2007年1月 9日 from 出張
天気予報では大荒れになると言っていたにもかかわらず、夜の予報ではいきなり「晴れる」と変わっていたこの日曜日。三浦半島にて大根をめぐる一日となった。
3日のエントリに書いたように、料理人向けの食材研究会として、大根の食べ比べ企画を実施する。在来品種として数種の大根を用いるわけだけど、関東が誇る三浦大根は外すことができない。通常は年内に食べるのがいいのだけど、今回の会が開催される1月18日には供することができそうだ。
三浦大根には4つくらいの系統があるのだけど、今回は中でも品質がバツグンに安定している黒崎三浦という品種を使う。
写真の三浦大根の生産農家は、ご存じ長島農園の長島勝美君だ。一般的な三浦の中ぶくら型どころか、弾丸のように先頭部が大きい、なかなか引抜くことが難しい大根だ。
勝美君がこの写真で持っているのは、僕の愛機と同じウィルコムのW-ZERO3(初代機)だ。実は彼のところは個人農家であるため、農薬使用歴を記録するためのシステムを持っていない。これを、W-ZERO3を使って栽培履歴管理サーバに接続し、情報記録をするという実験を一緒に行っているのだ。これについてはいずれ詳しく書こうと思う。それにしても彼は、圃場でW-ZERO3を使っている農業者の何人目だろうか?なかなか様になっている。最も、長島農園の農薬使用量は極めて微量なので、「いちいち記録するほうが逆に手間がかかるよ」というのが彼の苦労だ。
さて、
今回の会で出荷して貰う三浦大根と青首大根、そして漬物用の理想大根の三種は、長島農園から三浦の突端へ20分ほど向かったところにある高梨農園で栽培して貰っている。今日は栽培環境の撮影のために来たのである。
高梨農場は、長島君と同じように年間100種以上の野菜品種を栽培する、三浦では極めて珍しい農家だ。しかも全量を自宅脇の直売所で売りさばいてしまうという強者。扱う野菜は本当に珍しいものが多く、僕も最後のたのみは高梨さんというケースがおおいのだ。
理想型大根は、タクワン用品種。古来、日本における大根の主用途は漬物、つまり沢山だった。だから大根における「理想」とはタクワンに向くこと。タクワンに向く品種というためには、太すぎないスリムな円筒形で、干したときに一律に水分が抜けるように全体に均一な太さを保っていることが重要だ。理想型大根はこのようにスゥッと細く長く伸びているのである。
味や食感は、極めて特徴的だ。青首大根と比べて数倍の「ザクザク感」があり、繊維が非常に堅い。だからタクワンにしても歯切れがよいのだ。しかしこの理想型大根、漬物だけではなく加熱しても中々に美味しい。それを味わって貰うのが今回の食材研究会の一つの楽しみでもある。
それ以外にも、高梨農園には多様な大根が植えられている。
写真は、左の黒いのが、皮がコルク質で黒くなっている「黒丸」、中国系品種で甘い味のする「青長」、辛み大根の「辛(しん)のすけ」、北京ダックの付け合わせに出てくる中国系品種「紅芯大根」だ。これは高梨さんの作付けするごく一部。まだまだ大根品種は沢山あるのだ。
「マイナーな品種は楽しいけど、お客さんがあまり買ってくれないから困るんですよねぇ。お客さんにはもっと冒険して欲しいですよね。」
ごもっとも。いろんな品種の差をもっと消費者に味わって欲しいものだ。品種が違えば全く味わいも楽しみも違うのだから。
三浦の台地は、関東とは思えないだだっぴろい黒ボク土のひろがりから、海やその向こうの富士山がみえる、絶景ロケーションだ。この時期の三浦は、見渡す限りの大根とキャベツ畑。晴れた日は本当に映画のような世界が拡がっている。
さてこの三浦大根、何日で食べきるだろうか。とりあえず半分は昆布と塩ともに茹でておく。しばらくはふろふき大根の日々が続きそうだ。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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