2008年2月19日 from イベント
もう終わっちゃったイベントなのだけれども、西新宿のオペラシティ内にあるICC(インターコミュニケーションセンター)で17日まで開催されていた特別展を観に行ってきた。
■サイレント・ダイアローグ みえないコミュニケーション
http://www.ntticc.or.jp/Exhibition/2007/SilentDialogue/index_j.html
一番観たかったのは、藤幡正樹さんと銅金裕司さんのコラボレーション作品が出ているというのに惹かれてのことである。
藤幡さんは日本を代表するメディアアーティストの一人で、現在は東京芸大の先生をしておられる。
が!
実は何を隠そう、僕が大学時代にやっていた畑サークル「八百藤」の顧問をしていただいていた、恩人なのである!
まだできて二年目のキャンパスで、僕はまだ何も建っていない空き地を耕して畑を創っていたわけだが、それを「へー おもしろいことやってるねぇ」とおもしろがってくれたのが藤幡さんだった。コンピュータグラフィックスの授業などを通じて、藤幡さんがタダモノではない天才であることは何となくわかっていたものの、当時は理解力が及ばず、何を言ってるのかさっぱりわからんという不可思議な相手であった。でも、一番近づきたい人でもあった。
「うちの畑サークルの顧問になってください!」
とお願いしに言ったとき、うーんと一瞬渋い顔をしながら、
「ほんとはそういうのは絶対にやりたくなかったんだけど、ヤマケンが頑張っておもしろい展開をしていくならサポートするよ」
と言ってくれた。サークル活動として学校に認められるためには顧問の先生が就くことが必須だったので、彼のおかげで畑サークル「八百藤」は大学内での地位を得たといってもよい。まさしく恩人である。
さて一方、銅金氏とはまた妙な出会い方をしている。彼は、植物に電極を挟んだりしてその電位変化を目に見える形、または音などに変換するというような作品をこれまでに多数、発表してきているメディアアーティストだ。
■銅金裕司
http://wiki.livedoor.jp/dogane/d/FrontPage
なんとこの方は、日本で二番目にでかい、花の卸売会社に勤める人なのである。植物系(?)のアーティストでありながら、花卉の卸売会社で働いているというおもしろいお立場。
その二人がコラボすると言うことで非常に楽しみに出かけた。
「植物歩行訓練」と名付けられたその作品は、相変わらず全く説明書きもないため、いったいなんなのかわからないものだった。大がかりな機械がウニョーウニョーと動く上に、テラスのようなものがしつらえてあり、鉢植えの植物が固定されている。その植物は「歩行訓練」を受けているのである。
彼らの前には森の中をさまようカメラの映像が投影される。そして、ウニョウニョうごめく機械は、その映像が撮影された時の座標情報に基づいた傾き、揺れなどをなぞって動いている。つまり、擬似的にだが植物は「自分で歩いて投影された森の中を歩いているかのような錯覚」に陥るわけだ。
そしてその植物たちには、銅金さんお得意のセンサーがつけられ、電位測定(なのかな)されている結果がモニターされている。4鉢くらいの蘭が、違う波形を波打たせているのを観ると、なるほど個々の感情のようなものが生み出されているのか?とも思える。
文字で表現するとなんともわかりにくいだろうけれども、実におもしろいものだった。銅金さん自身が、パンフに「本当は、こうして訓練した植物の種子を得なければこの実験は完結しない」という趣旨の内容を書いておられたけれども、確かにおもしろい。つまり「自分は歩けると錯覚した植物の種」なのだ。これを繰り返していくと、本当に歩行する植物ができるかもしれない、という壮大な実験なのである。
おもしれぇ~
やっぱりこういう、どんな意味があるのか?と思いつつも、意味とか関係ないよ!おもしろいよ!という作品は、観ていると妙なパワーを感じてしまう。いや、自分の中に確実にパワーが産まれるのを感じる。
この作品の横には、銅金さんと藤枝さんという方のコラボで、蘭にセンサーをつけて、人間が近寄ったり、音を感じたりするたびに大きく蘭が波形を変える様をみせる作品があった。蘭ちゃんは実にセンシティブで、部屋にあたらしく人が入ってきただけでビヨンと大きく波打つのである。僕が、手から気を出すぞ~みたいな感じでじんわりと包んでいると、だんだん大きな波に変化したりして、カワイイのである。
いやー たのしめた。
ちなみにICCには、この特別展以外に常設している作品群がある。そのうち二つが、大学の同期生のものだった。下記二つである。
■kage
http://www.ntticc.or.jp/Exhibition/2007/Openspace2007/art_technology/kage_j.html
ちなみに彼らも藤幡研究会に所属していた。
帰宅してから、そういえばと思って昔のビデオテープを探した。藤幡さんを特集したNHK番組、美のなんたらかんたらというのだ。実はこの番組の最後の方に、藤幡さんが畑にきて、水やりをしている僕と話しながらキュウリを食べたりしているシーンがある。嫁さんが大学時代の僕を観て、「ぜんっぜん別人!やせてるじゃない!」と大笑いする。
しかし僕は衝撃を受けていた。なんと、この番組がつくられた当時、藤幡さんは僕と同じ36歳だったのである!
ひええええええええええええええええええ
自分の今居る位置、なしえたことの小ささを恥ずかしく思った。
頑張らないといけない。
藤幡さん銅金さん、また触発されました。とてもいいイベントでした。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
本サイトの著作権はやまけんが保持します。出版物・放送等に掲載される場合はご連絡を下さい。トラックバックはご自由に。