2007年11月19日 from 食材
ようやく寒くなり、ニンジンが美味しくなる季節がやってきた。
ニンジンはセリ科作物。たしかにニンジンの葉をかじると、セリのように強い香りがぷんと立つ。
原産地はアフガニスタン周辺といわれるが、そこからヨーロッパ系と中国系の二つの流れに分かれる。
スーパーや八百屋で通常にみかけるのはすべて西洋種。正月などに食べる、真っ赤で細長い、「金時にんじん」と名付けて売られているものが東洋種の中でで生き残っている品種だ。ゴボウと同じく「滝之川」という名品種があったようだが、食べたことがない。
ニンジンは作物のなかでも大好きな部類にはいる。
学生時代に畑をやっていたとき、キャンパス内の畑に借りていた土地に大学院が建つことになって立ち退き、近隣の農家さんの畑を借りることとなった。その畑に牛糞をタップリすき込み、五寸ニンジンを播いたら、圧倒的にぶっとく旨いニンジンをゴロゴロ収穫できた。学部+院の6年間の畑生活で、あの五寸ニンジンが最もよい出来だったと思う。
あの種は、日本のニンジン史上に燦然と輝く「黒田五寸」。事務員のタナカさんが、ご兄弟がやっている種苗店の棚卸品の種を「使いなよ」とくれたのだった。いま、タナカさんは確か慶應の鶴岡キャンパスにいる。懐かしいなあ。
このやけに長いニンジンが「大長ニンジン」。大根における守口大根のような存在か。たしか和種だと思ったけど、味は西洋っぽい気がする。あと、最近みかけるのが紫ニンジン。写真のは、外側の表皮だけがアントシアンの紫色。一ヶ月ほどまえに食べたのは、中まで真紫色のものだった。僕はこういうアントシアンが発現した品種は今ひとつ食味が悪いと思っているのだけど、この中まで真紫色のものは、ポリフェノールっぽい苦さが少なく、悪くないと思った。
ニンジンもこれからのグッと寒くなる季節、凍らないように体内に糖を溜めようとする。霜が降りるくらいになってからの五寸ニンジンは最高だ。僕は出張とかに出ない日はできるだけ野菜をがばがばと食べることにしているが、ニンジンはスティックに割って軽く塩ゆでして、大ぶりなのを一本は必ず、時には二本分食べる。我が家は相当量のニンジン(と、大好きなタマネギ)を消費していると思う。
最も旨いと思ったニンジンは、熊本の師匠である、ぽっこわぱ農園の五寸ニンジン。
1haくらいの広大な面積を延々とはいずり回り、ニンジンの間引きをした。ニンジンは発芽しにくい性質があるので、厚く筋巻きをする。思いの外に発芽率が良かったときは、厚まきした分、間引きが大変なのだ。地上部に葉がわさっと茂って、根本にニンジンの丸い肩が形成されてきた頃には軽トラの上から思いっきりスコップを振って堆肥を播き、機械で土寄せをする。これで雨が降ると、グワッと養分がニンジンに吸収されるのだ。
収穫可能になったら、すぐに掘り出さない分は地上部を刈り取ってしまう。そのまま土中でニンジン部は保存できるのである。それを掘って水で洗ってガリリッとかぶりつくと、果実のように甘く、香りは間違いなくセリ科野菜の濃厚なやつで、健全なおやつだった。あの濃厚な香りがたまらなく恋しい。アレを超えるニンジンは食ったことがないもんなぁ、、、
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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