南海の極楽アイランド・種子島縦横無尽~鉄砲より魚!その4 超ハイレベルな地元食を堪能できる 居酒屋民宿 「珊瑚礁」

2006年3月 9日 from 出張

黒糖、美味かったなぁ、、、と一息を車の中でついていると、種子島水先案内人の西さんが「じゃあ昼飯行きましょう!」とおっしゃる。朝飯がっつり食べて、「浜上ストア」で超絶の首折れ鯖を食べ、黒糖と安納芋をいただいて10分。腹、減らねぇ!

「でもね、これからいくところはある意味、種子島にきたら避けて通れない名スポットなんですよ。居酒屋兼民宿なんですけど、ご主人が釣りもするんで、料理はかなりハイレベルです。」

おおそれは素晴らしい!
種子島の郷土の味をもっと本格的に食べたい僕としてはかなりいい感じである。

居酒屋民宿 珊瑚礁 (いざかやみんしゅく さんごしょう)
〒891-3101 鹿児島県西之表市西之表201
TEL:09972-3-0005
http://www6.ocn.ne.jp/~sangosyo/top.html

小さな学校の木造校舎のような味のある渡り廊下を奥に進むと、いい感じに煮しめたような食堂が。卓の上に、仲居さんによって小鉢が並べられ始めていた。

「ここは本当は昼はやっていないんですけど、特別に開けてもらいました。夜のコースのような感じで料理を出してもらいますから」

という言葉にかなり期待がつのる!
そして出てきたハイレベルな料理群に、すでに反応していた満腹中枢がひょっこり治まり、味わいモードへと変化していったのダ!

きびなごと大根、人参をナマスのように和えた料理だ。名前を失念してしまったが、ピーナッツ(落花生)を砕いたものをまぶしてあって、これが実に柔らかな酢の酸味とマッチして美味い!いつもながら、素晴らしい前菜は胃袋と味覚をチューニングしてくれる。たった一皿でググッと種子島料理の世界へと誘われたのだ。

キビナゴ、湯引きした白身系の魚に酢味噌を合わせたもの。魚と酢味噌の組み合わせが南九州では非常に多い。例えば宮崎は西都市の最高に美味い鰻(うなぎ)店「入船」や「本部」でも、鰻のぬたという酢味噌和えがある。南国系のコッテリした風合いの魚には、酢味噌で口をサッパリさせつつパンチのある味を与えるという意味があるのだろう。もちろんこれがまた旨い!

ちなみに添えられているピンクの軸は、ハマボウフウという海辺に生える野草だ。このハマボウフウのシャクリという歯触りと、ほのかに香る花のような柑橘のような風味が気に入った。これが非常に心に残る味と食感なのだ。

沖縄でいうじーまーみ豆腐、ようするに落花生のでん粉を固める豆腐だ。種子島でも落花生は特産なのだろう、マイルドで美味しい落花生豆腐だった。

煮物にも南国の香りが盛り込まれている。無造作にミズイカ(アオリイカ)がゴロンと入っているが、基本は種子島の野菜類だ。特に芋や人参などの根菜類はやっぱり美味しい。土質と合っているのだろう。

さてこの美しい葉につつまれたもの、最初からすごく気になっていたのだ。

包みを開けると、出てきたのは、、、ふっくらとして無茶苦茶美味しそうな、炊き込みご飯のおむすびである!このおむすびを巻いている色鮮やかな葉はたしか「さねん」だったと思うが、天然の殺菌効果があるという。だから、島の人達はこの葉におむすびや食品を包んで保存時間を伸ばすという文化を持っている。なんとも美しく、そして実用的な技法なのだ。

この炊き込みおむすびが本当に美味しい!
沖縄の「じゅうしい」にしてもそうだが、豚肉など油脂を含む具を使い米に旨味を添加しているので、本当に食をソソルのだ。嫁が「ひとつでいい」というのでそれをたべ、そしてなおかつ一人分余っていたので、ホテルに持ち帰り夜食にいただくことにした。さねんの葉の殺菌能力を観たかったというのもある。

次に出てきたこのてんぷら、なんの野菜だろうか?と思いながら、添えられていた天然塩でいただいてみる。

中から覗いたのは野菜という寄り野草といったほうがいい、葉っぱそのものだ。適度に柔らかく、ふんわりとした丸い香りのする葉だった。

「これはボタンボウフウのてんぷらなんです。」

おお、先ほどのぬたのツマに出てきたのはハマボウフウ、こんどのはボタンボウフウ、どちらもセリ科の植物で、浜辺に生えるものである。

「こういう、どこにでも生えているものが美味しいんですよ。でもね、最近はやっぱり減りました。海がきたなくなっているのか、砂浜自体も悪くなっているのか、、、だからうちでは、最近浜辺に生えている野草を増やそうと、自分の畑にも植えてるんですよ」

と、所用を終えていつのまにか座に加わって下さった珊瑚礁のマスターが言う。みよ、この漁師然とした潮風っぽさ、海の男っぷりを!

ここでちょっとお願いをして、さっきから気になっていたハマボウフウとボタンボウフウを、料理前の姿で持ってきて頂いた。

こちらがハマボウフウの葉だ。葉脈が透けて美しい!

なんて可憐なシンメトリーなんだろう、、、
自然界の造形物はやっぱり神秘だ。特に、植物の世界には極めて規則正しいシンメトリーを見てとれる。決して人知では冒せないなにかを感じてしまうのだ。

そしてこちらがボタンボウフウだ。やっぱり食感で感じたとおり、姿もふんわりとしている。これも非常に柔らかく美しい!

ボタンボウフウ、ハマボウフウのどちらも浜辺でなにもせずとも採れるという。こんなに美味しい素材がその辺に生えているというのは本当に素晴らしい。むろん、東京でもあちらこちらに食べられる野草は生えて居るんだけどね。

それにしてもハマボウフウは僕の気に入った。この可憐さ、そして独特な香りとシャクッとした食感。ああ、これ東京でも生えないものだろうか。

と感動しているうちにも食事は進む。
お造りにはミズイカの刺身と、ブダイ系の刺身が盛り込まれている。甘めの醤油とのマッチングが最高だ。

生の青のりのような汁は、沖縄のアーサ汁を思い出させるが、魚のダシの風味が濃く海藻の風味と合って素晴らしく旨い。

そして食事の終盤になってボンと大きなトビウオの唐揚げが出てきた!一匹の半身と、羽になっているヒレをカリカリに揚げたのがついてくる。ダイナミックにバリッと言う食感と、ホコホコして旨味の凝縮された味が実にイケル。

若干味が濃いなとおもうのだが、トビウオのような濃い旨味の魚にはこれくら強めの塩でもいいかもしれない。塩鮭を食べている感じである。白飯をどんぶりに2杯食べられそうな濃さなのだ。

口直しだろうか、カボチャ団子が運ばれてくる。カボチャの甘さとマッシュ感が素晴らしい一皿だ。これも綺麗な葉に包まれていた。

「いやぁ~ 喰った食った、、、最高に旨かったですよ!ご馳走様でしたぁ!」

「あれっ やまけんさん、もう一つ食べて欲しいのがあるんですよ! 豚しゃぶなんだけどね!」

えええええええええええええええええええええええええええ
これから豚しゃぶ?

「うん、実は黒豚なんですよ。種子島には、鹿児島の内地で飼育されている系統とはまた違った、島独特の黒豚が居てね。それを飼育しているところがあるんですよ、食べてみて欲しいんです!」

といって、小ぶりな鉄鍋が全員の元に運ばれてきた!うそぉ~

さてこの黒豚肉が実にもうそのままベーコンのようなキメの細かい美しいテクスチャである。

火を通しはするが、柔らかなピンクが残るような加減で引き上げた。

実はこの肉をつけるタレが出色で、ご覧の通り塩ダレのような透明感のあるタレなのだ。これにすすっとつけて口に入れた。

予期してはいたが、瞬間的に脂が溶けた!
しかし、黒豚つまりバークシャーに特有の優等生的なまろやかな脂質ではなく、実に旨味の濃い肉である。アミノ酸の含有量がよほど多量なのではないだろうか。

「そうなんですよ、味が濃いんです!」

ああああああああああああああああああああ
これ、コースの最初に出して欲しかった!20枚くらいこの肉片をしゃぶしゃぶしたかったよぉおおおおおお
と思ったけどこれは一口の余韻を楽しむのがいいのかも!
しかし本当にこの黒豚しゃぶしゃぶを特徴づけているのが透明感あるタレである!

「そう、ゴマだれだと肉の風味は消えちゃうでしょ?ポン酢も酸味で豚の旨さが少し飛ぶ。この黒豚の旨味を最大に活かすタレを苦労して作ったんですよ!」

このマスターの味に関するセンス、抜群である!
今度ぜひ泊まりがけで来てじっくり食べたいと思うのであった。

いやしかし満腹である。

「さあそれじゃ本日の講演会場に向かいましょう!」

そう、これからまだ仕事なのであった、、、

(つづく)