2007年7月12日 from 食材
ドイツ人の友達Wolfgangから、「きっとケンジは喜んでくれるだろう」とプレゼントされたものは、僕が10数年ぶりに出会う味だった!
瓶詰めのドイツソーセージ。瓶に入っていて、通常のソーセージのようにケーシングで包まれ一本一本になっているわけではないのだけど、「Wurst」と書いてあるから、ソーセージと言ってよいのだろうと思う。白いのはレバーソーセージ。そして赤いのは、、、豚の血のソーセージである!
いやー これを食べたくて食べたくて、ここ10年ほどいろんなソーセージ工房を廻っていたのである。
血のソーセージは、豚をと畜する時に採取した血に、背脂や舌や皮などの部位の角切りと各種スパイスを混ぜ込み、豚の胃袋などに詰めて固めるものだ。
豚の血のソーセージというと、多くの日本人が「うぇえええ」という顔をする。しかし、これほどに旨いものもないんじゃないか、というくらいに美味しいものだ。もちろんゲテモノぽい味は皆無。みな、血のソーセージと聴かなければ、コクがあってネットリした、レバーの入ったソーセージ?と思うような味である。しかも、プチプチと入っている皮部の角切り部分が歯応えよく、また美味なのである。
僕がこのソーセージに出会ったのは大学にいた頃のことだ。
僕の通う大学キャンパスは神奈川県藤沢市にあったのだが、その隣町に日大農獣医学部(現在は生物資源科学部)があり、知己を得て畜産関連の研究室によく遊びに行かせていただいていた。ある時、教授が「山本君、藤沢からすぐ近くの養豚業者さんの娘さんにインターネットを教えてあげてくれないか?」といわれ、いいバイトになるなぁ、と家庭教師を引き受けたのだ。
その養豚業者さんというのが、実に日本の養豚業界を代表するところだったのである。神奈川で昔飼われていた高座豚という、中ヨークシャー種をブランドに掲げる、大規模な養豚場を持つところだった。しかもその豚をハム・ソーセージに加工直売する設備までもったところだったのだ。そこに週一回、インターネットってどういうものですということを教えにいった。もちろん、まだダイアルアップ接続の頃だ。
帰り際になると、「ソーセージもってく?」と、ぎっしりとソーセージ類をいただいた。高座豚のソーセージやハム、ベーコン。思えば本当に贅沢な学生時代だった、、、
その中にあるとき、血のソーセージがあったのだ。「うお、これが血のソーセージか!」とおっかなびっくり口にしたのだが、、、ケーシングを外してパンにのせ(そういえばその頃僕は自分でパンを焼いていたのだった!)て少しオーブンで炙って食べる。熱ですこし、凝固した血がトロリとしたところをかぶりつくと、コクのある血の風味と、皮や背脂の触感があいまって実に美味しい! 少しも下品な味がしない、むしろ上品なのに味が濃いという、なんともいえない印象を持ったのだ。
ビックリして、その業者さんに「あれ、いつもあるんですか?」と尋ねたが、「いやー あまり売れないからごくたまにしか作らないんだよ。あれが気に入るとはなぁ~」と笑われた。以後、血のソーセージをそこでみかけることはなかった。幻の一回限りのソーセージだったのである。ドイツに行ったこともないし、日本国内のハム・ソーセージ業者さんのところにいくと必ず「ないんですか?」と聴くのだが、どこにいっても「売れないんですよ」と言われるばかりだった。
そう言うわけで10年ぶりに食べた血のソーセージ、素晴らしい味です。ドイツパンと合わせなきゃ、と思って、プンパーニッケルとライ麦50%のパンを買って愉しむ。ニュルンベルグ出身のWolfgangが、「僕らの国では、ザウアークラウトとマッシュしたポテトといっしょに食べるよ。でもね、正直言うと僕は血のソーセージは好きじゃないよ!(笑)」と言う。ザウアークラウトは日本では缶詰しか手に入らないのでパスして、ジャガイモのマッシュとともにいただいた。レバーソーセージももちろん美味しいけれども、やっぱり血のソーセージが旨い。ドイツではRotwurstと言うらしい。感動です。Wolfgangに感謝。
もし誰か、日本国内のハム・ソーセージ職人さんで、血のソーセージを造っているところ知ってたら教えてください!
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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