2006年9月 7日 from 首都圏
一昨年にブログ読者の方から自家製奈良漬けをもらったのが滅法旨くて感動して以来、自分で本格的な奈良漬けを漬けるのが悲願となってきた。昨年までは奈良漬けというよりは酒粕をつかった浅漬けという感じのものをつくっていたのだが、今年は本格的にやりたいなと思っていた。そこで、錦糸町「井のなか」の工藤ちゃんを巻き込んで、いい酒粕を使ってやってみようよ、ということになったのだ!
奈良漬けには白瓜という作物を使う。青瓜というのもあるのだが食感がざくざくしすぎていて、あまり美味しくないといわれている。白瓜は緻密な果肉で、色も上品に仕上がるのだ。しかし、本来であれば8月中旬くらいで白瓜のメイン産地は終了。いつもながら後手後手になってしまう僕の癖が出て、今年も調達には苦労した。山梨県産のものがかろうじて入手できたので、一箱18本入れのものを使う。サイズがMで小さいのだが、まあいいだろう。
酒粕は例年通り、島根県の桑原酒場(くわはらさかば)が醸す「扶桑鶴」の大吟醸練り粕だ。鮭が旨ければ粕も旨い。しかも、「端麗辛口」とか「水のごとき」というようなキーワードから対極にある、純食中酒といえる扶桑鶴だ。この練り粕で作った奈良漬けはご飯にあう旨いものになるだろう!と期待する。
「井のなか」のイケメン料理人・五十嵐君もこれは初めての試みとのこと。
早速仕込みを始める。
白瓜は半分に割り、中の種部を(キュウリのようになっている)スプーンでくりぬいていく。
くりぬいた部分にたっぷりめの塩を盛り込む。これで脱水するわけだが、瓜はほとんどが水分だから、出てくる水の量たるやすごいものである。
いったん水分を抜いたのを捨てて、再度塩で漬け込み、ガシガシにしょっぱく漬けたら陰干しして水分を飛ばして、酒粕に漬ける。酒粕にはザラメなどを混ぜ込んだり、焼酎を足したりといろいろあるようだが、粕が旨いのであまり手を掛けないでやろうか、と相談。これは後日の工程なので、再度リポートしたい。今日はここまで。
「やまけんさん、新作料理があるんで食べてってください!」
という五十嵐君、やおら一塩を振っておいたイワナを冷蔵庫から取り出す。
ふうん、なんだろうな?
としばし待っていると、、、
こう来たか!
イワナの腹の部分に、おからだろうか?フィリングを詰め、塩焼きしている。
そして、これに添えるパテのようなものがついている。
これは、、、
これまでの手法を観ていると、絶対にイワナの肝のパテであろう。
「そうです。味噌と一緒にパテにしてみました。それを身につけて食べてください!」
はい了解!
パテを身に乗せて口に運ぶ。
ハラに詰めたフィリングがおとなしい味付けのせいか、イワナらしい香気は消えておらず、かつ川魚特有の独特のにおいが消え、食べやすい。パテは味噌が少し強いかもしれず濃いけど、ここは居酒屋。酒のアテにはちょうどいいあんばいかもしれない。
「いや、これは予想を大きく裏切ったね!こういう路線で来たかぁ!」
「川魚が苦手って言う人にも食べていただけるような料理にしたかったんですよ!」
うん、そのねらいであればばっちり当たっていると思う。
後日、この店で会をするのだけど、そのときにもこれを出して欲しいとお願いする。
「日取り的にイワナが入るかどうかぎりぎりですけど、がんばってみますよ!」
ということだ。
それまでに井のなかに行く人があれば、頼んでみてはいかが。これは美味しいですよ。ただし一人で呑む人は、これだけで腹一杯になっちゃったらいかんね。2人以上で食べるといいと思う。
特製粕漬けが仕上がるのは数ヶ月後、完全に仕上がるのは1年後くらいになると思うが、そういえばその粕漬けは店で出すんだろうか、、、美味しかったら出してくれてもいいなぁ、、、
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