2008年4月24日 from 首都圏
ブログを読んでくださっている方からメールをいただくことは多いが、木場周辺に住んでいる人からは「もしかしてこの辺に住んでるんですか?」というところから始まり、「あそこは美味いですよ」というような情報交換に至るケースが多い。
しかし、まさか飲食関係者のひとからメールをもらえるとは思わなかった!
木場の、閉店してしまうという名店「来来軒」のことは先日書いたが、その隣りのビルにレストラン&バーが開店したのは知っていた。けど、実は保守的な嗜好をもつ僕は、新しい店にスポッと入ることは少なく、素通りしてばっかりだった。
そんなある日、メールをいただいた。T松さんという方からだった。ブログはずっと昔から読んでいただいていたと言うこと、コメント欄があった時には数回書き込んでいただいているというようなことが書いてあり、最後の方に
「実は2年前から西葛西のバーでカレーを提供するようになっていまして、こんど木場のCorでもランチタイムに出してみようか、と言っていたんです。で、このたび4月27日まで、実験的に出してみることとなりました」
27日までだからもうすぐだけども、昨日、午前の仕事を家で片付け、自転車で店まで行ってきた。
木場駅から永代通りを東陽町方面に歩き、「東陽三丁目」という信号を右に曲がる。角に八百屋があるが、ここが僕が仲良くさせていただいている「八百周」だ。そちらの側に渡ってとことこ歩いていくと小さな橋を渡った後、アーケードのある商店街になる。しばらく歩くと、来来軒がまだ看板を出している。
ランチタイムのカレーの看板が出ているのですぐにわかった。店の前から、カウンター手前で大きな炊飯機とカレーを盛りつけている。店内にはいると、大きなL字型カウンターの店で、椅子と椅子の感覚がゆったりとってある。リラックスして酒を楽しめるバーのようだ。
「あっ ヤマケン、、、来てくれたんですか!」
と声をかけてくれたのがT松さんだ。 西葛西から木場へ、この期間だけ週末も毎日カレーをせっせと運んでくるということだった。それにしても、ブログ読者さんと会う時は、向こうは僕の顔を知っているけれども、こちらは知らないので、なんか変な感じだ。
さっそくカレーをいただくことにする。
「かなり辛口のポークカレーが人気ですぐに終わっちゃうんですよ。今日はチキン、キーマ、ひよこ豆、ハヤシ、の4種類なんです。それと、ハーフ&ハーフも承りますよ!」
ふうむ、では、ということで大山鶏を使ったチキンカレーとキーマカレーのハーフ&ハーフにしてみた。ご飯は大盛り。
サイズ感がわかりにくいかも知れないが、バーで供される料理はチビッとした量であることが多いけど、バシンとデカイ皿にボリューム一杯に盛りつけてくれる。もちろんこれは大盛りだけどね!
鶏のカレーは、南インド風ということもあって、ココナツの香りが奥の方から湧いてくる。スタータースパイスに使っているのだろう、マスタードシードがちらちらと見える。僕は、ギーなどの脂を多用した北インド料理も好きだが、翌日なんとなく身体が重くなってしまうこともある。その点、南インド系のさらりとしたカレーは、毎日でも食べられると思う。 このチキンカレー、とても美味しい。僕の好きな味だ。なぜかというと、バスマティなどのインドの長粒米ではなく、日本のコメと非常に合う味になっているのだ。
「米は、減農薬のはえぬきを使っています。持ち帰りもしているのですが、冷めてからも美味しく食べられる米ということで選びました。」
ということだった。もちろん、温泉卵の載ったキーマカレーも美味しい。
キーマには冷凍肉や輸入肉ではない、国産の生肉を使っている。旨味をきちんと味わえるのは国産の生肉 でなければダメということだった。僕はキーマカレーには濃厚さを求める(理想は、、、カフェハイチのドライカレーだ!)ので、ちょっとあっさり目かな、とも思ったが、逆にキーマルーがふんだんに乗ってくるから、ご飯の量とバランスさせるにはこの濃度が一番よいのだ。なんともすっきりしたキーマの味だった。
「僕はもともと料理人だったわけではありません。本を読み、教えを請い、辻調の生徒にもなって勉強をしてきました。辻調で習ったのは洋食ではなくて和食です。なぜならば、美味しい日本の米をもっと旨く食べられるカレーを作りたかったからです。
インド料理におけるスパイス使いは深遠で、おいそれと日本人が、しかも素人の僕が太刀打ちできるものではありません。
しかし、スパイス調理技術があれば日本の米に合わせたカレーも出来るかと言うとこれまた違う。日本の米の旨さと、日本人の味覚が分からなければ出来ない。
ですから、私としては日本人が美味しいと思うインド風カレーを目指したんです」
ということだった。実際、そうなっている気がする!インドカレーではなくインド風カレー、でも限りなく本格的なカレーだ。
木場~東陽というのも不思議な場所で、ぽつぽつと企業のビルがあるので、ランチ時になると一斉に人が道路にあふれかえる。それでもこの東陽三丁目界隈はいままで客が来るという感じではなかったが、つけ麺の「吉左右」やビストロ「ラ・ポルトルージュ」が健闘している中、かなりの客足が見込めるらしい。この日も早々と席が埋まっていた。
こういうのは一期一会なので、腹に余裕がある場合はできる限り食べるようにしている。ので、「和牛ハヤシライスとひよこ豆のカレーのハーフ&ハーフを!」とお願いしてみた。
「よく食べますねぇ、、、」
と言われるが、最近はいろいろ忙しくて、一回行って好きになった店にもう一度こられるのがずっと先になってしまう(ヘタすると1年とか)ことが多いので、チャンスは逃さないように喰うべし!なのである。 「ハヤシライスはとっても上品な造り。ドミソースの濃厚さよりも、トロリとしたトマト風味が薫る滑らかな仕上がりだった。 僕が気に入ったのは、このひよこ豆のカレー!こいつは美味い!豆のカレーというと、日本人はなんとも微妙な印象を受けるだろうけど、インドでは大主役級の具材だ。ネットリと炒められたタマネギとトマト、スパイスがふっくらと炊けたひよこ豆に絡んでいる。
「あ、これは動物性のスープストックとか全く使わないでやってますかね?」
「そうです、一切使ってません。野菜の美味しさだけなんですよ。タマネギも切り方と炒め方に色んなバリエーションがあって、この場合は飴色タマネギとは違う炒め方をしています。スパイスも最小限なんですが、すごく美味しいんですよね」
ということだ。正直、僕はこのカレーが一番気に入ってしまった。とはいえ、一種類だと寂しいので、強いて選ぶならば鶏カレーとこの豆カレーのコンビだと、最大限に楽しめる組み合わせになるんじゃないだろうかと思った。もちろん辛いポークカレーは食べていないのでなんとも言えないが、、、
営業時間は、
ランチ 11:30~14:30
バー 18:00~26:00(food L.O.25:00)
になっているそうだ。ただし、バータイムの時にはランチ時とは価格などに違いがある。二種あいがけのようなこともできないらしいのでご注意。基本的に、常に炊きたてご飯で楽しむことができるのはランチタイムだけだ。
先述のように、今回のカレーランチは4月27日まで。
でも、かなり好評だったので連休明けに、人の手当が付けば(いい働き手が見つからないらしい、、、)またやる、ということだった。
木場界隈の皆様はいちど食べて、感想をT松さんに伝えてあげてください。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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