錦糸町「井のなか」で鮎料理の傑作誕生! やったぜ五十嵐君!!

2006年8月 1日 from 首都圏

錦糸町「井のなか」は今でも予約が取りにくいらしい。居酒屋なのにふらっと寄れないのは残念だが、予約してでも行きたい店になっているのは素晴らしいことだ。

この店の面白いところは、素材や日本料理の調理技法だけではなく、調味料にもきちんと神経を行き渡らせていることだ。例えば右の刺身だが、つけダレの皿を観て欲しい。濃い口醤油の隣に、淡い色の液体があるだろう。これ、実は煎り酒だ。煎り酒についてはこちらで書いているので解説は省くが、居酒屋ではなかなか登場しない調味料なのだ。工藤ちゃんや五十嵐君、浅見君が酒蔵や店を回って勉強したいろんなことを、自分の店の料理に応用するという好循環ができている。

さて
この日、鮎料理の傑作を味わった。

実は5月後半ころから、ある鮎の料理が井のなかで出てくるようになった。それは、鮎を唐揚げにしたものを野菜の餡で食べるというものだ。しかし、ぱりぱりに揚げた鮎には、鮎の美味しさ、特にあの繊細な香りが全く消えてしまっていた。しかもハラワタを抜いて開いているので、肝の苦みも感じられない。これは鮎料理ではないね、と厨房の五十嵐君に伝えた。

「可能であれば、鮎の実もハラワタも使って、「しんじょ」みたいなのをつくってみたらどう?」

と。

その数週間後、想像を超える一品が出てきた。

魚の切り身の右側にあるハンバーグ上のものがそれだ。「鮎のさんが」である。さんがとは鯵などを味噌と一緒に叩いてタルタルステーキ風にするアレだが、それを鮎で、しかも加熱をして出してきた。

シットリと水分の残った火の通し加減。口に運ぶと、鮎のハラワタの苦みと味噌の風味、身肉の甘さがトロッととろける。

「うおっ これは旨い! 五十嵐君すごいよ!」

と僕はかなり興奮してしまった。

鮎の旨さはなんといってもハラワタの苦みにある。苦さが鮎の身肉の瓜の香りと合わさるのがいいのだ。このサンガ焼きは、その全てを含んでいる。味噌がある分、瓜の香りが飛んでしまうが、でもその代わりに味噌の風味が食欲をそそる。おかげでこの日はたくさん飲んでしまった。純米酒のアテに最高である。

落ち鮎まではこの一品が楽しめるだろう。井のなかに訪れるなら、カウンター越しにこれがあるかどうか訊いてみるといいと思う。