2006年12月12日 from 首都圏
「やまけんさん、ぼんぼりの方で、駿河若シャモを使った新しい料理を出すんですよ。」
と、東京バルバリとぼんぼりグループのオーナーである小林さんが言う。最近、事務所から徒歩数分ということもあって、東京バルバリにしか足が向いていなかったのだけど、駿河シャモに特化した料理をすると言うことならかなり興味がある。
「駿河シャモ」は、これまで僕のブログでは「駿河若シャモ」と呼ばれてきた、静岡県の中小家畜試験場が育種してきた鶏だ。先日の富士宮オフ会でもみなが舌鼓をうった、これから大きく羽ばたくであろう新しい地鶏品種である。その名前から「若」をとって「駿河シャモ」となり、しばらくしたらJAS規格の地鶏へ申請をする運びとなっているそうだ。そう、この国では地鶏と名乗るにはJAS規格をとらなければならないのである。そのためには、血統、飼育密度(1平米に何羽まで、と決まっている)、そして飼育日数70日以上というように、ブロイラーの飼い方とは全く違う体系にしなければならない。ブロイラーの倍以上の長い期間を育て、その間の餌代がかかるわけだから、高くなって当然なのである。
その駿河シャモ料理ってなんなのか。
「鶏しゃぶなんですよ!」
うーーーーーーーーーーむ
しゃぶしゃぶかぁ、、、
実は僕は、駿河シャモは炭火での塩焼きに限ると思ってきた。身肉に旨みがたっぷり含まれている駿河シャモ、塩をして焼くだけで何も要らない旨さなのだ。しかし、煮るとなんだか、その旨みがくどくなる感じで、食感の強さと相まって今ひとつ、と感じていた。
「ええ、ぶつ切りで茹でるとそうかも知れないんですけどね、ちょっと違う方式にしてあるんですよ。ルイベ状に完全凍結しない程度に冷やして、スライサーで極薄に切るんです。そうすると極薄なんで、サッと火が通ってちょうどいい食感と美味さなんですよ。」
おお、なるほど!
「しかもですね。しゃぶしゃぶした駿河シャモの身を、飯尾醸造の富士酢のポン酢でいただくんですよ!これが最高なんです!」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
まじですか?原価大丈夫?
もうお馴染みの「富士酢」の醸造元である飯尾醸造が出しているポン酢は絶品である。これを使うなんて、自家製のポン酢を使うよりも豪勢なんじゃないのか?
ということで、試作段階の鶏しゃぶをいただきにあがったのである。
しかも今回は、東京バルバリで友達になったミュージシャンのTINGARA(ティンガラ)の石島さんとつぐみさんともご一緒である。
キーボードの石島さん(右)はずっと前から僕のブログを読んでくださっていたそうで、バルバリで小林さんから紹介して貰ったときには、ぶんぐらぶんぐらと握手をされた。京橋にギャラリーも持っているというやり手音楽家なのである。PODCASTもしているので、関心があれば聴いてみてください。かなり癒されます。
■TINGARA
http://www.tingara.com/profile/
「じゃー食いましょう!」
ということで小林さんの発案、薄切り駿河シャモしゃぶしゃぶである。
たしかにルイベ状の肉をスライスした駿河シャモは、実に薄造り風のテクスチャだ!
昆布だしにしゃぶしゃぶと軽くそよがせてから、飯尾醸造のゆずぽん酢につけていただく。
ふんわり軟らかく火の入った駿河シャモの肉は、焼いたときの食感とは大きく違って軟らかい!
しかし、ブロイラーのようなブワブワとした膨満な柔らかさではない。しっとり絹のような質感を保ったうえでの柔らかさだ!
しかもその肉に旨みが湛えられているのに相乗して、飯尾醸造のゆずポン酢が効く!
これは反則である。だってこのゆずポン酢を使えばなんだって美味しくなるんだもん。それに駿河シャモを掛け合わせるのは、かなりTooMuchである。しかし、当然ながらむちゃくちゃに旨い。
「旨いッスよぉおおおおお、旨い!このやり方はそりゃあ旨くなりますよぉ!」
「むふっ そうでしょ?旨いんですよねぇ、、、僕も試作してて、にんまりしちゃったんですよ、、、」
ちなみに貴重なキンカン(まだ生まれていない段階の卵と卵管)も具として食べることが出来る。
これがまた絶品! 卵管の部分も全く臭みがない。あたりまえか。駿河シャモは内臓こそがまた旨いのである。レバーやハツも、しゃぶしゃぶだと余計な手が加わらないのでしっかりその風味の美しさを味わうことが出来る。
ちなみにこの日はぼんぼりの地下にストロボを持ち込んだはいいけど、光を拡散させるアンブレラを持ってくるのを忘れ、ちょっと光が強めに当たってしまったので、あまり美しく撮れてないのはご勘弁。
石島さんと小林さんは、仲のいい兄弟分といった感じ。実は石島さんの方が年上というのはちと信じられない感じだが、、、(笑)
「今回、厨房に新しく和食の経験のある料理長がやってきたので、こういうことができたんですよ」
と小林さんが言うように、実はこのぼんぼり日本橋店の店長は数回変遷している。僕が通っていた時期は山下君という北イタリア料理出身のシェフだったのだが、今回は”和”である。かなりイイ線いっているんじゃないだろうか。
(向かって右が料理長さんです。)
創作系の和食一品料理も中々に旨い。
そんな中、どんぶり飯メニューの創作に関しては異様に素晴らしい感性を持つ小林さんが、また新たなメニューを考案していた!
「やまけんさん。黄身飯(きみめし)っての食べませんか? これ、旨いですよぉ、、、」
「まずその黄身の味噌漬けをご飯に載せていただいて、、、」
「黄身を割ってご飯にまぶしちゃってください」
「で、別皿の肉そぼろを混ぜて、、、」
「あとは掻っ込んでください!」
ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
これは旨い!
黄身のネットリした油分とひしお系の香り、そぼろで足された肉系の旨さとご飯が一体となって、無茶旨である! すぐさまお代わりをしてしまった!
小林さんのつくるドンブリは、以前に東京バルバリがまだぼんぼり京橋店だったころ、旨油ご飯という絶品で悶絶したことがあったが、アレをまた上品にした感じである。
いや満足。
駿河シャモのしゃぶしゃぶが2000円台。それに〆でこの黄身飯を食べるというのが、実に最高なコースではないか。この日は完全に小林さんにご馳走になってしまったのだけど、旨かったからここまで書く。駿河シャモ料理を都内で食べられる貴重な店であるぼんぼり日本橋本店、このしゃぶしゃぶ料理で隙が無くなった! まだ駿河シャモを食べていないという人にはぜひお勧めしたい。
日本橋ぼんぼり本店
03-3664-2777
東京都中央区日本橋蛎殻町1-5-1 オイスター1-5ビル1F
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
本サイトの著作権はやまけんが保持します。出版物・放送等に掲載される場合はご連絡を下さい。トラックバックはご自由に。