悶絶絶頂のシチリア・キーコ料理 神泉「アルキメーデ」の濃密なオフ会で参加者みな大満足の一夜だった!

2006年7月31日 from オフ会


渋谷から歩いても行ける距離に開店した元・無二路のシェフである重康彦(しげやすひこ)の「アルキメーデ」。開店したといっても、「二人しか居ないからさぁ、一日2組くらいしかお客さんとれないよね。」などといっている。それどころか、「お客さんが『もういいよ』っていうくらいに超満腹にさせて、一年に一回だけ来てくださるような店でいいんだ。」なんて、商売にならんことばかりいうキーコ(重のシチリア修業時代の愛称)なのである。でもまあそんなことにはならんだろう。オフ会の申し込みはすごい勢いで定員を突破してしまった。今回は抽選が面倒なので、半分は先着、半分は適当に抽選とした。結果、過去のオフ会参加者がけっこう多い会となったのである。開場の19時半前後、どやどやと皆が現れ、19人がぎっちりとテーブルに収まった。

「キーコ、皆さんに挨拶!」

「えー やっぱり俺が出なきゃダメ?」

などと言いながらも重の登場に皆、喝采。

「えー 今日はみなさん、とにかく満腹になって頂きたいと思いますので、頑張って食べてください。

の声に皆笑う。
そしてせっかくなので奥さんにも登場していただく。

彼女も実は無二路で働いていた人だ。つまり重とは職場結婚。無二路に足を向けて眠れませんなぁ。
そんなこんなで宴の始まりである。

この日は、中央の2人がけテーブルにものブロックストロボを設置させてもらい、撮影席とさせてもらった。

席に座ることとなった西川さん夫婦には面倒をかけてしまったが、ご夫婦双方が愛媛県出身ということで、愛媛話におおいに盛り上がってしまったのである。

■前菜
まずは豚のリエットと、重スペシャルの一つであるレバーペーストだ。

無二路時代から「これだけでお腹を一杯にしてもいい」と激賞されたこの二品。リエットの豚肉には、鹿熊種豚場のかくま豚を使っているので、あっさりふんわりと仕上がっている。
レバーペーストをつけるパンは、店内で焼いた丸パンに変更されていた。

キーコのパン焼き技術はかなり高いので、これもまた佳いと思う。そういえば無二路でも、新シェフの嵯峨山君の手による美味しいパンをいただいた。やはりパンは店で焼くのが一番なのである。そのパンにたっぷりレバペをのせてバクッと食べる!

「うおっ 美味しいです美味しいです!」

と西川君大喜びである。初めて食べる人には、この野菜がたっぷり入ったトマト風味のレバーペーストは衝撃的な味らしい。

ニンジンのズッパ。もちろん野菜は全て長島農園だ。しかし「すべて」ってのは結構すごい。鹿熊種豚場のかくま豚にしろなんにせよ、ほとんど産直農畜産物でメニューを構成しているというのは結構たいへんなのだ。ただしそれが可能であれば、素材のポテンシャルによって店の水準は確実に変わる。ニンジンズッパ、ニンジンのコクと甘み、そして嫌気のない香りが素晴らしい。

さて
無二路で培われた10種以上の前菜攻撃は健在。アルキメーデでは、小さなグラタン皿に盛り込み数種出すというスタイルに変更された。




ナスのパルミジャーナだが、実は本日使うナスは全て僕が調達したものだ。なんていってもナスには最近凝っているのである。この日は、大阪の卸売業者である東果大阪さんから、泉州の水ナスと米ナスを取り寄せたのだ。カポナータには米ナスが投入されたわけだが、コクがあって旨いと重も激賞だった。このパルミジャーナには、果肉と味のしっかりした長島農園ナスが使われている。

そして極めつけのナス料理がこれだ!

なんと水ナスのカツレツである!
泉州水ナスを輪切りにしたものに香草を混ぜたパン粉をまとわせ、揚げているのだ。水ナスをこうして食べるという発想は僕も初めてだ。これが強烈に旨い!ナスには適度に火が通り、あの水ナス特有の甘いジュースがジュワッと染み出てくる、一品となった!この一品は出てきたらすぐに食べないといけない。

まだ前菜の途上である。しかしこの日の参加者はみな量を食べることができる人たちばかり(笑)
皿はじゃんじゃん綺麗に空いていくのである。


シチリアで食べたカジキのインボルティーニも登場。はっきり言ってシチリアで食べるより旨い。

さてようやくパスタである!

■パスタ
まずはカジキのファルファッレだ。これにはシチリア名物・チーズの代わりに、香ばしく煎ったパン粉をまぶして頂こう。

美味しい。けど、このあと定番のアレが来るんだから、一皿目はアーリオ・オーリオ系の方が佳かったかな。とにかくアレのインパクトがすごいんだから、と思っているうちにアレ登場。

キーコスペシャルのもう一皿、ペスカトーレである!

魚介、特に貝を数種類投入して複雑な旨みのブロードを生成し、太麺のリングィーネに吸わせるこのペスカ、絶対にはずしてはいけない。いままでこんな旨いペスカトーレを食べたことがないという味なのだ。

この日はつぶ貝、マテ貝なども入ったゴージャス版。オープニングパーティの時のペスカトーレは若干煮込みが足りずシャバシャバで不満が残ったのだが、さすがにこの日はビシッと決めてきた!一分の隙もない旨さである!

「美味しい!」

そこかしこからの声連発。いうことなしだ。

さあそして肉が登場。

ちなみにこの重い肉のプレートを持ってくれているのは、この日フロアに手伝いできてくれた、過去ログに何度も登場するkisshこと岸崎氏だ。僕を吉祥寺「李朝」に連れて行ってくれた張本人である。
この肉を見た瞬間、参加者一同席を立って走り寄る!

シャッターの嵐である(笑)!

さあ、これがセコンド(主菜)である!

肉ヤキストとしても素晴らしい重のラムのロースト、そしてかくま豚のカツレツだ。上に載っているオレンジ色のミニトマトは長島農園のオレンジパルチェ。凄まじい甘さになるミニトマト品種だ。そしてカツレツの下に敷いてあるのが、この日ぼくがJA幕別から特別に調達したスペシャル食材、インカのめざめの2年熟成ものである。インカのめざめとは、最近少し有名になってきたジャガイモの品種で、果肉が濃い黄色、そして栗のような香りと甘さの芋だ。

これを越冬させると、でん粉が糖化して甘くなるのだが、せいぜい1年越冬ものが出回るに過ぎない。しかしJA幕別では実験的に2年貯蔵をしているのだ!あと20箱程度しか残っていないが、これが実に最高の芋になっている。特別に一箱をアルキメーデに送ってもらったのである。

さてこの日の羊は、無二路時代からみても最高のできばえだった!

臭みのない肉質、美しいロゼに熱の通った官能的な食感、そしてなによりキーコ特製のソースが最高に旨いのである。

ふんわりした食感に肉質のきめ細かいかくま豚のカツレツも最高だ。淡麗淡泊な味わいが、シチリア料理らしからぬ繊細さを呼び起こしている。
そして、インカのめざめも最高に旨い!

「な、何ですかコレ?」

「ジャガイモの味じゃないですよ!!」

「甘い! 凄まじい甘さです!!!」

と絶叫する参加者達。 JA幕別のノムさん岡坂さん、やはりインカ2年熟成は素晴らしいですよ。

しかし驚いたことに、このセコンドまでほとんどの人が皿を残さない。2名くらいが持ち帰りを表明したのみで、そのほかはみな全て皿が綺麗に片づいてしまっているのである!素晴らしい健啖家集団である!

さてドルチェである。
この日キーコがスペシャルなドルチェを作ってくれた。

「俺も初めて作ったんだけどさあ、新しい仕入れ先がイタリアの香料とかかなり持ってるんで、旨そうナノ作ったよ!」

なんとロールケーキである!

ピスタチオを練り込んだスポンジでリコッタクリームを巻きこみ、そしてたっぷりとシロップを吸わせる、あの適度にシャバシャバなシラクーサ名物・カッサータのロールケーキ版だ。この周りに、オレンジ風味のリコッタサラダクリームを塗りたくって完成。

もう一方はルバーブのトルタ。

面白いことにフランスの「タルト」はイタリアでは真逆の「トルタ」になる。ワールドカップであんなことになっちまった両国の関係のようだ。

コレが完成系。アイスクリームはこれもカッサータ風のリコッタチーズのジェラートだ。

このドルチェについては、もう何も言うことはない。キーコ流カッサータロールは、昨年2月にシチリアにいったとき、どこで食べたドルチェよりも旨かったのだ!
いやー
マジで堪能!


参加者一同もぴかぴかに光った素晴らしい顔をしている!
キーコの新しい店、アルキメーデは、ハズレのない店である。アクセスは便利とも不便とも言える店だが、一度足を運んでみてはどうだろうか。

当面、厨房内に2名しかいないので、あまり客を取ることができない。一日2-3組が限度だろう。すでに予約の電話が鳴り響いているようだし、早めに行きたい人は予約必須だ。

シチリア料理「アルキメーデ」
渋谷区神泉2-8小島ハイツ1階
03-5489-6850

ということで第五回オフ会、無事終了であったのだ、、、