2008年7月 5日 from 日本の畜産を考える
仕事の合間を縫って二戸へ。実はきたる14日(月)に、都内某所で短角牛のイベントを開催する。23日に行ったオフ会とは違い、お客さんを料理人&料理マスコミ限定とするものだ。
当日に調理をするのはなんと、、、ラ・グラディスカの堀江純一郎シェフ。今、イタリアンの世界で、しかも肉の焼き手として注目されている人である。その準備もあり、新幹線に乗って二戸へ。社内では原稿三昧。
20:47に到着後、すみやかに短角亭へ移動し、当日お話しする講演内容を打ち合わせしながら食事。 写真は、本当は昼にしか出ない短角牛丼ランチセット。これが実に好評だという。確かにカルビなど焼いたのがどさどさと載っていて旨い!
翌日の二戸は、雨の予報だったが、駅周辺では晴れ間まで見えていた。 二戸駅前から浄法寺行きのバスに乗って30分くらい上ると、市役所の浄法寺支所に到着。僕の短角母子を世話してくれている杉澤君と落ち合って、山に登る。
山の天気はめまぐるしく変わる。残念ながら登り出すとすぐにガスがかかっていて、一種幻想的な雰囲気のなかに短角の群れがいた。 ええと、やまけんちゃんの牛はどれだったっけな、、、と探す。短角の群れはだいたい45頭くらいで、その中に一頭、雄種牛が入っているというハーレム状態だ。
短角に限らず、牛は群れるのでだいたいの位置を把握しておけば、広大な面積の牧野をあっちこっち廻る必要はない。
「日差しが強いと林の中で涼むから、外から見てもよくわからないんだ。今日はかえって探しやすいよ」
とのこと。 「ああ、いたいた。あれがさちちゃんだよ!」
おお、本当だ、「さち」だ!
僕が命名した「さち」。3ヶ月ほど逢わないうちに、いかつい身体になってたらやだなぁと思っていたが、さすがに雌牛だけあってそんなことはない。
やっぱりうちの子はかわいいぜ~ しかし、、とても気になることが起こっていたのだ。さちに限らずこの牧野には母子関係にある牛が10組くらいいるのだけど、子牛は乳を飲みたいので、母のところにすり寄っていく。近くに母牛がいない時には、「もぉおおおおお」と声を上げて母を呼ぶ。そうすると母牛もなんらかのコミュニケーションを返して、ご対面となることが多い。
しかし!
僕がオーナーとなっているこの母牛ちゃんは、さちに乳を飲ませようとしないのだ!
さちが彼女を見つけて近寄っていく。乳にむしゃぶりつこうとしているのだが、、、 母はぷいっと去っていってしまうのだ。 哀れ取り残されるさち、、、 なんてこったい!
最初のうちは僕も冗談ぽく杉澤君に「おいおい、育児放棄かよ」と言って笑っていたのだが、そのうち杉澤君がマジ顔で「うーん本当に乳を飲ませたがらないでいるなぁ」という。
どうやら、彼女の乳がちょっと腫れている状態らしい。
「本当はそういう、張っている時ほど乳を飲ませた方がいいんですけど、彼女はまだ初産だからそういうことがわからないのかも知れないね。」
えええええええええええええええ
なんだよぉ、、、そんなのありなのか、、、
ちなみにその周りでは当たり前のように授乳風景が繰り広げられている。
牛は愛情細やかな生き物だそうで、1年以上乳を飲ませるらしい。草も食べるし乳も食べる。それで大きく育ってくれる生き物なのだ。
でも、僕の母牛は今、さちに乳を与えてくれない。かといって愛情をかけていないわけではないらしく、隣りに寄り添ってはいる。 でも、さちがお乳を求めると、プイッと移動してしまうのである。仕方なくさちは草をたべる。でもお乳が飲みたい。「おうううぅうううう」と悲しそうに泣く。みていて切なくなる光景だ。あろうことかさちは、他の牛さんの乳にすり寄っていくようになった。
「もらい乳」である。これは通常は成功せず、追い払われてしまうそうだ。事実この時すり寄っていった雌牛は、まだ未経産牛だった(妊娠したことがない雌牛ということ)ので、乳に吸い付いたとしてもなんにも出てこないのである。 うーむ
牛さんの世界にもいろんなことがあるらしい。
「まあ、次の衛生検査でいろいろ調べますから、また対策しておきますよ」
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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