2006年3月20日 from
さて種子島最終日だ。最近、きちんと最後まで書ききれるエントリは久しぶりだなぁ、、、
今日の目玉は、種子島にしかいないと言われる在来種鶏「インギー」を食べることである。これ、いわゆる「地鶏」ではなくて在来種といわれる鶏である。地鶏というためにはJAS規格に定められた内容を遵守し、認定されなければならない。
その地鶏の定義はここにある。
■国産銘柄鶏の定義及び表示 (日本食鳥協会のWeb)
http://jca.lin.go.jp/gaidorainn/gaidorainn06.html
この文書の最後に掲げられた別表の中に「インギー」があることがわかるだろう。インギーは明治27年くらいに種子島にもたらされたとされているので、在来種として認知されているのである。
「明日、インギーを観に行きましょう!実はこの地元の小学校で飼ってるんですわ」
と西さんがおっしゃるのだが、当然それって食べられるんですよね???
「えっ お食べになりたい? うーん どうしようかなぁ~ じゃあちょっと調整してみますわ!」
とかなり無理を強いてしまったようだが、ご調整頂いた!
朝、町の中にある小学校に行くと、校庭に据えられた飼育小屋にインギーは居た。
これがメスで、
これがオスだ。
それほど大きい体型ではないが、引き締まった感じの鶏である。
産肉性は高くないと思われるが、食用の場合は飼育日数を120日以上とっているらしいので、引き締まったいい感じの肉になるのだろう。
「ちなみにこの鶏、南種子町の指定文化財なんですわ」
ええええええええええええ
そんな文化財を食べていいの?と思ってしまうが、食べるという行為もまた文化。きちんと繁殖が確認されていれば大丈夫なのであった。
さて、このインギーを食べさせてくれるのが大和温泉ホテルという地元のグループだ。
■大和温泉ホテル インギーの説明ページ
http://www.d4.dion.ne.jp/~tdaiwa/ingee.html
なんとこのホテルでは自分たちで養鶏場をもち、インギーを年間2000羽程度飼っているそうである。素晴らしい!
料理長に軽く挨拶して中にはいると、種子島の定食類が板書されている。
「トンギョイカ」というのがやたらに興味をそそるのだが、今日は地鶏を食べに来たのだと自分に言い聞かせた。
「通常は地鶏のタタキとか刺身は定食で出てないらしいんですが、今日は特別にお願いしました」
ということなので、実際に食べたい人は予め申し出ておかないとありつけない可能性が高いので要注意である。
さてお待ちかねのインギー皿が出てきた!
刺身は実に綺麗な、見るからに旨そうな切り口だ。肉の周りに火を通し、内部はレアになっている。
胸肉の色は実に濃い赤色だ。鹿児島の醤油につけていただくと、胸肉とは思えない弾力で気持ちよく噛み切れる。旨味が強く乗っており、非常に美味しい。
モモ肉に至ってはモチモチとした弾力で羽を跳ね返す。飼養日数が長いためだろう、身肉に多量のアミノ酸が湛えられており実に美味しい鶏である。この鶏の刺身には、関東の辛い醤油ではダメだ。甘みの濃い九州醤油でないとこの組み合わせの妙は得られない。
そして僕が大好きなタタキである。
モモ肉を皮目だけ炙って薄いそぎ切りにし、ポン酢で食べるこの料理がなぜ本州にないのか理解に苦しむ。
こちらはオスのインギーらしく、ダイナミックな味がする。脂も適度に載っており、くどい嫌な風味はない。
ちなみに壁にこんな紙が貼ってある。
どうやらインギーだけではなく赤米も名物らしい。なるほどね!
さてこれがインギーみそ鉄板焼きである。
ジュウジュウと脂の爆ぜる音が鳴り、みその甘辛い香りが立ち上る。
胸肉とモモ肉が混ぜて入っているらしい。加熱したインギーはどうだろうと思いながら口に運ぶと、ギシッとしっかりとした繊維感が歯の裏の神経系に伝わる。甘辛みその風味が強いが、それにも負けないインギーの風味がしっかりと残っている。
グワグワとこの濃いみそ炒めと白飯を掻っ込んでいると料理長が奥から出てきてお話しをしてくれる。飼養期間やインギーの来歴などは彼から教えて頂いた。可能であればぜひ、シンプルな塩焼きも食べてみたいものである。
いやそれにしてもまた食べ過ぎた。例によって残す人が一杯居るのでその分も食べてたらもうかなり満腹である。
「じゃあ、空港にお送りする前に、一カ所寄って頂きたいところがありますので、、、」
と西さんが車で飛ばしながら、畑の真ん中に通っている農道で停車する。
「これがうちの安納芋の畑なんですわ!」
と西さんが誇らしげにおっしゃる。
この西さん、種子島に移住したいというUターン・Iターン希望者に情報を提供し、定着をサポートしてくれる「種子島UIターンサポートセンター 」の方なのである。実際、彼に導かれ定着した移住者は数知れないと言う。種子島は実は非常に移住者の多い島で、実に最近でも400人くらいは移住してきているらしい。温暖で、食料に恵まれたこの島を熱望する人が多いらしい。とくにサーフィンのメッカであることもあり、サーファーが非常に多いらしい。実は西さんご夫妻自身が、大阪からiターンしてきたのである。詳しくは彼らのWebをご覧いただきたい。
種子島UIターンサポートセンター
http://www.geocities.jp/seed_islander/
そしてその西さんが、種子島の名産品を本州に送り出したいと開設しているのがこのWebだ。
紫芋・安納芋のOrga種子島
http://www7.ocn.ne.jp/~seed/
実はここの安納芋、旨い。小ぶりな芋が多いのだが、安納は小さい芋のほうが味が乗るんだろうか。
これが上質な安納芋の生産される土だ。時間が無くて舐めることができなかった。残念。
さてその車中で面白い道具を渡された。
「やまけんさんこれ、何を割る道具だと思います?」
わからんなぁ、と思っていたら、なんとマカダミアナッツ割り機であった!
「実は種子島ではマカデミアナッツができるんですよ」
なんと! ハワイ土産でしかお目見えしたことがないと思っていたが、種子島ではマカデミアナッツができるのであった!これがマカデミアナッツの樹である。
なんてことはない灌木なのだが、この樹にあの堅い殻に守られた森のバター、森のミルクができるのだという。
この美しい葉にちょっと感じ入る。このタイミングではナッツはなかったが、収穫時期にはびっしりとなっているらしい。
「いやぁ、ナッツなんて実はなにもせんでも生ってくれるんですわ」
と謙遜する西さんである。
実はこのマカデミアナッツが非常に僕の心を虜にした。ナッツ割り機とマカデミアナッツ本体を持たせてくれたのだが、これが実にはまるはまる!
クルミとは違ってつるんとした球体で、ものすごく堅いので割りにくいのだ。これをナッツ割り機にセットする。
そしてハンドルを回していくと(かなり力を要する)、ある時「ばきっ」という音と共にナッツが割れるのである。
そして中から覗くのは、なんとも美しい、ふんわりしたテクスチャの薄茶の豆だ。
噛み締めると、シクッシクッと言う歯触りから滑らかなミルクのような風味の液が染み出てくる。本当にミルクのような濃厚な香りに、ほのかな甘みも一緒に溶け出してくるのだ。絶品である。次の収穫時期にはぜひ買い求めてみたいと思う。
このマカデミアナッツとナッツ割り機も西さんのWebで買い求めることができる。島の味覚は実にすばらしい。ぜひ一度味わってみて欲しい。
さてこのあと大急ぎで空港に向った。小さな空港に15人くらいの人達が見送りに来てくださった。感謝。本当に内容の濃い種子島滞在だった。また来たいと、お世辞抜きで思う島であった。できれば、夏、僕もサーフィンしてみたいものである。お世話になった皆さん、どうもありがとうございました!
追記
さきの西さんのOrgaというサイトでは、安納芋などのオーナー制度もやっている。僕もオーナーになってしまった(笑)詳しくはこちら。
http://orga-tanegashima.jp/owners/
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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