2006年4月17日 from 首都圏
※豚肉のローストの価格修正と、バイト募集情報追加しました。
前回のレセプションの後、3月31日に正式開店をした「井のなか」は、順調にというか凄まじい混雑ぶりをみせながら毎日を送っているらしい。基本的には3人だけしかいないので、このままいくと大変なことになってしまうだろうとかなり心配だ。けどまあ、概ね好評らしいので一安心である。
■燗酒とコの字カウンター 「井のなか」
東京都墨田区錦糸2-5-2
03-3622-1715
営業時間: 17:00~23:30(金曜と祝前日は翌3:00まで)
日祝休
実は今、本業の本の執筆で血反吐を吐きそうなくらいに追い込まれて居るんだけど、妹の引越の保証人になるため、書類に判子をつく必要があり、どうせならメシでもということで、開店後1週間経った「井のなか」へ。
手前に見える銅色のがお燗をつける道具だ。たしか「お燗どっこ」と言ったと思う。つまり工藤ちゃんの占有スペースである。その向こうにおびただしい「竹鶴」の瓶がならぶ。おそらく竹鶴と扶桑鶴については、関東の居酒屋のなかでも有数のアイテム数を誇ることは間違いないだろう!
この日のスターターは「睡龍」から。常温のまま呑みながら、工藤ちゃんが眼をキラリと輝かせた。
「兄貴、もうゴルゴンゾーラのりんごサラダは卒業しました!これが新・必殺技です!」
と出してきたのが、端整なキッシュの上にブルーチーズのムースを載せ、セロリの葉を載せた一皿だ。
これに燗酒をつけてワンセットである。ちなみにゴルゴンゾーラのりんごサラダとは、彼が昔に考案した純米酒のアテで、燗酒と実に素晴らしい相性をみせるものだったのだ。それを超えるというのだから相当に吟味したのだろう!
「まずはキッシュにチーズムースを載せて一口やって、酒を飲んでください!」
バターの香りに優しい玉子の風味、そしてブルーチーズの強い香りが口内に充満したあとに純米のぬるめの燗がさっと内壁を撫でる。瞬間、全ての旨味が燗酒によって活性化されて鮮烈な印象が残った!
「つぎに、この蜂蜜にキッシュをつけて食べてください!」
小皿にすこし出された蜂蜜にキッシュをつけていただくと、蜂蜜の濃厚な香りと甘さによって、キッシュが全く違う表情を見せる!これに酒を合わせると、蜂蜜の甘みが酒の微妙な酸と合わさって、全く違う味世界が舌の上に拡がった!
「最後に、セロリの葉にチーズムースを載せてパクッといってください!」
写真を取り損ねたが、このセロリの葉はただのツマではなかった!セロリのあの強烈な香りに、これまた香りの強いブルーチーズムースが合わさる。しかしその強烈な香りが鼻に抜ける中、酒をクッと流し込むと、なぜか三者の香りが、口中で均衡するのだ。これは実にマジック! 工藤ちゃんの新・スタンダード酒肴であるといえる。
次は白海老の唐揚げ。
「型のいいのがなかなかなくて、確保に苦労しました」
というが非常に型の佳いたべでのある白海老だった。
この辺から酒は、工藤ちゃんが料理ごとに繰り出す個別のセレクトになり、銘柄は全く覚えておりません。お店で工藤ちゃんに料理に合う酒を出してと頼んで、追体験してください。
さて
いい居酒屋とは、いい「ぬた」を出すものである。
この日、板前の五十嵐君はシャコ爪のぬたを出してくれた。
これがまた絶品中の絶品。シャコ爪のホッコリした、適度に上品で適度に下世話な味と食感がイイ。いうまでもなくぬた味噌も最高だ。
「アニキ、これ食べてみて!無二路の重シェフに教わったレバーペーストをアレンジして山椒を置いてみたんですよ。」
本当に無二路風レバーペーストである。もう少ししたら詳しく書くが、工藤ちゃんは重にいくつか料理を習ったのである。ただしこれに山椒をつけるというのは初耳。
この山椒の存在が実に瞬間的にレバーペーストを「和」に変化している!
「これ、実は古川先生のアイデアなんですよ!」
なんと史上最強の日本酒マニアック・古川先生のご登壇である。さすが先生、この取り合わせは実に最高だ。
「お次はアスパラ食べ比べをしてください!」
と、グリーンとホワイトのアスパラの炭火焼きがでてきた。
ソースは「酒盗ベースでつくりました」という、あっさりしているけど酒盗の発酵味のする逸品だ。
ところでアスパラ一本を半分こするとした場合、あなたなら根本と穂先のどちらを食べたいと思うだろうか?けっこう多くの人が「穂先が美味しいんだろうな」と思うらしい。しかし、生産者に聞いてみると、圧倒的に「根本の方がうめーよ」と言う。僕もそう思う。繊維がみっしりとしており、旨味も濃いのだ。こんど試して欲しい。あくまで主感だけどね。
「もう一皿アスパラです! チーズ肉巻き揚げにしてみました!」
うおおおお これもホワイトとグリーンの二種、かなりヘビーな仕上げである(笑)
しかしこれがまた旨い!豚肉で巻いてチーズを噛ませて揚げることで、衣のシャクり感の後に肉とチーズの旨味を感じ、最後にアスパラのクキッという心地よい食感とほとばしるジュース、そしてあの特有の風味が立ち上るのだ。
シンプルな炭火焼きよりもこちらのほうがよりヴィビッドにアスパラの旨さを感じることができたような気がする!
つづいて鰺のなめろう。
和食板前の五十嵐君の技炸裂しまくりである。旨し。
ここで工藤ちゃんが信じられないモノを僕にみせつける。
「アニキ! いよいよ鹿熊さんの豚を食べて頂きますよ!」
と出してきたのが、優に5キロくらいの豚肩ロース塊である。
以前より紹介している、茨城県の鹿熊養豚場の中で選び抜かれた豚、品種はLWである!
しかし豚肉がよくても、焼き方がまずければしょうがない。実は工藤ちゃん、ローストの技術を習得するため、五十嵐君と一緒にぼんぼり京橋店や重シェフの元で肉焼きを徹底的に教わったという。
その甲斐はあった!みよこの鮮烈に旨いオーラが迸る断面を!
この最高の肉が鹿熊さんのところから出荷されないときもあるけれども、ベースとなる通常メニューとして記載されているのである!!1200円という、この店ではちょっと高めの部類かもしれないが、かなり分厚いカットが盛り込まれてくるのでぜひ頼んで頂きたい。このレベルの豚肉は一般ではなかなか手に入らず、食べることができないと思うからだ。
豚肩ロースのローストは、昨晩時点で掲載した900円ではなく1200円の間違いでした。
焼き上げた後にベンチタイムを置くことで、肉汁が全体に周りジューシーに火が通る。
このトロトロ感、みただけでおわかりいただけるだろう!
ジュを煮詰めたソースをかけると、もうヨダレがすごいことになってしまう。
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
たまらん、かぶりつくしかない!
おそらく豚のローストの概念を捨てたくなる、絹のように滑らかな食感。ふんわりした歯触りだがざっくりと歯が通ったそのあとにジュワッとあふれ出す肉汁!その清冽さといったらない!豚臭さの一片もない、本当に鹿熊さんがいう「お姫様のような豚肉だよ」というそのものである!素晴らしい!
「この肉には秋鹿をあわせて下さい!」
いや、実に合いますよ。豚の端麗さが際だつので、じゃっかん骨の強い、酸も強めのさけがビシッと合うと思うのだ。
一枚150g程度はありそうな豚肉を都合3枚たべて腹がけっこう重くなるが、なぜか手が緩まない。ここは寿司屋か?と思うような綺麗な穴子が出てきた。
うーん 綺麗、美麗、実に美しい。煮穴子より焼きのほうが好きだけど、くどい甘さのないこの煮穴子は実によかった。
そこにまた重そうな茄子田楽登場。
「まじかよ」と思うが、この肉味噌が実に秀逸な出来映えだった!
色から分かるとおり八丁味噌ベースで、極めて強い酸味と奥深い風味が粗めの挽肉のコクと相まって、米茄子のトロトロ感に旨味を添加する!
この八丁味噌がベースとなっているという。これも和食板前五十嵐君の技術の粋だね。
そして今日の魚はイトヨリ。ちり蒸しにしてポン酢でいただく。
魚の扱いも割烹かと思わんばかりの巧さだ。和食を食べたいという目的でこの店に来てもいいくらいだ。
「やまけんさん、〆の丼です!」
と出てきたのが信じられないくらいでかい丼一杯の豚の角煮丼。
そしてもう一つ、旬の桜海老と筍の卵とじ丼である。
頼むもう勘弁してくれ、さすがに俺も食べ切れん、、、
でも、火照った舌を、冷たい麺でクールダウンはしたい。そういう人には秋田名物の能代うどんがお薦めだ。
この能代うどん、工藤ちゃんもいっしょにいった秋田縦断ツアーでしった食材だ。ぜひ味を観て欲しい。
いやーさすがに食い過ぎた。それもこれも料理が全て旨いからである!
五十嵐君、最高だ!
ちなみにデザートもイカしている。この日はプリンをいただいた。
しかし本当のお薦めはコレ。
メロンパンアイスってなんだろう?ぜひお食べ頂きたい。感動すること間違いなしである。
最後にメニューを載せておこう。
前のエントリの繰り返しになるが、オペレーションが落ちつくまでは料理の出方が遅かったりするかも知れないが、ご容赦いただきたい。
しばらく後には、グルメ誌への記事掲載もありそうだ。そうなったらまた予約とりづらくなるだろう。ぜひ錦糸町の新しい風を感じに、足を運んで頂きたい。
追記:工藤ちゃんより
「バイト募集中です!やる気のある人、ぜひ手伝って下さい!時給1000円17時~23時です!よろしくお願いします!!」
とのこと。誰か助けてやってくださいな。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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