2008年9月 8日 from
相田君、という名前を覚えている方は2005年からこのブログを観てくれている人だろう。北海道は釧路にあるバー「A One(エーワン)」のオーナーバーテンダーであり、2005年に開催されたフレアーテンディング・カクテル・コンクールの日本代表である。フレアーテンディングというのは、トム・クルーズが映画「カクテル」でやっていた、アレである。その他詳細はぜひ過去ログをご覧いただきたい。
■2005年10月23日
世界バーテンダー協会 FCC部門出場者 相田君はどう戦ったか!
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2005/10/fcc_1.html
その相田クンは、現在もバーを営みつつも、レストランまで出店し、こちらもなかなかの盛況だという。その話は聴いていたが、なかなか僕が釧路に出かける機会がなく、現地訪問は先延ばしになっていた。ようやく足を釧路に伸ばせたのはこの6月である。帯広に仕事があった僕を、「それなら帯広まで迎えに行きますから!」と、二時間かけて車で来てくれたのである!
帯広から釧路までは車で約二時間の道のり。その間に、あの素晴らしきシシャモがとれる浦幌を通り、我が友・本城しんのすけの出身地である音別をも通り過ぎ、名前だけしか聞いたことの無かった白糠(しらぬか)を抜けていく。
「釧路は寒いですよぉ、まだストーブつけてる人も居るくらいですから!」
という相田クン、ちょっとふっくらしたかもしれないが(お互い様だけどネ)、全く変わることがない!
「まだ夜まで時間もありますし、釧路湿原でも観ていきましょう」
ということで、釧路の自然に対面することとなった。
釧路が初めてだから、釧路湿原も初めてなわけだが、実に素晴らしい! まずは湿原が一望できる展望台まで、15分ほど歩くと、、、
こんな大パノラマが目の前に現れるのである! 「この辺に住んでると、こんなスゴイ自然がすぐ近くにあるから、東京に行ったときに本当に大変です。暑いし人は多いし、自然はないし、、、僕は3日居ると、ちょっとおかしくなりますね」
というのは本当だろうなぁ、と思った。何せスケールが違う。東京の環境が嘘のように涼しく爽快な風が吹くこの地に、ずっと居たいと思ってしまった。
「釧路はすごく経済的に落ち込んでいて、大変です。けどね、出て行く人も多いけど、この釧路が好きだって言って頑張って根づく人達もたくさんいるんです。僕の店なんか、ほとんどリピーターです。常連の人達に支えられています。だから、東京のバーに比べると圧倒的にアットホームな雰囲気だと思いますよ!」
というのは本当だった。まさにアットホームというのが当てはまる店作りを彼はしているのである。
さて、釧路のホテルにチェックインして、まずは去年に開業したレストラン「Berge A One」(ベルジュ エーワン)へ向かう。
店は、大きな川のほとりの、絶好のロケーションに建っていた。
■レストラン ベルジュ・エーワン
釧路市川上町2の2の12
0154・65・7788
ご覧の通り、横を流れる川を窓から眺める席が最もこの店のスイートスポットといえるだろう。デートで使う人も多いという。
そして常連客および飲み助は二階へ。バーカウンターがしつらえてある。 いやあ、いいお店じゃないの相田クン!
「いやー スタッフに恵まれたというのが大きいですよ」
という相田クン。一人では何もできないことを知っている彼は、スタッフ教育に非常に熱心なのだ。
確かに、一杯目のギネスを注いでくれた女性スタッフは、もうすぐチーズの勉強のため、店を離れるといっていたけれども、いい注ぎっぷりを見せてくれた。
よぉくみると四つ葉マークが見えるかな?
そうこうしている間に、カウンターが常連の皆さんで埋まり始める。
、、、すべて若い女性である。 いい店作ってるなぁ、相田クン。
「観てくださいヤマケンさん、メニューには載ってない刺身定食とか食べてるでしょ(笑) これがうちの店ならでは、なんです。」
ほんとだ!カルパッチョとかじゃなくて刺身定食だ! 俺もそれ食べたい、、、というわけにはいかん。ベルジュのお手並み拝見。
さてこの店のシェフは、相田クンの同級生である。このシェフの料理の専門分野を聴いて、あとでビックリすることになるのだが、、、ひとまず食べたいものをどかどかと頼んだ。
以下、僕の久しぶりの暴食記録。
■炙りサーモンのおろしマヨソース
■ザンギ三種盛り
ざんぎ、といってわかる人は北海道出身。そう、鶏の唐揚げである。
何と言っても特徴的なのは黒ザンギ!イカスミを練り込んで辛く仕上げている。
■ラムの唐揚げ
揚げ物連続。北海道といえば羊だ。全国的に生ラムが流行だけど、北海道が本場。
一口サイズのラムを甘辛く揚げて、特製ソースにチャッとつけて食べるのが旨い!
■マーボー豆腐
ん?やたらと本格的な麻婆豆腐である!頼めば檄辛にもしてくれるというこの麻婆、四川風ではなく広東っぽい。
ここで種明かし、、、
実はこの店のシェフは中華料理出身なのである!
だからメニューには本格中華料理がかなり載っている。
■エビのマヨネーズソース
もちろんこんな料理もお手の物。
しかし一方で、イタリアンなパスタも楽々こなすのである!
■ナスのアラビアータ
もちろん、味もいい! 旨いので、パスタ連続オーダー。
ちなみに、こんなに食い進むことができるのは、出てくるのが異様に早いからだ。感覚的には、チェーン展開している居酒屋のスピードに匹敵するほどに早い。
「釧路の人はですねぇ、とにかく料理が出てくるのが早くないと怒るんですよ!コース料理だっていっても、最初から全部並んでないと怒るくらい(笑)」
ということだが、本当にダンダンダンと出てくる。こりゃ、本州出身の料理人はとまどうだろうなぁ。
■塩辛クリームパスタ
個人的に最も気に入ったパスタがこれ。旨いぜ、、、まねしてみようっと。
■オムレツカレー
もちろんカレーも缶詰ではなく、シェフが仕込んだもの。
オムレツは、どこかやっぱり天津飯的なふんわり感がある!
■サンラータン
ここまできたら中華もガンガン攻めたい!ということでサンラータンをハーフでオーダー。ちなみに全ての料理はハーフで注文できる。こんなに食えるのもそういうわけである。
そして〆はこれだ。
■チャーハン
言うことナシ、、、もうお腹がはち切れんばかりです。
とにかくオーダーから出てくるのが異様に早い!ぜひそれは体感していただきたい。それにも増して驚いたのは、、、ものすごく安いのである!
こんなにきっちりしているのに、500円とか600円とか、信じられないような価格帯である(ただし上の写真は2008年6月時点。今は改訂しているかもしれないので、御了承下さい)。
「いや、ヤマケンさん、これは釧路では高い方かも知れないんです。釧路では、だいたい呑んで食って4000円以上だと高いといわれてしまうんですよ。」
ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ
そりゃあ、、、大変だぁ、、、
食べたもの全て、実に実に美味かった!この価格でいいのぉ?倍じゃないのか?と問いたくなるような内実であった。実にまったくものすごい話だ。東京で稼いで、釧路で飯を食うか!
こちらがシェフ(左)。掲載した全ての料理をなんと中華鍋で作っているという!右は日本料理を担当するスーシェフ。この二人のコンビで、実にインクレディブルなスピード&味が実現しているのであった! 実にお見事と言うほかない!
本当にこの店、素晴らしい。ただ、僕のような旅行者からすれば、もっと釧路っぽい料理を出してくれても佳いなぁ、と思った。
「うーん、そうなんですよねぇ、、、でも、毎日来ていただけるのはやっぱり地元のお客様なんですよ。そうなると、釧路っぽいものよりも今のメニューのようなものが喜ばれるというのが本当なんです、、、」
ああ、そうか!
僕のごとき旅行者が釧路を、ベルジュエーワンをたくさん訪れればいいが、日常的には地元の人達がこの店に集うのだ。それならば、もっと旅行者が増えればいい。そして、旅行者に対しては、地元の鮮魚や郷土食をラインナップした、別バージョンのメニューを出すというのも手だよね。
「ええ、そういうことであればできますね!」
ということなので、ぜひ釧路に行く人は、ベルジュエーワンに「予約をして」行くべし。旅行者で、だいたいの予算を言って地元の味を味わってみたいといって下さい。素晴らしい海産物や郷土色が並ぶに違いない。あ、でも忙しいときには対応できないと思うので、あくまで「お願い」レベルの話として受け取って欲しい。
さて、腹は死にそうに満腹である。でも本日のコースはまだ途上なのであった。
「じゃあ、バーA Oneの方に移動しましょうか」
ベルジュから歩くことたったの2分! 釧路の繁華街の小路に、もはや釧路では伝説のA Oneがひっそり建っている!
なんと「ほろ酔い通り」である!
この小さな小路の小さな店にて、世界大会に出場したバーテンダーが腕を磨いていたのである。
■バー 「A One」
http://www9.plala.or.jp/aone/
まずはこの店の一番人気という、生の果実のパルプをたっぷり残したカシスオレンジをいただく。
グラスの下から照明が照らされるようになっていて、幻想的な感覚。
なんとも格好いい店だ。外の「ほろ酔い通り」の風情との対比が実に佳い!
ちなみに、人材育成に力を入れる相田クンが、店長を任せている女性がまた実にシャッキリシャキシャキといい仕事をしてくれる。彼女のオリジナルカクテルは実に美味かった!
さていよいよ本日のメインイベントである。
「相田君、フレアーテンディング、やってくれる?」
「もちろんです!」
フレアーは、カクテル1800円から対応してくれる。もちろんどんなカクテルでもできるワケじゃない。彼の持ちネタで対応できるボトルというのがあるのだ。なので、彼のお薦めでオーダーして欲しい。
久しぶりに観る彼のフレアー、やっぱり見事なものだった。技術のギリギリ限界までつきつめた世界大会の時よりは、ボトルの軌跡の高度が低かったりはする。けど、ほとんどミス無く演じきった彼には、やっぱり見かけからはみえない生真面目さと確実性を重んじるパーソナリティが伺えた。
言葉は要らないな、以下、彼のパフォーマンスの雰囲気を少しでも届けたい。
伝わっただろうか!?
、、、んなわけないわな。ぜひ、エーワンに足を運んでいただきたい!
最後に、派手なフレアーではなく、じっくりと彼のカクテルを呑みたくなって、マティーニを所望。
タンカレーとビーフイーターを半々に使う彼のマティーニの切れ味は、やっぱり鋭かった!
ちなみにこの時、すでに二次会まで呑んでいたであろう人達が店内に溢れ、大騒ぎをしていた。でも、店長が「すみません、他のお客様が居ますので、、、」と声をかけると、「あっ ゴメンナサイねぇ!」と僕に対しても謝ってくれた。
そんなの当然のことかも知れないけれども、なぜか東京では感じられない、人と人のあたりまえなコミュニケーションの暖かみを感じてしまった。釧路の空気は冷える。とても寒い。しかし人は温かいようだ。
最後のカクテルを飲んでいる時、常連客の女の子が「あっ家の鍵を無くした!どこに置いてきたんだろう!家には入れない、どうしよう、、、」という事態になる。店員全員が必死になって各所を探す。彼女が乗ったタクシー会社に電話で照会するだけじゃない。一月前に店に入り立ての女の子はタクシーに乗った場所から店までを歩いて探すように相田クンが指示するのを僕は観た。
数分後、タクシー会社から発見の連絡。よかったよかった、、、
平穏に戻る空気。
けど、そこには平穏な暖かい空気を創り出そうと努力する店の思いがあったと思う。
釧路を訪れる人は、ぜひこの二店を訪れて欲しい。そして、この記事では伝わらないであろう、暖かい空気を味わって欲しい。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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