼らの米の集荷施設を覗かせてもらう。ここでも、他地域からのグループの人達と積極的な情報交換が。
「冷温貯蔵するならさぁ、○○を使うといいよ。安く上がるし」
「あー、あれは使わない方がいいな」
最初にちょっと書いたけど、やっぱりこのRadixの会というのは、素敵な団体だと実感した。
僕は、らでぃっしゅぼーやという経営体については、実はあまりいい印象を持っていない。それには理由があるのだけど、後日また触れることになるだろう。もちろん森崎を始め、昔からいる社員である友人達のがんばりを観ると、応援しなければ!と思う。しかし、らでぃっしゅは今や上場を目指している企業である。株式の公開と、会員に対する食の安心の提供が両立するんだろうか、どうもしっくりこないのだ。
けれども、その懸念はともかく、らでぃっしゅぼーやを支える生産者団体であるRadixの会は素晴らしい!と強烈に感じてしまった。もっと親しくなりたいものだ。
そして、、、
今回最も感動したのはらでぃっしゅぼーやの配送スタッフ達の思いだ。今の日本にこんな仕事をする人達がいるんだろうか。
彼らに家に来て欲しいから、やっぱり僕もらでぃっしゅの会員申し込み、しなきゃな。そう思ったのである。
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