2007年8月14日 from 出張
週刊アスキーの誌面を見ていただいた人もいると思うが、関西・大阪食い倒れ編に突入している。いままであまり大阪には馴染みがなかったので、一から勉強と思いつつ、食べ歩きをし、書いている。そこでとにかく思うのは、いい店だなぁ、と思って店主さんに尋ねると、たいがい「辻調理学校の出身です」という答えが返ってくることだ。
東京ではエコール辻 国立校という学校があって、フレンチ、イタリアン、日本料理、そして製菓のコースがあるわけだが、本場・大阪の規模はものすごい。今回取材で伺ってきたのだけど、かなり圧倒されてしまった。
キャンパスは、辻グループ校(いくつかコースがあるのでそう呼称するらしい)というくくりで4-5棟くらいあるのだけど、それが阿倍野界隈に集中している。本校のビルは写真をごらんの通り極めて現代的な建物で格好いい!
教室は40人定員で、当然ほぼすべてにキッチンが完備している環境だ。
実技のクラスでは当たり前のように、全員が料理実習に取り組む。絞り袋を持つ生徒に加減を教えている先生。どのクラスでも、指導する先生の熱意がダイレクトに伝わってくる!
生徒の年齢層は幅広く、一度社会人になった人も入ることがあるらしいが、それでもメインは高校を卒業後に料理人を志して入ってくる子達だ。だから、実はまだイタリアンやフレンチの高級店に自分で行ったことがあまりない人が多い。そう言う子達がこの学校で初めてレストランの料理と出会い、造っていくというのはなかなか大変だろうなぁ、とも思う。
しかし、講義はむちゃくちゃ面白い!
フレンチのクラスを見学させていただきながら、思わず「俺も入学したい、、、」となかば本気で思ってしまった。調理師免許を取得することが出来る調理学校のコースでは、衛生のクラスなどの座学も多いのだけど、免許の取得はないけれども、その分毎日実技に当てるというエコール辻というコースでは、とにかく実技実技、実技の繰り返しになる。フレンチ・イタリアン、日本料理、中華、製菓と極めて実践的なのだ。
製パンのクラスを覗いたが、本気で「ここはパン屋か!?」と思った。
うーむ まさに料理の虎の穴、といっていいだろう。
「やまけんさん、この1年制の調理学校を出た後、さらに技術を高めたい人が進む、いわば大学院課程のようなものがあるんですよ。技術研究所、略称「技研」と言います。そこで昼食をいただきましょう。」
と、広報部の松本しのぶさんが連れて行ってくれた技研とは、徹底して現場感を養うための環境だ。
クラスでは毎日、調理班とサービス班、そして試食(客)班に分かれ、毎日交代で造り・サーブし・食べる。客に回った生徒は味やサービスをきっちりと評価するという次第だ。
フレンチ・イタリアン、日本料理、中華のクラスがあり、それぞれの階に調理場と、店舗を模した実食スペースがある。例えばこちらは日本料理の「店舗」スペース。
これが本日の品書き。もうきっちりとしたコースである。
こっちが調理場。オーダーが入ってきてから分担で造る。まさに店の動きそのものである。
「もちろん、実際に就職した先の店の流儀が違うことが多いんで、100%そのまま実践というわけではありませんが」
と先生方が恐縮されていたが、カメラを構えて入っていった僕たちに対するビシッとした挨拶といい、体育会的な礼儀作法もきちんと行き渡っていた。
で、昼食はイタリアンをいただいたのだが、、、
そこいらへんのトラットリアで食べるコースよりも美味しいでないの!
フォアグラのテリーヌの前菜
リゾット・ペスカトーレ
仔羊の煮込みポルチーニのソース
この後にドルチェとコーヒー、プティフルールまでサーブされる。隣に座った生徒さんが、
「毎日こういうものを食べるので、夜は日本食が恋しくなります」と言っていたのが笑った!
けれども、彼らは入校後すぐさま就職活動を始める。彼も関西の有名イタリアンに入店が決まっていた。1年は短い。授業で料理をして、夜は有名店を食べ歩く毎日だそうだ。
いやー 圧倒された!
俺、本当にこの学校に通いたくなってしまった。
大阪に仕事ないかなぁ、、、
さて夜は、辻調理学校の卒業生の営む、気鋭の創作おでん屋さん「わか芽」へ。
アテンドしてくださったのは同校の重鎮・肥田先生(右側)だ。
「ここはねぇ、なかなか気の利いたおでんを出してくるんですよ。素材によって煮汁や火加減を変えてくるので、面白いですよ!」
というお言葉通り、おでんという枠ではおさまらない旨いもん屋であった。
夏だから、ハモからスタート。
何の変哲もないナスの揚げ浸しが、トロッとしていて旨い!
豚肉と水菜のハリハリ
こいつが驚いた。なんと「レタスのおでん」。
火を通したレタスが旨いのは中華などで周知の通りだが、黒胡椒の利いた薄味の出汁で火を通されたレタスの、ほのかな苦みとシャクリとした歯触りが堪らなくイイ! 本日最大のサプライズ皿。
これが定番だという、トマトのおでん。
おそらく中に丸が入っているのだろうなぁ、と思ったらやっぱり。
気が利いている、としか言いようがない!店も満杯で、それほど立地がいいわけではないのに客が入れ替わり立ち替わり入る。「いつもこんなじゃ無いんですけどねぇ」と先生が仰るが、ものすごい混みようだった。
飲みながら肥田先生が仰った言葉が心に残っている。
「もっとねえ、もっと、、、教えられると思うんですよ! 学校を卒業して入店したら、即、すごい働きができる子達を、もっと輩出できるはずなんです。それは授業の力でできるはずなんです。それをどうしたら実現できるか、、、そんなことを考える毎日なんです。」
辻グループ校は、とにかく先生が熱いのだ!
その熱さに当てられた一日だった。
うーむ 本当に一年ここで学びたいと思うけど、身体が幾つあっても足りない。残念だ、、、
辻グループ校の皆さん、大変にお邪魔してしまいました。そして美味しい食事をごちそうさまでした!
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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