木次乳業のプリンは滋味!

2007年9月 2日 from 食材


先週、アグリフードエキスポという、ビッグサイトで開催されているイベントに行った。全国の独立系産地団体が出店しているのだけど、知った顔がそこここに居て楽しい一時だった。そんな中に、木次乳業が出店していたのだ!
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木次乳業は、週刊アスキーの連載「旅三昧」で念願の取材を実現することができた、島根が誇る乳業メーカだ。酪農家が組織を作って乳業会社を立ち上げたという形なのだけど、その経営方針があまりに素晴らしい。日本では珍しいブラウンスイス種という乳用種を導入しての山地酪農を展開しているのだけど、以前このブラウンスイス種の肉を食べさせていただいたことを書いている。

■2006年09月15日 ブラウンスイス種の乳牛を食べる!http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2006/09/post_885.html

その木次の製品群の中で、僕がむちゃくちゃに気に入っているのがプリンだ。
エキスポのブースには、取材でお世話になったK女史がいらっしゃる。

「あら~ やまけんさん、何か欲しいものあったらあげますよ」

えええええええええええ
いいんすか?

どうやら販売してはいけないらしいが、試食はOKらしい。

「じゃ、じゃあプリンをぜひ!」

ということでちゃっかりプリンを一ついただきました。どうもありがとうございました、、、

蓋と本体に貼られたテープ部に「国産ビート糖カラメルソース」、そして「低温殺菌牛乳使用」と書いている。カラメルソースまで国産にこだわるあたり、納豆で採りあげさせてもらった登喜和食品の、納豆につけるタレまでこだわった姿勢に通じるものがある!

原材料をみても、ごくごく当たり前にプリンを作る際に使うものしか書かれていない。この部分を他のメーカのプリンと比べてみると驚くほどに違うはずだ。

このプリン、カラメルが別パックになっている。ビート糖というのは、北海道で生産されている「テンサイ」、別名砂糖大根、またはビートのことだ。砂糖の原料はさとうきびだけではなく、ビートも相当量使用されている。さとうきびは沖縄や鹿児島の離島など、日本の南部で生産されているが、ビートはそのほとんどが北海道で生産されている。現在調整が続いているオーストラリアとのFTAで、農産物の関税撤廃議論の目玉として挙げられている品目だ。もし砂糖原料の関税が撤廃されたら、ビートとさとうきびの農家は、一部を除いて廃業するしかなくなるだろう。

そんなことを僕が書いたって何もならないわけだけど、木次乳業は自社製品に使用しているところが素晴らしい。というか頭を下げるしかない。他より高いものを原料に使う勇気を持っているということだ。ちなみにこのカラメルソース、実にあっさりとした味。ちょっと焦げた香りのするような濃厚なカラメルが好きな人には向かないだろうが、僕には十分。

プリンの旨さは、僕が言葉を尽くしてもしょうがない。
クリームやなんやかやを添加していないから、へんな言い方かも知れないけど、美味しすぎない。小さい頃に母が作ってくれた、銀色の型に卵液を溶いて、オーブンで焼いて作ってくれたプリンの味に似ている。そういうものが製品として出ているのは非常に重要なことだと思う。

そういえばこの「美味しすぎない」については、木次乳業の創業者である佐藤忠吉さんが、本に書いていた気がする。

「うちの牛乳は濃厚な味じゃないし、美味しいってもんじゃないと思うよ。食べ物はそんなに美味しすぎなくていいと思うんだよ」

というような趣旨のことを語っておられたのを記憶しているんだけど、、、後で本棚を調べてみよう。
美味しくないというのはあまりに謙遜で、木次の牛乳は旨い。低温殺菌牛乳の先駆け的存在は伊達じゃないのだ。

そんなことを考えながらプリンを美味しくいただきました。