大分の県南・佐伯市~蒲江の海の幸を味わい尽くす! ここにはまた独自の魚文化があった! その1

2006年10月13日 from 出張


大分県の県職員で農業担当をしていた奈良さんから「講演に来てください!」というご依頼をいただいた。この時期の大分にいけるのは小躍りものだ!なんて言ったって魚介王国、そしてツマもの王国の大分の秋だから、旨いものがてんこ盛りなのである。

大分は偉大なるツマもの王国である

と僕に言ったのは、大分出身で某大手スーパーの青果担当をしているニノミヤ君だ。ツマものとは刺身のツマなどに使われる植物一般だが、小ネギや大葉、カボスなど薬味系のものが多々出荷されている。たしかにツマもの王国だ。

しかしそれだけではない。大分は大いなる海産物王国でもある。先回、臼杵市に行ったときにはふぐ三昧だったが、豊後水道は鰺、鯖などの青魚や、平目などの白身も充実している。今回は会場が海っぺりということで、ムチャクチャ楽しみな気分で臨んだのである。

大分空港から市内まで、おそらく日本でも珍しいホバークラフトで行くことが出来る。ちなみにバスだと約一時間のところを25分で移動可能。初めて乗ったが、驚いたことに発着場は陸である。車輪がない
船そのものの見た目のホバークラフトがコンクリート敷きの発着場にあるのはすごく不思議だ。

意外なことに、PHSデータ通信カードの電波がかなり長いこと通じる。沿岸近くを走っているからか、おかげでずっと東京での仕事を処理することが出来た。ホバーの駅に着くと、会場である佐伯市の農林水産課の担当者さんが待ってくださっている。農林水産関連だと、必ずみてそれとわかる作業着を着ていることが多いので、すぐにわかるのだ。

車で20分ほどすると、山間の道を通り出す。

「大分は海の県といいますが、道はほとんどが山なんですよ」

というが、本当にそうだ!
大分県は平地が少ないいため、農業にとっては非常に条件の厳しいところだ。山間部で植えることが出来るのは果樹がおおいため、みかんやカボスといった柑橘農家が多い。

条件のいい平地にはハウスなどが密集して、様々な品目が栽培されているのだけど、総量としてはそれほど大規模とはいえない。だから、量で勝負するような品目には向いていない県なのだ。

さてホバーの発着所から1時間少しかかって佐伯市に到着。

「今日のお昼なんですが、うどんと鰺寿司を食べていただきます」

おおおっ
その組み合わせ、何かあるな?
ワクワクしながら車を降りる。ここは、「佐伯市の繁華街ですね」という地域で、確かに飲食店が密集している。


店にはいると、カウンターに人がすでに満員である。

「はいよっ 座敷にどうぞ!」

と威勢のいいご主人。

「やまけんさんここはですねぇ、ごまだしうどんと鰺寿司っていうのが名物なんですよ。ごまだしうどんというのはですね、普通のうどんと違って、ごま味噌をうどんとお湯にのせて、お好みでそれを湯に溶いて食べるというものなんですね。」

ほおおおおおおおおおおお

「で、そのごま味噌というのは、かまぼこの原料になるエソという魚を焼いたのをすり鉢ですりつぶして、ごまと味噌を混ぜて焼いたものなんです。」

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
それはもしや!
宮崎県の冷や汁の素となる冷や汁味噌の造り方と酷似しているではないか!
冷や汁の味噌も、アジや煮干しなどの魚を焼いた身をすり鉢であたってごまと味噌を混ぜ、すり鉢の底に均等になでつけたのを、コンロのうえに逆さにひっくり返して焼いたものだ。これを水でのばし、具材をいれて冷や汁にするのである。

「へぇええ 宮崎ではそういう食べ物があるんですか。」

なぬっ お隣の県なのにご存じない?
いや 九州では食文化の差異がまだ色濃く残っているということか。
それにしても興味津々である。

ごまだしうどんと鰺寿司のセットで740円は安いような気がする。当然僕は大盛りをお願いする。店が混んでいるので少し待ったが、待った甲斐があったのだ!

「はい、お待たせしましたぁ~」

ぬごおおおおおおおおおおおおおおお
こいつぁ旨そうである!
試しにごま味噌を溶かないままに汁をすすってみると、少し出汁の味がする。「お湯」とおっしゃっていたが、料理やでは出汁を張っているのではないだろうか。しかし味はついていない。これにごま味噌を溶き混んでいく。

一口出汁をすすってみると、、、
旨い!
エソの身をすりつぶした、魚の味とごま、味噌の香りが一体となって、それが淡泊な出汁の旨みに合わさり、いきなりソロピアノが五重奏になったような立体的な味になるのだ!

うどんは、九州に多い柔らかめのふかふかのうどんで、これがまたごま味噌味に合う。讃岐うどんの腰ブリンブリンの食感ももちろん旨いけど、柔らかめのうどんもこれまた捨てがたい。

ごま味噌を全体に溶き、うどんに絡めてすすりこむ。いや、これは非常に美味しい。こんなうどんがあったとは、まだまだ日本の食文化は奥が深いと嘆息してしまう。

「はい、遅くなりましたけど、鰺寿司です」

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
これまた超・美麗な寿司である!
一目見て、「釣り鰺」であることがわかる。
鰺は、網で一網打尽にとったものより、釣った鰺の方が断然旨い。それは身が崩れていないからだ。釣り鰺の身と網で獲った鰺を食べ比べると、もう絶望的に味が違う。釣り鰺はビロードのような食感なのだ。甘めの地醤油につけて口に放り込むと、釣り鰺のキュルッと歯が肉に食い込む食感が素晴らしい。シャリも爽やかな甘めで好感。

「す、素晴らしいですねぇ、、、おかわりして佳いですか?」

時間はタップリあると言うことでおすしお代わり。非常に気に入りました。

「このくらいの大きさの鰺を、”ぜんごの鰺”っていうんです。寿司にするには一番美味しい大きさなんですね」

ふぅむ、と思っていたら、ご主人が板場で「あのね、釣り鰺1ケース持ってきて!」と仕入業者さんに電話している。やはり釣り鰺なのであった。

「ごま味噌は持ち帰りようの瓶詰めがありますよ。」

まじですか?
当然買い求めて帰ったのであった。

「いや、本当に美味しかったですよ!」

「そうですか?ありがとうございます、、、」

と迫力のある見た目の割には優しそうな感じでご主人がご挨拶をしてくださった。

いやー
初っぱなからかなりハイレベル。かなり高揚した気分で講演会場に入ったのであった。