京都府の日本海側・宮津市の名物は、天橋立だけじゃない!圧倒的な食の宝庫に感動! その1

2006年9月30日 from 出張

宮津に降り立つのは今年の2月に引き続き二度目だ。京都府、ではあるが、日本海に面したこの地には京都駅からさらに特急で2時間かかって辿り着くという長旅で、座りすぎで腰に少し負担がかかることは否めない。プラットフォームに降り立ち、週刊アスキーの連載用に「やっと着いたぜ」カットを撮影。

改札をくぐると、飯尾醸造の五代目見習いの飯尾彰浩君が迎えに来てくれている。

「どうも、お待ちしてました!」

飯尾醸造は、何回かこのブログでも登場しているお酢を醸造する蔵だ。日本では本当に少なくなってしまった静置醗酵という手法でのお酢作りを守る蔵である。その跡取り息子の彰浩君との出会いは、昨年中に仲間の農業経営者達と実施した「就農塾」である。彼は就農塾に応募し、第一期生として毎回宮津から上京し、20回の講義を修了したのだ。塾への参加応募のメールをみた僕は驚愕した。

「こ、これって、、、富士酢の醸造元じゃないか!」

「富士酢」は、自然食品店やオーガニック系のスーパー等では必ずおいてある名門酢である。僕も藤沢で一人暮らしをしていた大学時代に愛用していた。独特の濃く強いパンチの効いた香りがする酢で、当時はまっていたウルメイワシの酢じめに使うとビシッと決まったものだ。その富士酢の醸造元が、我々の就農塾に、、、

ぐわっ

ダメだ、あんなオーガニック系のお酢の雄といえる存在がいらっしゃるような場では、、、

と思いながら数回メールを交わしたが、「お酢の原料米を契約農家さんと、蔵の人間で栽培しているのですが、それに少しでも役立てたい」という強い参加意思があり、ご参加いただいた。そして来たのが、当年31歳の若い跡取り息子である彰浩君であったわけだ。実にまじめな性格の男で、なぜか彼が上京している時に僕は東京駅周辺の道ばたで「あれっ?」と出会ったりする、不思議な縁がある相手なのだ。むろんそれは望むところだ。とても気持ちの良い男なのだ。

「やまけんさん、今回まず昼食に、この町でかなり人気を集めている洋食屋の「精養軒」にご案内します」

上野精養軒と関係があるのか無いのか定かではないが、路地の中にひょっこり現れたその店は、いい感じに煮染めた感と、なぜかギリシャ遺跡ような意匠の石柱を持つ、強烈な印象の店構えだった。

店は通常、二階席から埋まっていくようだったが、二階はすでに満杯で、キッチン横の一階のテーブルに陣取った。メニューを見ると、ABCDの4通りのランチが画用紙に書かれている。この内容がむちゃくちゃ魅惑的なのだ!

「実はメニューの中にはいろんな洋食があるんですけど、ほとんどのお客さんがこのランチを頼むんです。僕はCが好きなんですけどね」

そりゃそうだろう!
Cランチの内容は、海老フライ・ポークカツ・ハンバーグ・チキンソテー・ロースハム・カニサラダ・野菜サラダで1650円である。ゴージャスリッチだ!

「いやー旨そう。でも洋食屋だからきっとハヤシライスも旨いぞ!これ、ご飯をハヤシにできないかなぁ」

おばちゃんに頼むと

「いいですよ、どれかの具をハヤシに交換するか、料金アップでハヤシを追加するか選べますよ」

「あー もうそれは絶対追加で。」

とお願いしたんである。

「この店は、洋食を仕出しするので、冠婚葬祭でよく使われているんですよ。うちの父と母も若い頃にはここによくご飯を食べに来たそうです。」

なんとまあ時の流れの中にある洋食屋だ!
と感心していたら、来た!

いやぁ 最高! ぐあっと迫ってくるこのボリューミーな洋食攻撃!

海老フライはかなり立派な海老で、オリジナルのタルタルソースがかかっている。ポークカツにはカレーソースがかかっており、その下にはチキンソテーが眠っている。ハンバーグは豚肉中心のようで、ふんわり柔らかく美味しい!しかし、何よりいいのは、クリーム系のソースもほぼ手作りのようで、加工食品的な味がしない。

そしてハヤシがまた、いい味出してる!

この、クタッと煮込まれたタマネギ表面に鈍く光る油脂と小麦粉由来のドミソースのテラテラしたテクスチャが佳い! 一口匙で口に運ぶと、トマト香りと甘さ、そしてドミソースの、深すぎない旨さ。ここで徹底的なドミソースだと、重すぎて高級洋食になってしまうのだけど、ほどよい深さでイイ。

「いやぁ~ 旨いな、旨いよ!」

とはしゃぎながら食べていると、おばちゃんが「そんなに喜んで貰ってどうしよう、あれ、出しちゃおうかな、、、」とつぶやきながら、厨房からカレーソース入れにベージュの粘性のソースを入れて持ってきてくれた。

「これね、自家製マヨネーズ。本当はこれ有料なんだけど、おまけするから食べてみて!」

おおっ
自家製マヨネーズは僕も作るが、ここのは非常に白い!生クリームを入れているか、油脂分を多めにしているのか、上品に白くトロトロした流体となっている! これを野菜サラダにかけて食べると、強めの酸味と大メーカのマヨとは全く違う切れのある風味、そして口の中にあまり残らない堅さが実にいい!

実はこの店、創業から55年経つという。初代が和食をしていたそうだが、途中から洋食店に切り替え、成功したそうだ。以降、万博の時にちょっと改築し、あとは壁紙の張り替えなどはするものの、基本的には変わっていないらしい。

「もう本当にね、真心で手作り。タンシチューなんか最高に美味しいわよ!今度来たときにたべてみてね!」

と言ってくれる。よしゃ、次回はぜひ!
会計をして次に向かうのは、あまりにも有名な日本を代表する観光名所の一つ、天橋立(あまのはしだて)だ。おみやげ屋さんや飲食店の並ぶ参道付近は、ウィークデーの中途半端な時間ということもあり、それほど混んではいなかった。