2007年10月23日 from 出張
やたらといろんな仕事を抱えたまま、沖縄フレンズのナガハマちゃんが結婚するため、沖縄入りだ。沖縄の結婚式はとにかく余興がすごいと聞いていたので楽しみである、、、
なんといってる場合じゃない!
僕もしっかりその余興に組み入れられていたのだ。沖縄フレンズ総元締めのキッペイが、2ヶ月以上前から練りに練ったダンスの最後。どでかい半紙の上に「寿」の字を書く、その筆に僕がなったのである。
ん?
わかりにくい?
つまりこういうことです。
中央付近で三人の男に抱えられて筆になっているのが僕だ、、、
大きな寿に俺の祝福の心を感じてくれナガハマちゃん、モトナガ君!
おかげで3日間、シャンプーすると朱色の泡でいっぱいになってしまった。それにしてもキッペイおまえはすごいぜ。よくぞあんな出し物をプロデュースしたものだ。
ということで、式の時間は久しぶりに仕事を忘れて楽しいひとときを送ってしまったが、それ以外の時間はもろもろ原稿。本日、直近で一番大きな仕事が一段落したのでようやくブログを書ける!
那覇についてまず飛び込んだのは、沖縄最強のファーストフードチェーンであるA&W(エンダー)だ!
ドリンクはもちろんルートビアである。
きっちり3杯おかわり。
薬くさくて飲めないという人が多いけど、理解できん。
それにしてもエンダーのハンバーガーは旨い。野菜類がきっちりと挟み込まれているのがポイントだ。
生タマネギとピクルスの味わいがフレッシュ感を強調する。うーむやはり好きだぜエンダー。幸先のよいスタートである。
それにしても沖縄は夏であった。一気に冷え込んだ東京の寒さがウソのようである。
夜はなんといっても「琉球料理乃山本彩香」。1ヶ月前に予約しておいてよかった。
ここの泡盛は「春雨」。
食中酒はそんなに飲めない僕だが、この春雨の水割りは旨い!
泡盛独特のクセもあり、決して「飲みやす~い」という訳ではないと思うのだけど、食欲を喚起する風味があるのだ。そのアテはもちろん、この店自慢のとうふよう。
緑色の液体はゴーヤーのシリシリ(擦ったもの)だ。苦みを舌に味わせることで、たるんでいた味蕾がハッと起きるような感じだ。
あやかさんが時間と手間をかけて仕込むとうふようは、何度食べても拝みたくなるような熟成感のある味。本当に飽きない。NHK今日の料理のテキストで昨年くらいにこのとうふようをスパゲッティに絡めているのをみて思わず試したが、あまりに贅沢な味だった!やすいものではないから、そう何度もできないところがツライ。
前菜三品。左が田芋(ターム)、黒いのが豚肉に黒練り胡麻をのせたミヌダル、ゴーヤの天ぷら。
ミヌダルはやたらと濃そうなプレゼンテーションだけども、胡麻のソースには最低限の味しか添加されていない。ベースの豚肉の方におそらく静かに味付けをしているんだろう。とにかく深く落ち着く味なのだ。
そして僕が大好きなターム。
日本の里芋は古くからある塊茎類だけど、沖縄の田芋はもっとタロイモに近しい気がする。
ほくりとしたデンプンぽさと適度なねっとり感、そして甘さとほのかな芋の香りがイイ。
アーサをあしらったゆし豆腐の椀。
沖縄の豆腐、とくにゆし豆腐はしみじみ旨い。どちらかというと無骨な舌触りの後、しっかりクッキリした豆の香りがプンと口内を駆けていくのだ。
久しぶりに会った彩香さんは元気そうで一安心。
このときもやっぱり着物を自分で縫い直してアレンジしたおしゃれな服を着ていた。服のことはもうわからんので、嫁と勝手に盛り上がっていただく。
マクブの刺身。長命草が刺身の裏に挟まれていて、この鮮烈で柑橘の葉のような香りと酢味噌のビビッド感が実にマッチしている!
「おっ スーチカだ!」
というと、「うん、スーチキね」と直される。そうか、沖縄ではスーチキが正しいのですね。
絶妙な塩加減、皮の部分のクニッと歯に残る弾力がたまらない。
そういえば知らなかったのだけど、雑誌「コヨーテ」で彩香さんの料理についての連載が始まっているそうだ。
Coyote No.21 特集 柴田元幸が歩く、オースターの街[二〇〇七年、再び摩天楼へ] | |
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「とーあんしやさ」
琉球料理の記憶と味の物語
文 駒沢敏器 写真 関博
「一冊あげるわよ」
といただいてしまったのだけど、びっくりしたことに彩香さんのこの連載が始まった号に、ポール・オースターの「シティ・オブ・グラス」の、柴田元幸氏による新訳が全文掲載されている! オースター作品は大好きだ。ひええ、二重の意味で必読な雑誌ではないか!
そしてメインディッシュ(だと僕は思っている)、「どぅるわかしー」。
田芋を潰し、カステラかまぼこや椎茸などの細かな具材と練り合わせたこの一椀が、かけがえのないたたずまいだ。田芋の濃厚な、甘やかな香りが、ほかの具材の個性と混ざり合って、地味な見た目ながらも本当に豊饒な味の世界を現出させている。
僕をこの店に誘った川端タクも「これが一番好きだなー」と言っていた。うなずける。
ちなみに彩香さんの店にある器はどれもすばらしいのだけど、一番好きなのがこのどぅるわかしーを入れる朱塗りの椀だ。
ゴーヤの白和え。
ここにも余分なうま味の添加はゼロ。実にミニマルな味の世界だ。
そうか、彩香さんはミニマリストなのか、、、それにしてはあまりに福々しい。
彩香さんの味噌仕立てのらふてー。
「らふてぃー、って書いてあるのは間違いだからね!」
と教えてもらって以来きをつけてみているが、けっこうラフティーと書いているところが散見される。彩香さんはこうした言葉の使い方には非常に敏感だ。
味噌には胡麻とピーナツが擦り込まれている。脂を落とした豚肉よりもこの味噌の方がコクがあり、そのせいで肉がさっぱりあっさりしている印象になるのが不思議だ。
このラフテーに添えられている青菜がオオタニワタリ。
先がクルンと巻いて愛嬌のある見た目。
これ、彩香さんのご自宅から朝摘んできたものだそうだ。ありがたし!
オオタニワタリについては彩香さん自身の著書「てぃーあんだ」でも触れられているが、沖縄タイムズ社のWebでもみることができるぞ。
<1997年6月19日 夕刊 5面>
てぃーあんだ〈22〉
庭に植えておくと重宝
オオタニワタリの酢の物
http://www.okinawatimes.co.jp/aji/tea970619.html
季節の白イカのとうふよう和え。
イカの身はとうふようの本体を崩したもので和え、その上からとうふよう漬け込み用のタレをかけている。イカのウニ和えをもっと濃厚に強烈にしたような印象。それにしても白イカの蠱惑的な食感がいい。
いつもながらの安定した味、じーまーみ豆腐。
そして締めのご飯はとんふぁん。
これに熱い出汁をかけて、、、
ふたをして、ちょっと蒸らしてからいただく。
出汁の表面にちりじりに玉になる脂が綺麗だ。
デザートはこれもド定番のタピオカと黒蜜。
タピオカは昔から琉球料理に使われていたのだそうだ。
「あんたたちがくるからさ、ドラゴンフルーツとパッションフルーツの寒天よせ、造ってるのよ」
と、上品な一皿もいただいた。
お気づきだろうか、数年前から僕が書いている沖縄関連エントリ全部で、彩香さんの料理の組み立てが全く同じなのである。基本的にこのコース内容は変わらない。
昔、韓国の伝統的な打楽器を用いた「サムルノリ」という音楽集団が居て、僕は彼らの芸能が大好きだった。その彼らのステージの演目は、いつもいつも、どんなライブでも同じ演目を一から四つくらいまで演奏していた。ある日、彼らのインタビューを読んだとき「僕らはあの演目しかやらない。それが決まり事だから」というようなことを書いてあったのを覚えている。全く同じ演目を毎回毎回やることで、その深みをどんどん追求していくという方向性があるということだろう。そういえばパット・メセニーのライブもいつも同じような演目だてである(笑)
ということでいつもと変わらぬ彩香さんの料理だった。このコースで8000円(飲み物別)はやはり安い。飛行機・ホテル代含めてもそう思うのだ。
これが、いろいろ波を越えてきた彩香さんの働く手だ。
「写真はずいぶん撮られてきたけど、手の写真は初めてよ」
と笑う彩香さん。
とにかく元気そうなので安心した!
そして女性陣は、果てしない着物談義へと突入していったのであった、、、
19時入店、帰りは0時でした。彩香さん、すばらしい時間をごちそうさまでした!
そしてまだまだ沖縄の楽しみは続いたのである。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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