2007年8月28日 from 首都圏
たまには嫁さん孝行をしなければ、ということで、青山の「ブノワ」へ。ブノワはアラン・デュカスのグループの店で、パリの老舗ビストロとしてフランスで営業していた同店をデュカスグループで展開している店だ。ビストロとは言ってもれっきとしたレストラン。以前に潜入レポしたADF辻のケイ・コジマシェフも「ぜひ、いって味わってみてください」と、あの落ち着きすぎた口調で言ってくれたので安心してGo!である。
■ブノワ
東京都渋谷区神宮前5-51-8 ラ・ポルト青山 10F
tel 03-5468-0881
http://www.benoit-tokyo.com/
青山の国連大学横のタワーを上って、エントランスに入る。エレベータを下りたところにすでにサービスの人がいて、2階へ誘導してくれた。2階?そう、受付階はカフェスタイルのカジュアルなカウンターとテーブル数席だ。カジュアルフレンチというコンセプトはこちらなのかな。で、今回の予約テーブルはその上なのである。
レストラン階はきっちりとシック。男女のカップル、食事会的男二人女二人テーブル、男性サラリーマン団体客、外国人女性グループなどがシックに食事をしている。どこもシックに食事してるけど、男性サラリーマンの一群はゲラゲラ笑ったり非常にうるさし。まあ、いいか。
予約時に「写真とっていいですか?」と聴いたら、「ではあまり目立たない席にご案内しますね」とご配慮いただいた。ただ、その時にストロボを使っても大丈夫そうかを聞き忘れていたので、給仕さんに聴いたら「ストロボはちょっと難しいですね、、、」とのこと。了解、感度を上げてISO800で撮影しましょう。
いま観て驚いたんだけど、ブノワのWebには完全なメニューのPDFがある!こういうのって嬉しいネ。いつもきちんとメモしないから助かるぜ。
今は夏のメニューということでオードブル2品にメインディッシュ2品にデセール、コーヒーというコースでお願いすることにする。でも、嫁さんがスペシャリテとして掲載されている「海の幸のプラトー」お二人様5200円に目を留めて「これ美味しそう~」と言うので、食べてみることにする。要するに海の幸を蒸したり茹でたりしたものを、氷を載せた鉢で提供するという軽いシーフード前菜のようだ。ふうん、まあいいんじゃないの?という感じでお願いした。また、前菜メニューの中に旨そうなのがまだあったので、一皿追加。すると、、、
「んー ちょっと多すぎると思います」
と、フランス人の給仕さんであるザヴィエルさんからアドバイスが、、、
「うちの一皿のポーション、結構多いです。きっと食べきれません。」
と言うので、じゃあ食べ進みながら判断することにしましょう、ということになった。そんなに多いのか!?ワクワクドキドキである。ちなみにフレンチの一皿は、通常の定食屋でご飯を食べるのとは訳が違う。下ごしらえからキッチリと塩や油脂が使われているので、通常の満足感とは違う、心地よい疲労を伴う満腹さが得られる。だから、確かに頼みすぎだったかもなぁ、と思ったわけだ。
テーブルにセットされたアミューズ。
リエットかなと思ったが、肉の風味ではない。聴いてみたら「クルミのペースト」とのこと!
このクルミのペーストが実に実に、、、持って帰りたいくらいに美味しいものだった。植物性とも動物性ともつかない、ネットリ舌に拡がる油脂のうまみ。デュカスお得意のパリパリの薄パンにタップリ塗って食べる。至福なり。
さてアミューズに出てきたパンをかじりながら待っていると、スタッフの方がなんとこんな耳打ちをしてくださった!
「ストロボなのですが、店内では他のお客様にご迷惑なので、裏手の部屋で撮影していただけるようにいたしました。」
えええええええええええええええええ
いいんですかそんなこと!?
「はい、どうせなら綺麗に撮影していただきたいですし、、、 ヤマケンさんですよね? いつもブログ観てます。ぜひ、うちの料理を美味しそうに撮ってやって下さい!」
うわーお!
なんとこの方、ブノワの支配人さんであった!! 桑畑さんどうもありがとうございました。
食い倒れ日記、書いていてよかった、、、
こうして、運ばれてきた皿を一端、裏のスタッフルームにて撮影。そこからテーブルに戻って実食という、面倒なオペレーションを店に強いることになってしまった次第だ。本当に恐縮です。そのかわりきっちり撮影しましたよん。
■アミューズ トマトのロワイヤル
ロワイヤルは言ってみれば茶碗蒸し、、、だけど、このアミューズが実に気が利いていて旨かった!
濃いトマトの風味、まるい酸味、滑らかな口当たり、もったり舌に残る粒子。
最近の料理界ではトマトの水分をできる限り加熱脱水(ローストやコンフィ)するか、もしくはトマト水のように水分のみを抜いて透明な液体ソースとして使うことが多い。このロワイヤルも、入念に下ごしらえした上で卵などと合わせられているのだろうけど、これ、できればブランデーグラス一杯分くらい食べたい(笑)アミューズだ。
そして、くだんの「海の幸プラトー」が出てきた!
冷たくさっぱりした皿だから最初にでてくるのだそうだ。
ひえええええええええええええええええええ
こんなにスゴイものだとは思わなかった!
海老数種、ウニ、貝類数種が盛り合わされ、コライユ(海老のミソ)ソース、レモンマスタードソース、アイオリ、それにライ麦パンが添えられている。
けっこう、単なる海の幸の盛り合わせでしょ?と脱力してたのだけど、一つ一つの素材が個別に調理されていて、味わいが全く違う賑やかさだ。これは手間かかるでしょう、、、間違えてなければ9種の素材が使われて(ホタテ、トコブシ、アサリ、ツブ貝、ムール貝、海老三種、ウニ)いて、どれもその個性を引き出す味わいがある。これは予想外に嬉しかった。中でもレモンソースをかけて食べるさいまき海老がイイ。
いやー 前菜旨いと心が躍るね!
■ズワイガニのアスピック と 鴨のフォアグラ チェリーのマルムラード
ズワイガニのアスピックは、アミューズと重なるロワイヤル仕立てだけど、蟹の風味がきちんと伝わってくる作りで、印象はまったく重ならない。手前の鴨のフォアグラが実にネッチリと濃厚。小さくて十分な満足感を得ることができる。
■アボカドと小エビのカクテル & イトヨリのエスカベッシュ
うちの嫁さんが頼んだのはこちら。
この写真を観ていただくとわかるが、アボカドのタルタルと小エビの間にグレープフルーツを非常に薄く切ったものが挟まれている! この一枚のグレープフルーツの膜が絶妙な酸味とほろ苦み、そして香りを添加している。どちらかというともったりと鈍い印象のアボカドが、この酸味でにわかに切れのいいソースになるのだ。これは秀逸。
エスカベーシュに使われているイトヨリは生のものだった。エスカベーシュは揚げてあるものと思っていたけれどもそうではないらしい。酢漬けという意味なのでしょうか。
■エスカルゴ プチグリ種 クルトン添え
久しく食べていなかったエスカルゴ、これも実にナイス。そういえばフランス映画「クリクリのいた夏」で、主人公が貨物列車の荷台に乗せて貰って山へエスカルゴを獲りに行くシーンがあった。エスカルゴを入れる籠はどんなものだろうと思っていたのだけど、そこで初めて観た記憶がある。アレを観てから無性にエスカルゴを食べたくなったのだけど、ようやくありつけた。
ニンニクがタップリと効いたエスカルゴバターがフツフツと沸いている瞬間に、口の火傷を気にせず放り込むのが吉。絶品に旨い! 日本でこれなのだから、フランスで獲れたてを食べるともっと旨いのだろうか。うーむ やっぱり飯を食いに行きたいぜフランス。
■さつまシャモのドディーヌ ゼリー寄せ
ザヴィエル君が「多すぎますよ」と言って停めた肉料理だったけど、食べちゃう。
材料がシャモでも、特有の噛み応えはほぼ無力化され、柔らかく仕上がっている。
さてここからメインの皿。
■甲殻類と貝類のソテー フヌイユの芯のフォンダン ブイヤベースのスュック
こちらは嫁さんが頼んだもの。
非常にきちんと味が揃った印象だが、前菜があんなにさっぱりと美味しい魚介だとは予想できてなかったので、その印象にとらわれて今ひとつ満足できなかったみたいである。でも、少し分けて貰ったのを食べたが、十分に美味しいできばえだと思ったゾ。
■子牛のリード・ヴォー ニンジンのミジョテ 酸味の効いたジュ
胸腺肉リード・ヴォーは僕の大好物だ。フォンの旨みと酸の効いたソースでこっくりした味。俺はこれをご飯に載せて掻っ込みたいね、、、
そして、やっぱり頼んでしまいましたもうひと皿。
■仔羊のキャノン ア・ラ・ブロッシュ エスカルゴバターでリエした野菜
ブロッシュは串焼きの意味なので、中央にある胡椒で飾りをつけているあたりに串が刺されていたのだろう。フレンチラックを凧糸で巻いて焼くんだろうか。これがデュカス流儀だと思うのは、形がビシッと決まって崩れないことだ。見た目の完成度も含めてデュカスなんだろう。
わかりにくいと思うが、ラックの背の脂の部分の切りそろえ方がまたビシッとしていたのだ。写真だとわからないな、残念。そういう、見た目と機能性のバランスがとれているのが、デュカスっぽい。精密機械のように、けれども熱く包丁を入れていたコジマシェフを思い出す。
ちなみにこのブノワのシェフはマッシモというイタリア人だそうだ。ぜんぜんイタリアンぽくない!
■デセール 沖縄産 エキゾチックフルーツ ソルベ パッションフルーツ/グァバ
■パリブレストとアイスクリーム
いやーーーーーー
食った食った!盛大に食った!
「おおぅ、、、本当に全部食べましたネ、、、」
とザヴィエル君が笑う。ふふふ 日本人も沢山食べる人、いるのよ!
それにしても大満足。なんといっても小部屋を使わせていただいて、ストロボを使った写真を撮らせてくれたことが嬉しい。お店への御礼の意味も含め、全料理掲載しました。肩の凝らないカジュアルフレンチはカフェ階で、レストラン階ではきっちりシックに楽しむことが出来る。2ヶ月に一回はこういう店で自分に緊張感をつけないといかんな、と実感したのであった。
ブノワさん、写真撮らせていただきまして、本当にありがとうございました!
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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