2005年11月28日 from 出張
カボス王国・大分へ行く。実はこれまで大分県で足を停めたことがほとんど無く、じっくりとその土地の食を楽しむことが無かった。だから、関係先から「やまけんさん、大分から講演依頼が来てるんだけど、行ってくれません?」と言われた時には小躍りしそうになったのだ。
しかも、不思議な機会が重なる。
僕と仲間でやっている就農塾という、農業に関する連続セミナーがあるが、その受講生の一人が大分の有力な青じそ生産農家さんの息子である。その父君が、僕の大事な年上の友人の、なんと同級生だったというのだ!これは久しぶりに大分に帰省していた友人から聴いたのだが、本当に世界は狭いんだと思った。いや、出会いは運命にすべて演出されているということだろうか。しかも、その生産農家の二宮さんが、僕が大分入りする前日に東京に来ており、一緒の便で大分に帰るという。
「じゃあ、空港から俺が会場まで送ってってやるわ!もちろん講演も聴きましょう。」
ということになったのである。
さて空港から市町村会館という会場近くに着き、時間があるのでいったん二宮さんとは別れる。
すぐ近くに商店街があり、飲食店も集中している感じだ。久しぶりに歩いて大分のメシをたべてみることにした。
ぶらぶらと商店街を流す。イタリアンとかそういうのはどうでもいいな、やっぱり大分の人が普通に食べてる料理がいいな、と思いながら歩くと、いろんなところに「とり天定食」という文字が躍っている。そうか大分と言えばとり天だ!と思って店を探す。ただし、立派な割烹とかは入る気がしない。どうせなら大衆食堂的なところが佳いなと思っていたら、見つけた!
「焼きそば お好み焼き だんご汁」
という看板だが、とり天ももちろん、各種定食があるのだ。
カウンターとテーブル数席。お好み焼きや焼きそばは厨房で焼くスタイルだった。
「はい、なんにする?」
「だんご汁ととり天定食を一緒に食べたいんだけど、量、多いかな?」
と訊くと、店のおばちゃん、うーんと少し唸りながら僕を観る。
「うちのだんご汁はタップリ多いけどねぇ。、、、食べきれなかったら私が食べるわ」
と笑いながら言う。うん、コレだ。この感覚。明るく、ぞんざいに丁寧なこのもてなし感が地方の定食屋の佳さなんである!
ほどなく運ばれてきた定食+だんご汁はこのボリュームであった!
だんご汁は、熊本でも「だご汁」といってよく食べられる料理だ。味噌味に、一杯の根菜類と、もちろんカボスが添えられている。
だんごは小麦を滑らかに練ったものが、麺状になって茹で上げられている。七味をふってカボスを絞って頂くと、滋味深い味、暖かみが腹一杯に染み渡る。
そしてこちらがとり天だ。
とり天の専門ページ「とり天ワールド 」さんによればとり天には6つの原則があるそうだ。以下引用。
1 鶏肉をたれに漬け込んでいること2 衣がついていること
3 一口サイズであること
4 骨がないこと
5 キャベツの千切りなど生野菜が添えられること
6 何らかのつけだれで食べること
以上 「とり天ワールド」より
ということだ。入店するとカウンターにいる数人がすでにとり天定食を食べている。とり天には酢醤油と辛子が添えられているので、その二つを使って食べてみる。
柔らかめの衣に酢醤油が染みて、中からは鶏肉の肉汁がジュッと染み出してくる。なかなかに乙な味である。揚げ物だけど適度に軽く、これは確かにご飯のおかずとしては人気が出るだろう。美味しかった。
でもどうせなら、酢醤油ではなくカボスの汁を落とし込んだタレのほうが旨そうだと思うけど、どうだろうか。
なんにせよだんご汁ととり天、そして妙に色っぽいおばちゃんの掛け合いで心温まりながら店を出る。
そして2時間ほど、講演。
大分県のトレーサビリティの取り組み事例を訊き、こちらも最新情報を提供する。大分はかなり特徴ある産地のため、通常の取り組みとは別の動きをしているという感覚がある、興味深い産地だ。
さて講演終了後、本来なら僕は県の方々と市内で夕食をということになっていたのだが、これがいきなり変更に!
「山本さん、カボス大産地である臼杵市の市長さんが「何が何でもフグを食べさせたいから、講演が終わった時間にホテルに迎えに行くと言っておいて下さい」とのことです。これはもう、行って頂くしかありませんね、、、」
ひえええええ
すごい展開である。
実はこの臼杵市長こそ、黄色い完熟カボスを世に問いたいと頑張っている張本人なのだ。昨年書いたカボスについてのエントリは、この臼杵市から送ってもらったものがきっかけである。
しかしその前に、どうしても青じそ農家、二宮さんの畑は観ていきたい。
「よしよし じゃあ俺の車で見て回ってからホテルに届けますわ」
ということになり、市内から10分程度のところにある二宮さんの農場に行く。
これがまた 超優良な農場で驚いてしまった!
読者の皆さんは大葉(青じそ)がどのように育てられているかご存じだろうか。土耕栽培や水耕栽培などいろいろあるが、この青じそほどに農薬をビシッと効かせて虫食いがなくならないようにしている品目はない。従って大葉についてはどう考えても減農薬商品を探す方がいい。
この二宮さんの農場はとにかく広い!ハウスが十数頭建ち並び、その中で働いている人数は30人以上だという!ひええええ そんな大葉農家は観たことがないぞ!
しかも大葉の品質は極めて高い。某大手スーパーのプライベートブランド商品に出荷しているのだが、このPB企画は農薬と化学肥料の使用率が定められており、それをクリアしているということは、特別栽培農産物と言って良い内容だ。いや驚いた。
この二宮さんには、ぜひ来期の就農塾を開催する際にお話を聴きたいと思う。いやーほんとにビックリ。
ということで大葉見学をし終わり、ホテルにてしばらく待つうちに夜の部がやってくるのである!
(つづく)
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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