2008年6月 9日 from
ずいぶん過激なタイトルにしてしまったけれども、本当に最近よく眼にする「農業ビジネス」という言葉が大嫌いだ。その多くが、農業や農産物流通業の渦中とは全く外部の世界から、双眼鏡か何かで此方を眺めながら勝手に「ビジネス」などとのたまっているからだ。
この世の中に、ビジネス書に書かれているような都合のよい「農業ビジネス」が成立するようなスキームは、現状ではほとんど存在していない。非常に例外的な成功事例や、以前から農業主体として成立している事業者が行っている事例を採り上げて、いかにも「農業ビジネス花盛り」という印象を与えて、新たなマーケットがそこにあるようにみせかけているだけだと僕は感じる。
では、ありもしない「農業ビジネス」を盛り上げようとしている連中の思惑は何なのだろうかか?
マスコミにとっては最近、食を巡るあれこれ騒動に絡めて、「農業ビジネスの可能性」を盛り上げることが利益に繋がるからだろう。
また、農業排斥論者、または農地を取得したい企業にとっては、「農業ビジネス」という言葉が「外部からの新規参入」を匂わせるものであることもあり、これを歓迎しているのだろう。
しかし、現場にいる農業者や流通業者らは非常に醒めた眼でこれらを観ているということを伝えておきたい。
「農業は儲かるのか、儲からないのか?」という問いは非常にやっかいで、儲かっている人だっているし、儲かっていない人はとことん儲かっていない。
けれども、「新規参入」の場合に儲かるか?という問いには簡単に答えられる。現状の流通・販売の仕組みが前提になっている限り、農業は儲からない。少なくとも3年や5年で投資回収なんてできっこないよ、ということだ。
年が明けてから、ベンチャーキャピタルや事業会社、テレビや新聞から「農業ビジネスに関する相談・取材」がとても多くなったが、一番多いのは、既存の事業会社が何らかの形で農業関連のビジネスを立ち上げたいという相談だ。これがけっこう驚くほどに存在する。
そのどれもが農業生産か、または農産物を販売するというビジネスをしたいというのである。
うーむ
農産物の生産、そして流通を昔からしている人たちが、どう頑張っても儲からない世の中なのに、この人達はなんでそこに入っていきたいというのだろうか、と思うのだけど、そうした人たちは判を押したようにこういうのだ。
「付加価値の高い商品(例えば有機農産物)を作って、効率的な流通をすれば、今まで以上に魅力的な販売ができると思うんですよ」
上記の一文の中には、僕が観て間違いだと思う箇所が3カ所ある。というか、3つの要素しかないから簡単だが、、、こういうことを本気で考えて農業ビジネスやろうと思っている人がいるなら、もうこの時点でアウトなのでやめておいた方がいい。お金の無駄である。
(つづく)
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