2006年11月28日 from お取り寄せ
以前のエントリで、山形県朝日町という、東北の無袋リンゴ生産技術発祥の地を紹介したことを覚えているだろうか。あの、衝撃的に蜜がみっちり詰まったリンゴの断面をみて驚いた人も多いはずだ。現に、いつもお付き合いしているネット販売ショップから「あれ、売れないの?」とすぐに問い合わせが来たものだ。そんなにいきなり販売するわけにはいかないので昨年はネットの俎上には乗らなかったのだけど、今年は満を持して、この山形県朝日町のリンゴを販売するお手伝いをすることができた。
まあどんな会のある白鷹町のすぐとなりに、朝日町がある。街道から一本、丘を登っていくと、「和合平」という高台に出る。この一帯が、周りの人も「あそこのリンゴは旨い」という地域なのだ。
そして、その中でもひときわ旨いと言う評判のリンゴ畑がある。
ここがその鈴木果樹園。広大な園地には数種類のリンゴ品種が植えられている。
生産者は、この若きリンゴ農家である鈴木光輝(こうき)クンである。
ちょっと悪そうなイケメンの光輝君、なんと山形市内のバリバリの企業に勤めながら、「俺は都会の暮らしはイヤだ」とさっさとUターンしてきてしまったという。しかも嫁さん連れて。すでに男の子2人を授かっているという、実に素晴らしき若生産者なのである!
「やまけんさん、フジはまだ収穫期じゃないんですけど、いま出荷されている北斗という品種がこいつです。」
と割ってくれたのをみて驚愕!
なんじゃこの蜜は!!!!!!!!!!!
ちなみに前も書いたけど、リンゴの蜜とは正確には蜜ではない。ソルビトールという物質で、光合成された養分として実に集まってくるのだ。しかし、完熟期になるとエネルギーであるソルビトールを使い切れず、細胞壁の間に染み出てしまう。これが蜜の正体なのだ。だから蜜の部分を囓っても甘さは感じない。しかし、蜜が大量に溢れているということは、間違いなく完熟しているというバロメータになる。つまり旨いのである!
「まだ収穫期じゃないけど、フジがどんなになってるかみてみますか?」
と言って光輝君がフジの樹から無造作に実をもいで、割ってくれる。
「いま、こんな感じです」
もうすでに蜜が入ってるじゃん!
ちなみにこの写真を撮ったのは実は11月3日のことだ。従って現在の時点ではもうピークといえるくらいに蜜がはいって甘くなっているはずなのである。
「まあ立ち話もなんだし、お茶にしましょう!」
と園地で働く人たちが集まり、お茶となった。りんご果樹園では、家族労働が基本ではあるが、収穫のこの時期には外から人に手伝いに来て貰うのが普通だ。
さきほどの北斗という品種が、また実に旨い!
「パキン」という感じの、ちょっと強い食感で実がはぜた後、シュワッと爽やかに甘い果汁が口中に炸裂する!
「いやーこいつは旨いぜ!フジもこんな風になるのかな!?」
「そうですね、理想的にはこんな感じの蜜入りになってるはずです。」
おおっ こいつはほとんど蜜ばっかりである!
昨年、鈴木果樹園のフジが旨いと思ったのは、食感にポイントがある。甘さはだいたいどこで食べても一緒だったのだが、食感の微妙な差異があり、パキっとつよい細胞壁の食感があるのだ。それは堅いというのではない、強いとしか形容できない食感で、実に快楽。
このフジりんごを、ネットでの販売では通常の出荷(市場にはあまり出て行かない)荷物よりも厳格に選果する。大玉といわれている規格より少し小さめの、40玉サイズという規格だ。実はこのクラスのリンゴが、味が乗っていて旨いということなのである。
まあとにかく
こればかりは食べてみないと始まらないだろう。お歳暮にまだ商品を決めてない人は、こいつを選んで損はないと思う。
これが鈴木一家だ!極めて陽性の人たちが、にこにこ笑いながらリンゴを育てている。なんか、いい写真がとれたなぁと思ってしまった。
ちなみに僕はこのネット販売で、一箱あたり150円だけ手数料をいただくことにしている(←金額間違えてたので修正 2:12)。販売数の上限は300ケースなので、売り切れたとしても4万5千円にしかなりませぬ。山形への取材往復費用と宿泊費で終了(笑)。でもそれでいいのだ。和合平のリンゴは旨い。また、光輝君のような若い生産者がこうした新しい試みに呼応してくれなければ、日本の農業はますます元気が無くなるだろう。だから単純に応援したいのだ。
■こんな林檎を食べたことがあるか!?山形県朝日町の蜜たっぷり完熟林檎を食べてみよう
http://store.yahoo.co.jp/organic/wg0609.html
ということで、ちょっと高いぜこのリンゴ。けど、誰かに食べさせてあげたいと思う人は買ってあげてください。絶対に旨いと思いますです。
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